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    花式 カイロ

    @arisaki_hspr

    自創作本編とは1μも関係のない怪文書と、自創作の小説を投げつけるだけの場所です。
    あとちょっとセンシティブな絵も載せようと思う。

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    花式 カイロ

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    モノ君二話!!
    出演メンバー
    ・ヴァイス
    ・ノワール
    ・ディアン

    二話 約束「ノワール、二人で一気に仕留めるよ。援護して」
    「仰せのままに」
     ヴァイスは隣にいるノワールに声をかけた。仰々しく礼をしたその彼を横目に、ヴァイスは前方へと駆ける。そのまま片手剣で斬りつければ、異形はダークレッドの爪で迎撃した。両者の力は然程差がなく拮抗する。お互い弾くようにして飛び退いた。
    「グオオォォォォォ‼︎」
     ヴァイスが着地した瞬間、異形が吠えた。ハッとして顔を上げれば、空中に数多浮かぶ岩石が見えた。異形が魔法を行使したのだと気付いたヴァイスは、自身も魔法で迎え撃つべく左手を前に突き出す。
     だがヴァイスの魔法が放たれることはなかった。ヴァイスの方へと向かう岩石たち、その全てが轟音と共に消し炭にされたからだ。それがノワールの魔法によるものだと一瞬で理解したヴァイスは、敵が怯んでいる隙に距離を縮めた。
     勢いを殺さないまま、ヴァイスは異形に斬りつける。その攻撃は異形の巨体に確かなダメージを与えた。
    「ガァァ……‼︎」
     呻き声をあげた異形は、痛みからか大きな動きで前腕を振る。ヴァイスは咄嗟に剣でその攻撃とも言える動きを凌いだが、体格の差が不利に働き反動で体勢を崩された。
    「わ、ぁっ!」
     その瞬間を見逃すまいと、異形の鋭い眼光はヴァイスを捉える。ヴァイスは焦りを募らせた表情を見せ、受け入れるしかないであろう攻撃に備えガードするようにして剣を構えた。

    「やっぱ小さいのって不利だよね」

     流れるような音と共に、目の前が鮮血に染まった。薄汚れた物体によって狭まった視界は、状況の理解を妨げる。その物体が全て地に落ちたのを見て、ようやくヴァイスは何が起こったのかを理解した。
     ノワールが取り出した彼自身の専用武器によって、異形が細切れにされたのだ。スプラッタ映画のごとく悲惨な残骸を目にし、ヴァイスはうげっと声をあげた。その後で、不快そうに返り血で汚れた部分を拭う。不意にスッと手が差し出された。
    「ヴァイス、大丈夫?」
     にっこりと貼り付けられたような笑みを見て、ヴァイスはパチクリと目を瞬かせる。ほんの一瞬の間を置いて、ヴァイスはその手を取った。
    「……うん、大丈夫。ありがとう」
     降り始めたばかりの雪みたいな調子でそう言えば、ノワールは安堵したように少しだけ笑みを深めた。
     他人から見たら、ノワールのその笑みは些か胡散臭さが拭いきれないように感じるだろう。けれどヴァイスは違う。彼らは幼い頃——それこそ目覚めた時から五年もの間ずっと、同じ時を過ごしている。だからヴァイスは、ノワールが元々こういう表情しか作ることができないのを知っていた。
     彼の顔を見る度に、ヴァイスはその性質を思い出す。もうとっくに慣れてしまったことではあるが、もう少し彩のある表情を見たいという気持ちがないわけでもなかった。
    「僕の顔に何かついてる?」
     そんなことを考えているうちに、どうやらヴァイスはノワールの顔を見つめすぎてしまっていたらしい。にこやかな笑みを絶やさないままに、黒瑪瑙くろめのうの彼が首を傾げて聞いてきた。ヴァイスがふるふると無言で首を振れば、そっか、とだけ言われた。

     そうして何事もなかったかのように、ノワールは残骸処理を始めようとしていて。その大きいとも小さいとも言えない背中を見つめていたヴァイスは、ハッとあることを思い出した。
    「お前、僕のこと小さいって言ったでしょ」
     しゃがんでいたノワールに近寄って、ヴァイスはそう言った。ピタリと作業の手を止めたノワールは、おかしそうに笑ってこちらを見る。
    「えー、聞き逃してくれたと思ってたのに。残念」
     実際に残念とは思ってもいなそうな声色で言う。そんなノワールの態度を見て、ヴァイスは僅かに眉を寄せた。その不機嫌の仕草を感じ取ったらしいノワールは、緩慢な動きで手を振ってみせる。
    「別に貶したかったわけじゃないからさ。ほら、小さいと力比べで負ける確率は上がるだろう? さっきの君がそうだったように、それでピンチに陥ることもあるんだから」
     これでもちゃんと心配してるよ、と目を合わせて言われた。
     ヴァイスは、その言葉でもう一度小さいと言われた気分だったが、ノワールの言うことももっともだった。それを含めての全てを理解しているからこそ、ヴァイスも強く返すことができない。むず痒さを感じながら、けれど意地を張りたかったヴァイスはこう言った。
    「どっちにしろ、僕が怪我したところで大事になんかならないじゃん」
     拗ねた子どもみたくそう吐き捨てれば、ノワールは珍しく動揺の色をその瞳に浮かばせて。魚のように、何か言いたげに口を開閉した。少し息を吸って、それからノワールは声を発する。
    「……僕にとっては大事さ」
     ノワールはそう言って、溶けた蜂蜜のような瞳を悲しげに光らせる。
     不本意ながらもそんな表情を作らせてしまった。反射的にそう思って、ヴァイスは心の隅にじわりと滲む仄暗い感情を抱えた。


     そこらで見かけるようなキャメルのスクエアテーブル。そこには何枚もの紙と、それからシルバーの安っぽいノートパソコンが置かれている。多く設置された椅子のうちの一つをヴァイスは陣取り、難題を示された学者のように項垂れていた。
     人工亜人たちは異形を討伐した際、その詳細などをまとめた報告書を提出しなければならない。ヴァイスは現在その仕事に追われている。
     だがしかし、その報告書作成こそがヴァイスの何よりも苦手とする仕事だった。まず報告書を作る前提として、討伐した異形の特徴や性質等を思い出し、それらを丁寧に、けれど簡潔に纏めなければいけない。記憶力も文章力も、ついでに文の構成力も必要な作業。体を動かす方が性に合っているヴァイスにとって、これ以上鬱々とした気分になる仕事はないのだ。
    「ヴァイス、終わらないの?」
     返り血を洗い流し、戦闘服から普段着へと衣装チェンジしたノワールがやってくる。漆黒の御髪おぐしを揺蕩わせながら、優麗な動きで机に手をついた。むくりとヴァイスは顔を上げて。口角を上げたままのノワールに浮かない表情を見せた。
    「……僕がこの作業苦手なの、知ってるだろ……」
     絞り出したような声を浴びせ、ノートパソコンをトントンと叩く。そうしてみせれば、ノワールは仕方ないと言うようにふふ、と笑った。
    「もちろん、知ってるよ。僕も手伝うから、早めに終わらせよう」
     お腹も空いたしね、と一言。ヴァイスはありがとう、とお礼を言って隣席へと彼を導いた。少し傾いた日に照らされた二人の髪は、暖色を伴って輝いた。

     夕日が水平線に沈んでいく頃、二人の報告書作成がようやく終わった。しばらく座りっぱなしだったヴァイスは、体を左右に傾けたり首を回したりでストレッチをしている。一方、ノワールは余裕そうな笑みを浮かべて紙類をまとめていた。トントンと無機質な音が室内に響き、ヴァイスの鼓膜を揺さぶる。ほんの少し湧き上がった眠気はその音に押し潰されるように消えていき、報告書で埋め尽くされていた脳内が晴れていく。
     けれど仕事の要素を含んだその音は、何故か急速にヴァイスの焦燥を募らせた。
    「それじゃヴァイス、提出は任せたよ。……ヴァイス?」
     ノワールにそう声をかけられても、ヴァイスは何の反応も示さない。首を僅かに傾けた後、ノワールは再度呼びかけた。だが当のヴァイスはノワールの方を向いたりはせずに、どこか明後日の方を見つめている。空間に穴が空いてしまうのではないかというほど、じっくりと。
     その表情は物憂げでもなんでもなかった。文字通り、なんでも。画面の向こうの無機質なイラストみたいに、何者も映さないピクセルの瞳がただそこにあるだけ。

    「ヴァイス」
    「……ノワール」
     ふと、そんな硝子の瞳にノワールの顔が映る。生気を取り戻したその海色は驚いたように瞬いて、それから呼応するようにその彼の名をころりとこぼした。
     鈍い金色の視線を受け、段々と本来の性質を思い出したようなヴァイスは眉を下げ薄い笑みを作る。ゆっくりとした動きで、彼方へと目をやった。
    「少し、考え事してて」
    「考え事?」
     うん、とヴァイスは言う。既に閉じたノートパソコンのその端を、人差し指の柔い手つきで撫でていく。する、すると一定のリズムを保ったその音はヴァイス自身の判断を仰ぐように響いていく。
     幾度か繰り返したのちにピタリとその動きを止めて、拭うようにして薄い灰色に手を滑らせた。
    「どうして、僕たちなんだろうって思ってさ」
    「……それは、どういう?」
     ヴァイスの発した言葉。その意味を理解していない様子で、ノワールは聞き返す。ヴァイスはのろりと手を持ち上げ、包むようにして頬杖をついた。
    「こうして異形と戦って、書類仕事をして……そういう時に、ふと思うんだよ。なんで僕たちがこの使命を背負わされたんだろう、って」
     雪花のように薄々と響かせて。空気に溶けたその声は、二人きりの空間の温度を僅かに奪う。
     ノワールは締まった吸気を挟み、そのまま凍りついてしまったかのように言葉を失った。次第に、ノワールは考え込むようにして俯いていく。ヴァイスはその様子に気付きハッとした。何かを言おうと口を開きかけていたノワールの、その細腕をパシッと掴む。ヴァイスは、焦りを含んで頭を振った。
    「ごめん、なんでもない。気にしないで。疲れてるとこういう思考になっちゃうんだ、ダメだよね」
     この使命こそが、僕たちの生きる意味なのに。
     自分に言い聞かせるようにして、ヴァイスはその言葉を加えた。何の疑問も持たずに言ったはずのその言葉は、確かな鋭利さで心を刺してきた。そうして生まれた困惑を消すように、花びらが降るような儚い瞬きをする。
     ヴァイスはゆっくりと、縋るものがなくなったみたいに頼りなく手を下ろそうとした。すんでのところでギュッと握られる。予期しなかった動きに驚いて、思わず腕の主の顔を見た。慈愛で包み込むような、優しげな笑みを向けられる。ヴァイスは目を瞠った。
     もう片方の手がするりと上がって、ヴァイスのふわりと流れる雪色を柔く撫でる。少し頼りないその動作は、けれどヴァイスの心を落ち着かせた。
     弱音を零した悔しさに耐えるみたく、ギュッと口を引き結んで。弱々しく笑いながらノワールを見上げた。
    「今日はもう、休んだらどうかな? あとの仕事は僕がやっておくから。ね?」
     ノワールは、ヴァイスの発言に言及しようとはしなかった。ただそれだけ言って、また頭をふわりと撫でるだけ。禁句を聞き逃してくれたようにも捉えることのできる彼なりの気遣いに、ヴァイスはこくりと頷き応えた。

     コツコツと、控えめな足音を響かせて廊下を歩く。自室に向かう道のりで、どうしてあんなことを口走ってしまったのだろうという後悔の念がじわじわと浮かんできた。はぁ、と盛大にため息を吐いて、縮こまるようにしゃがみ込む。
     先程のノワールが放った言葉。それを彩ったあの声色。あれは確かに困惑を含んでいた、とヴァイスは勝手に思い込んで。何度も反芻してはその度に、飽きもせず膝に顔を埋めていく。
    「おい、廊下のど真ん中で何してんだ」
    「うわっ」
     ふと聞こえてきたその声にヴァイスは驚き、若干覇気のない声をあげながら飛び退いた。落ち着きのないステップをして、ゆっくりとその足の動きを止めながら顔を上げる。
    「ん」
     眼前の少年は、そんなヴァイスの動きに意識を取られることもなく、ゆるりとした動作で右手を挙げた。ヴァイスは瞬きを数回繰り返してから、にっと口角を上げ屈託のない笑みを浮かべた。
    「「労働お疲れ」」
     パンッ、と乾いた音が廊下に響く。ハイタッチを交わした手は、勢いそのままに下へと落ちていった。目の前の少年は、ニィッと満足そうに笑っていた。

     短く流れるポーラーナイト、その束をふわりと揺らす。少しキツめに吊り上がった瞼と、その険しい顔つきとはさほど似合わない長いまつ毛。飾り立てるような柘榴石を嵌め込んだ、煌めく瞳を持つ彼の名をディアンと言った。
     彼も同じく人工亜人で、年はヴァイスの二つ上。つまり、ノワールと同い年だ。だがディアンはノワールと違って、年齢にそぐわない大人びた仕草をすることは少なく、むしろ年齢相応にはしゃいだりゲームをしたりなどを好む質であった。
    「ふぅん、そんな話をねえ……」
     ヴァイスの自室にある小さなミニテーブル。そこに肘をついて片手でコインを弄びながら、ディアンはそう言った。
     ヴァイスは先程ノワールと交わした会話のことを、ディアンに伝えたのだ。特に明確な目的があったわけではない。けれど、誰かに話してみたくて。
     ディアンはこういう、哲学じみた話題にいつも乗り気ではなかった。だから人選ミスであることをヴァイスは理解していたが、他に話してしまえそうな相手など思いつかなかった。そもそもが自らの存在意義を疑うような話題だ。軽々しく扱えるような話題ではないと、ヴァイスはそう思っていた。
     それ故に、本当はディアンに話すことさえ躊躇われた。けれど彼には話せてしまえそうな不思議な雰囲気があって。元が聞き上手なのも相まって、ヴァイスはこうしてディアンに相談していたのだ。
    「あ」
    「あ?」
     そこまで思い返して、もしかして自分は口が軽いのではないかという不安感に襲われた。いくらディアンが話しやすい空気を作るのが上手だったとして、それで何から何まで吐き出してしまったら意味がない。
     ヴァイスはまた頭を抱えた。悩みの種が一つ増えてしまった、と。うんうんと唸っていると、不意に頭に手が置かれた。
    「安心しろよ、誰にも言わないでおいてやるから」
     たった短いやり取りだけでヴァイスの意図を汲んだのか、ディアンは笑いを含みながらそう言った。ヴァイスは思わず驚く。
     考えは口に出していても、それを引っくるめたヴァイス自身の気持ちなど一切口にしなかった。だから、ディアンのその返答が心底意外だったのだ。
     ヴァイスは口をぽかんと開けて、その大きな目を何度も瞬かせた。ぱちぱちと、瞼が開閉する度にその露草がこぼれ落ちてしまいそうなほど。
     ディアンは愉快そうにハハッと笑ってから、ヴァイスのまろい頭に置かれたままだった手を退かす。緩く口角を上げ、無邪気な弟に手を焼くような、そんな“兄”の表情をしてみせた。ぽかぽかと暖炉の火みたく暖かくて、ヴァイスはくすぐったい気持ちになった。
     ディアンとは——ついでに言うとノワールもだが——かれこれ五年の付き合いになる。けれど、その五年過ごしてきた中でこのような表情を見るのは初めてだった。
    「……なんで僕の言いたいこと、分かったの」
     戸惑いと喜び、そして少しの怯えを含みながらヴァイスは言った。その怯えは自身を見透かされたことに対するものではなく、自分の考えがここで否定されることへの感情だった。
     感情に触れることを避けたあの少年——ノワールは、常にヴァイスが不利にならないような立ち回りをする。もちろんそれだけではなく、ヴァイスの気に障らない範疇でさりげに機嫌取りだってした。そんな一見無意味に感じられる行動をする理由を、ヴァイスは知らない。けれどその気遣いの事実だけは知っていた。
     だがそういう意味でディアンは本当に未知数だ。彼の人柄は基本的に善であり、またヴァイスたち家族に対しては尚のこと友好的である。ヴァイスはそれだけは理解していたが、逆に言えばそれ以上のことは分からないままでいたのだ。言うなれば、ディアンがデリケートな面に対して無神経かそうでないか、ヴァイスは知らない。
    「家族だからな」
     思考を断ち切るような声が聞こえてきて、ヴァイスは少しだけ目を見開く。あまりにも抽象的すぎるのに、ディアンの声色はその確信を極めていた。真逆の情報を聴覚に一気に与えられて、少しの混乱に飲まれる。
    「えぇ、それだけで……?」
    「それだけで」
     キッパリと言い切るディアン。そんな彼に対してヴァイスは口をへの字に曲げる。
     理由になっていない。考えすぎた時間を返せ。
     等々、物申したいことは幾分かあれど、それをどんな言葉にして伝えたら良いか分からなくて。ヴァイスは苦し紛れにと小さく息を吐いた。

    「まぁ、お前が望むならその“自分たちが使命を背負わされた意味”を一緒に探してやんねえこともねえけど?」
     一転、いつもの不敵な笑みを浮かべたディアンはそう言った。え、と小さく声をあげる。まさかそんなことを言われるとは思わなくて、けれどそれが嬉しくて。無意識のうちに、ヴァイスは段々と目を輝かせていく。
    「……いいの?」
    「いいよ」
     ディアンは、また穏やかに微笑んで返してきた。
     対して、ヴァイスは困惑を表すように俯く。確かに嬉しさは感じていた。けれどそこには、ひと匙ばかりの不安が混じっている。
     使命を背負わされた意味を探すなんてくだらない。ただ真っ直ぐに、異形の殲滅のみを目指せばいい。と、普通ならそうして一蹴されるであろう愚問に、家族とは言え血の繋がりすらもない彼を付き合わせるだなんて。
     それは酷く勝手な行動のように感じてしまい、柔い言葉で築き差し出された手を取るかどうかの二択でさえ難儀なものに感じた。
    「……ったく。ほら、手出せよ」
     痺れを切らしたのか、そう言ってディアンは乱雑にヴァイスの手を取った。迷いの一歩を強制的に踏み出させられて、ヴァイスは反射で「わっ」と声をあげる。そうこうしているうちに、ヴァイスの小指は同じくディアンの小指で掬い取られた。彼が何をするつもりなのかを理解して、ヴァイスはディアンを見据えた。
    「俺たちの生きる意味である“使命”を絡めた指切りだ。血の繋がりより、濃いはずだろ? ……だから、約束だ」
     しっかりと組まれた二人の小指。ヴァイスはその境界線に、指切りと名付けられながらも決して切れない繋がりを感じた。
    「……うん、約束」
     どこまでも見透かしてしまうディアンにそう返して、ヴァイスも強くその小指を結んだ。
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    花式 カイロ

    DONEモノ君十二話です!お久しぶりのネームドキャラ登場!

    出演メンバー
    ・NoDiWS一行
    ・ニーファ
    十二話 胡桃色の少女 深緑の木々がざわめく中をヴァイス達四人は駆け抜けていた。異形の魔力を追跡可能なノワールが先頭を行き、ノワールと同じく魔力感知を得意とするスティルが補助役として斜め後ろを進む。そして二人の後ろでヴァイスとディアンが並走する。特に何かを話し合ったわけではなく、自然とこの陣形となっていた。
    「さっきのが嘘みたいだね、あれ」
    「本当にな。苦労した甲斐があったのかなかったのか、分かんねえわ」
     先導する二人を追いつつ、ヴァイスがそう切り出す。横で走っていたディアンは、呆れ笑いを浮かべながらもそう返した。ヴァイスは彼の返答を飲み込んで、確かに、と独り言みたく小さく溢す。
     スティルがマッチポンプだと叫んだシーンのその後は、それはもう大変なものだった。奇人ぶりを言動に滲み出させるノワールと、それに苛立ち堪忍袋の緒が切れる寸前だったスティル。それを必死で宥め説き伏せたのがヴァイスとディアンだった。全く悪びれない——というより己の言動が悪いとも思っていなさそうな——ノワールをディアンが黙らせ、ヴァイスの拙い弁論でなんとか仲裁したのだ。
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