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    花式 カイロ

    @arisaki_hspr

    自創作本編とは1μも関係のない怪文書と、自創作の小説を投げつけるだけの場所です。
    あとちょっとセンシティブな絵も載せようと思う。

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    花式 カイロ

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    モノ君九話!区切りが雑です(すまん)
    出演メンバー
    ・ヴァイス
    ・ディアン
    ・ノワール
    ・スティル

    九話 成し遂げるよ ツルツルとした広い廊下。そんな廊下を二人で歩けばコツコツと硬く心地の良い音が耳に入ってくる。ふいに、ヴァイスの後ろで鳴る足音が止まった。くるりと振り返る。
    「随分デカい啖呵切ったな」
     そういう割に、ディアンは楽しそうな表情を浮かべていて。へへと笑いながら肘で小突いてやった。
    「かっこ良かったろ〜? さっきの僕」
     誇らしげに笑ってみせれば、はいはいと適当に返される。全くつれないやつだ。ふんっ、と鼻を鳴らした。
     ヴァイスはふと天井を見上げ、そしてのろのろと廊下の壁際に後退する。後手を組んで、片方ずつ足をぷらぷらとさせる。ザラザラとした壁の感触を手に与えた。それと同じタイミングで壁際にやってきたディアンは、不思議そうな顔をして首を傾げている。ヴァイスの不意の行動に疑念でも抱いたのだろう。目を合わせてから、にっと笑ってやった。
    「……僕ね、今までなーんにも考えずに異形と戦ってたんだ。でもね」
     軽い口調でそう言いながら、ヴァイスはこれまでの日々を記憶の棚から取り出す。戦う術として、剣術、体術、そして魔法などあらゆるものを教えられ、その通りに駆使して戦い続けてきた。実戦に至ったことは確かにまだまだ少ないが、それでも明らかな目的や理由を持って戦いに臨んできたとは言えなかった。
     そして今日、つい先ほど起こった一人の女性との会話。それが自らに与えたこの思いこそが、きっとそれ・・なのだとヴァイスは強く自覚した。
    「——異形のせいで誰かが傷つくところは見たくない。だから僕は戦う」
     意志の強さを示すために、ヴァイスはディアンとしっかり目を合わせてそう言った。変わらずの腕組み姿勢だった彼は、それでも瞳に寧静さを宿している。すぅとその目が細められた。
    「……ちょっと、綺麗事すぎる?」
     しばらく返事のないディアンに焦りを抱き、自らの指を擦り合わせながら恐る恐る聞く。ふっと笑われて、ヴァイスは口を噤んだ。僅かに斜め下を向いたその顔を覗き見る。
    「いーや、お前らしくていいんじゃねえの。……成し遂げるよ、お前なら」
     成し遂げる。ディアンは再びその言葉を繰り返した。重心のあるその声色。感極まると共に、それでも何故かディアンの複雑そうな表情が気になった。小首を傾げ、そうしてあの約束のことを思い出してハッとする。握り拳を作りながら彼の肩に手を置き、そうして勇ましげな表情を作った。
    「大丈夫、使命を背負った意味もちゃんと追求するから! 約束、破らないから!」
     声量を大にして言えば、先ほどの浮かない顔が嘘のようにポカンとしたものになる。思い切り開かれた鋭い造形の瞼からは、ガーネットの瞳が大きく覗いている。それでもヴァイスは自信満々に見つめていれば、ふはっと思い切り吹き出された。
    「はははっ! そうかよ。……別に疑ってるわけじゃねえから、安心しろよ」
     そう言って楽しそうに笑う。なら良かった、と胸を撫で下ろす一方、それならばどうしてあんな顔をしていたのだろうと思った。けれどディアンは悟らせまいとでもするように、くるりと振り返り歩き出してしまった。
     覚悟と信念と、そしてほんの少しの疑問。それらを綯い交ぜにしながら、ヴァイスはその後を追いかけていった。

    「あれ、戻んないの?」
     さてヴァイス達の帰りを待っているであろう二人のところへ戻ろうという時、ディアンは思いがけず別方向へと足を進めていった。ディアンが行こうとしているのは、自分たち人工亜人の自室がある方向だ。
     ヴァイスが不思議に見ていれば、ディアンは直角とも言えない中途半端な風に体をこちらに向け、またお馴染みの不機嫌そうな面で言葉を放った。
    「昼寝すんだよ。出掛けんのは三人で行ってこい」
     嘘だろとヴァイスは思った。えー、と不満を表すように音を吐き出す。ディアンは困ったように頭をがしがしと掻いた。
    「あー……頭痛えんだ、ほっとけ」
     逡巡した後に言われた言葉にヴァイスは驚く。さっきまでそんな様子は微塵も感じさせなかっただろ、と。そして他人事のように雑に言葉を扱うディアンに近寄る。
    「大丈夫?」
    「寝りゃ治んだろ。早く遊び行ってこい、土産話待ってんぞ」
     心配の言葉を投げ掛けるも、振り向きもせずにディアンはそう答える。冷たすぎる、なんて温度差の激しいやつだ。そう思うけども頭が痛いなら仕方がない。本当の話ならば、ではあるが。
    「土産話、かぁ」
     自らの部屋を目指して歩いていくディアンの後ろ姿を見ながら、ヴァイスは独りごちた。まるでカティアと同じようなことを言う。というか、さっきの今だ。意識してそう言った可能性もある。そんなに土産話を望まれてはもうとことん午後の休暇を楽しむしかないだろう。
     くるりと方向転換をして、ヴァイスは足早に駆けていった。そうして背を向けた際に投げかけられた臙脂の視線に、ヴァイスはとうとう気付かなかった。


     ガチャリ、と音を立てながらフリースペースへと続く扉を開く。少し進んだ地点で、行きと同じように椅子に座っているノワールとスティルが見えた。おーい、と声をかけ、こちらを向いた二人に手を振る。
    「おかえり、ヴァイス」
    「ただいま」
     ヴァイスを視認するや否や真っ先に声をかけてきたノワールの隣に立つ。にこにこと微笑む様は相変わらずだ。ヴァイスもつられて口角を上げる。
     お兄様、と向かいから呼びかけられ、声のする方を向いた。
    「ディアンはどうしたんです? 置いてきたんですか? それとも迷子?」
     朝露に煌めく新芽のような笑みを浮かべながら、スティルはヴァイスにそう質問した。最後の質問をする際の声色はどこか楽しげで、思わずあははと笑った。そして二つの予想を否定するように、ヴァイスは右手をゆらゆらと左右に振る。
    「頭痛いから寝るんだってさ」
     ノワールによって引かれた隣の椅子。そこに腰をかけながらヴァイスは返答する。再度自分の口で言ったことによって、ディアンを心配する気持ちが少し膨らんだ。
     ヴァイスの言葉を聞いたスティルは、訝しむように片眉を上げる。考え込むようにムッとした表情を作り、そしてまたいつもの静穏とした顔に戻した。
    「またですか、あの人。偏頭痛持ちなんでしょうか」
     また。そう、またなのだ。ディアンが頭痛を訴えて寝込むことはこれまで幾度かあった。任務をサボっているわけでもなく、その大体がこうして空き時間や休暇の時の出来事であるために、ヴァイス自身は特に気に留めているわけではない。スティルも、おおよそほんとに偏頭痛持ちだと思っているわけでもないだろう。基本的にディアンは健康体だし、体質ならその事情を知っていそうなカティア達からもそういう類のことは聞いたことがなかった。
    「ただ寝たいから適当こいたんじゃない?」
     つまらなそうにペンを弄りながらノワールがそう言った。そうかぁ、とヴァイスは曖昧に返事をしてこの話題の終了を図る。その意図を感じ取ったのか、ノワールもスティルもそれからは何も言わなかった。
    「この後暇?」
     ヴァイスは唐突に質問を放った。それはもちろんスティルとノワール、二人に向けて。隣と真向かいの少年は少しの間を空け、そして各々ヴァイスの質問に答えていく。
    「僕は特に用事ないよ、君の用事もないし」
    「私は……勉強をしようとは思ってましたが、必須ではないですから。まぁ、暇ですね」
     二人の回答にふんふんと頷く。因みにノワールの「君の用事もないし」の「君」はヴァイスのことだ。この男は、ヴァイスの用事に何故だかいつも着いてこようとする。慣れてはいることだが、改めて考えると少しおかしい。まぁ気にしても仕方ない、と頷きに倣って無駄な考えを振り払った。
     にこにこと溌剌な笑みを浮かべながら、ヴァイスは机を両の手でトントン叩いた。
    「じゃあさーこの後どこか出掛けようよ。休みなんだし」
     元々は氷のように冷たく薄いと評されがちな自らの声を、なるべく抑揚をつけて使う。ノワールはいつも通りの微笑を浮かべていた。ほんの少しだけ目が細められて、ヴァイスはその様子からノワールは賛成なのだろうと己の中で結論付ける。
     対してスティル。彼は賛成とも反対とも読めない顔をしていた。不満を持っているわけではないけれど、何かを案じているような、そんな顔。その顔の意味が分からずに、ヴァイスは頭にはてなマークを浮かべる。
    「お出掛けはいいですけれど、資料の提出は滞りなく終わったのですか?」
     ディアンとお出掛けのことで隅に追いやられていた件がスティルの言葉で引っ張り出される。すっかり頭から抜け落ちていたのだ。あー、とヴァイスは声を漏らした。
    「ちゃんと終わったよ。記入漏れもないし、名前の被りもないってさ」
     安堵させるようにそう報告すれば、スティルは「そうですか」と言葉をこぼして望み通りホッとしたように眉を下げる。そういえば、資料の提出をと先立って申し出ていたのはスティルだった。だからだろうか、なんとなく彼の声色から使命感のようなものが漂っていたのは。
     相変わらず真面目なやつだ。ふぅ、と小さく息を吐きながらヴァイスは思う。その実直さが、やはりヴァイスにとっては羨ましいものだった。
    「確認したいことも済みましたし、早速お出掛けしましょうか?」
     お兄様、と呼びかけられた。一転して鈴を転がしたように上機嫌な声色に、ヴァイスはパァッと顔を明るくさせる。これで全会一致。お出掛けの確定演出に喜ばしい気持ちになった。
    「どこに行くかは決まってるの?」
     不意にかけられたその言葉。ノワールからだった。聞きながら彼はすでに席から立ち、背もたれにかけていた上着を羽織っている。こういう時の準備は早い男だ。ヴァイスも椅子から立ち上がりながら、ノワールのその質問に答える。
    「決まってないよ。だからぷらぷらしながら決めるの」
     ノワールと、それから丁寧な所作で同じく起立するスティルの腕を引きながらそう言った。後方から「えぇ……?」という困惑の声が聞こえたが、無視だ無視。そもそもの提案者が自分で、腕を引く兄達は賛同者なのだ。だったら少しの勝手くらい許されるだろう。そんな傲慢な考えを助長するように、二人の腕を引く勢いを強めた。


     直で浴びる午後の日差しは暖かくて気持ちがいい。ヴァイスはぐっと伸びをしながら、ノワール達と共に街道を歩く。寮の近くは意外と都会なこともあって、人通りはそこそこに多かった。道ゆく様々な種族の彼らを見ながら、同時に訪ねる店を探す。
     数分ほど歩いたところで、スティルがあっと声を上げた。
    「どした?」
    「私用のペンをこの前壊してしまって……。一応予備はあるのですが、やはり使い慣れた同じものを買いたいな、と」
     ほぇ〜、と間の抜けた声を出す。なら、とあたりをきょろきょろ見回してそしてぴったりの店を見つけた。
    「雑貨屋さん、行こう」
     コーラルの屋根にウッドテイストなその外観を指差してそう言えば、スティルは嬉しそうに「はい」と答えた。

     カランコロン、と出迎えの合図が鳴る。閉める際にもチリンっと小洒落た鐘の音が聞こえてきてヴァイスは気持ちが良くなった。この少年は、意外にこういう音が好きだったりする。
    「僕、あっち見てていーい?」
     そう言って示したのは、文房具のコーナーとは正反対の方向。一直線にペンを探しに行こうとしていたスティルはぴたりと足を止め、ヴァイスの顔とヴァイスが指差した方向を順番に見た。
    「ええ、いいですよ。会計を終わらせたらそっちに行きますね」
     にこりと微笑んで、革の滑らかな靴音を響かせながらスティルは目的の方へと消えていった。それを見送ってから、ヴァイスも行きたい方へと足を進める。そして当然のようにノワールが着いてきた。
     特に気にすることもなくヴァイスは店内を眺めていく。どうやらヴァイスが進んでいった方は生活雑貨などの売り場だったようだ。
     ヴァイスは普段からこの店に足を運んでいるわけではなく、スティルに付き合って一、二回訪れた程度である。だからいまだに新鮮なのだ。商品一つ一つを眼裏に焼き付けるように見てまわっていく。そうして、とある場所で足を止めた。
    「マグカップだ」
     胡桃色を纏った棚に数多並べられたのは、柄のバリエーションが豊富なマグカップ達。ヴァイスはそれらを見て、脊髄から直で情報が与えられたようにポロリと言葉をこぼした。
     そのまま突っ立っていれば、隣にノワールがやってきて覗き込んでくる。
    「ヴァイス、マグカップ欲しいの?」
     ゆったりとした甘みを含む声が聞こえてきた。見れば、声の主は随分と上機嫌そうに微笑を湛えている。ヴァイスは少し狼狽え、慎重に言葉を選んでそれに答えた。
    「あー、うん……四人でさ、お揃いとかにしたら家族っぽくない?」
     四人、お揃い、家族。その三つの言葉を強調する。ノワールはパチリと一つ瞬きをして、そしてその琥珀を埋め込んだような瞳で見つめてきた。たら、と冷や汗が流れてくるような思いになった。
    「……それは、いいね」
     最初の間が少々気になるところではあるが、とりあえずは納得してくれたようで助かった。少しでも言い方を間違えると、「マグカップ欲しいの? じゃあ欲しいやつ全部買ってあげる」と言いかねないのだ、この少年は。
     組織の下こなしていく任務は使命であると共に、仕事でもある。出来高制ではあるので、つまり任務を遂行すればするほど収入は高くなっていく、という訳だ。とは言えヴァイス達はまだ子供なので、仕事の収入を得ても金銭の管理をしているのはカティア達だし、使える金額にも上限が設けられている。当たり前だ。教養や知識を身につけたとは言え、所詮子供は子供。使いすぎてしまわないように、という優しさなのである。
     それなのにノワールはヴァイスに何か欲しいものがあることを嗅ぎつけると、値段の高い安いは関係なしにそれを買ってくるのだ。どこにそんな経済力があるのかは謎だし、知るのも怖いのでヴァイスはやめてとだけ言っているが、自分勝手王子ことノワールがそんな言葉で愚行をやめるわけもなく。故にヴァイスが言葉選びに気を遣う羽目となっているのだ。
    「ほら、この柄とか色違いも多いし揃えやすそうじゃない?」
     適当に探り当て、そうして手に持ってノワールに見せた。白練のベースに縁の部分が黒で塗られた、シンプルで使いやすデザインのマグカップ。手に取ったのは偶然だったが、黒のイメージがあるノワールにはぴったりだ。チラリと棚を見やれば、他にも青磁や藤色、黄蘗きはだなんかの色違いがあった。
    「でも、君とディアンの色はないみたいだ」
     同じように棚を凝視していたノワールがそう言った。ゔ、と潰された鳥みたいな声が漏れる。確かにヴァイスが見た限りでも白、もしくは露草の色や真紅はなかった。それでは確かにお揃いにはできない。となると、先ほどのノワール貢ぎ阻止用の言い訳も通じなくなってしまう。それは困るのだ。
    「やぁ僕、何かお困り事かな?」
     そんなヴァイスの心中を察したかのように、老年の男性が声をかけてきた。身につけている濃藍こいあいのエプロンとその口ぶりから、その男性はここの店主なのだと推測できた。
     ヴァイスは初対面故の緊張した面持ちで店主の言葉に返答する。
    「あ、ええと……このマグカップって、青と赤のはないん、ですか?」
     平時より更に色褪せた声でそう言えば、店主は優しい顔でヴァイスの手にしているマグを見た。そして肯定を示すように、少し困った顔をした。
    「ついこの前、売れてしまったんだ。すまないね」
     分かっていたことではあるが、実際に言葉で聞かされるとやはり落胆の気持ちは強まってしまうもので。そうですか、と分かりやすく落ち込んだ様でヴァイスはつぶやいた。
    「他のも探してみますね。このお店、素敵な商品ばっかですから」
     心配そうな顔をしていた店主に、ヴァイスは努めて明るく答える。店主はヴァイスのその言葉を聞いて目をわずかに見開いたのちに、ふっと優しく微笑んだ。空中で舞う埃が店内の明かりに照らされてキラキラと光る。そんな様子も相まって、何故だか目の前の光景が神秘的に見えた。

    「マグカップ、本当にいいの? 他に気に入ったのがあれば、買ったのに」
     店主が去ってから、二人のやりとりをただ静かに見守るだけだったノワールが話しかけてくる。控えめな笑みからは、それでも依然として所謂「貢ぎたい欲」が窺えた。心なしか少しそわそわしているようにも見える。
     そんなノワールにヴァイスは少々呆れながらも、どこか面白さを感じてしまって。ふっと笑いながら手に持っていた陶器をそっと棚に戻した。コト、と僅かに音を立てたそれに被って、うーんと唸った。
    「お揃いにできないから、いいよ」
     確かにここには胸をときめかせるような秀逸なデザインのものが多い。衝動買いでもしてしまいそうなくらい。けれど、家族でお揃いのものを持ちたいのも本音である。それができないとなれば、本当に“大丈夫”なのだ。
     ノワールもヴァイスの想いを悟ったのか、ただ夜露に濡れた花のように、静かに微笑んでいた。


     その後、無事に買い物を終えたスティルと合流して、結局ヴァイスは何も買わずに店を出た。あの男性にはああ言っておいて申し訳なかったな、と気後れしたが今日はそういうことをいつまでも気にしている余裕はない。なんてったって、も土産話を待っている人が二人もいるのだ。だからあの雑貨屋にはまたいつか、本当のお揃いを探すために訪れよう。
    「ねぇ二人とも、次はあっちの通りに行こう。僕、甘いものが食べたいな」
     人懐こい笑みを浮かべてそう言った。そんな言葉に誘われるように、脇道の低木から蝶が一匹羽ばたいた。反射かはたまた先天性か、ヴァイスの髪みたく真っ白なそれは周りをひらりと舞って、誘うように通りの奥へと消えていった。
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    花式 カイロ

    DONEモノ君十二話です!お久しぶりのネームドキャラ登場!

    出演メンバー
    ・NoDiWS一行
    ・ニーファ
    十二話 胡桃色の少女 深緑の木々がざわめく中をヴァイス達四人は駆け抜けていた。異形の魔力を追跡可能なノワールが先頭を行き、ノワールと同じく魔力感知を得意とするスティルが補助役として斜め後ろを進む。そして二人の後ろでヴァイスとディアンが並走する。特に何かを話し合ったわけではなく、自然とこの陣形となっていた。
    「さっきのが嘘みたいだね、あれ」
    「本当にな。苦労した甲斐があったのかなかったのか、分かんねえわ」
     先導する二人を追いつつ、ヴァイスがそう切り出す。横で走っていたディアンは、呆れ笑いを浮かべながらもそう返した。ヴァイスは彼の返答を飲み込んで、確かに、と独り言みたく小さく溢す。
     スティルがマッチポンプだと叫んだシーンのその後は、それはもう大変なものだった。奇人ぶりを言動に滲み出させるノワールと、それに苛立ち堪忍袋の緒が切れる寸前だったスティル。それを必死で宥め説き伏せたのがヴァイスとディアンだった。全く悪びれない——というより己の言動が悪いとも思っていなさそうな——ノワールをディアンが黙らせ、ヴァイスの拙い弁論でなんとか仲裁したのだ。
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