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    花式 カイロ

    @arisaki_hspr

    自創作本編とは1μも関係のない怪文書と、自創作の小説を投げつけるだけの場所です。
    あとちょっとセンシティブな絵も載せようと思う。

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    花式 カイロ

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    モノ君十話で〜〜す。前半にクソ長い説明があります、ゆるして

    出演メンバー
    ・ヴァイス
    ・ノワール
    ・ディアン
    ・スティル
    ・青鈴

    十話 依頼任務 休みは明けて、そうしてまた仕事仕事の日々がやってきた。
     とは言ったものの、ここ数日の任務はどれも軽いもので、カティアに対して盛大な宣誓をしてしまったが故に肩透かしを喰らったような気分だった。けれど、至って平穏な日々を享受するのもそれはそれで構わないし、きっとそちらの方が良いことではあるのだろう。そうしてヴァイスは、急がば回れと善は急げのラインを反復横跳びしていた。

     ある日、ヴァイス含むNoDiWS一行はいつぞやの執務室へと呼び出されていた。あらかじめ任務の話ではあると聞いていたので、四人は既に戦闘服に身を纏っている。
     入室してみれば、青鈴が何やら一人で忙しそうにしていた。カティアは別の用事があって今日はいないらしい。
    「青鈴さん、NoDiWSメンバー揃いました」
     横一列に並んだ中、声を上げたのはノワールだった。チーム名を決めたのがノワールだったからか、なんとなくチームのリーダーはノワール、という共通の意識があるのだ。性格やら本人がそうは思ってなさそうやらはともかくとして、意外にお似合いであるとヴァイスは思っている。
     呼びかけに気付いた青鈴は一度こちらを見やり、それから机の上の書類などを片してから再び四人の方へと向き直った。ジャケットを正し、ピシッとした姿勢で立つ。けれど朗らかな笑みにどこか気が抜けた。
    「お前達、すっかりチームらしくなったなぁ。もっとまとまりない感じになると思ってたよ。そこは流石家族、だな」
     カラカラと笑いながら青鈴はそう言った。貶されているのか褒められているのか分からないが、ともかく悪気があって言っているわけではないのだろう。そもそも、実際四人とも性格や価値観の違いからまとまりがあるかと聞かれたらノーである。本来ならば仲が深まることもなさそうな四人が、偶然にも家族という枠にはまったことで現状が作り上げられているのだ。
     とどのつまり青鈴の発言は的を得ているということで。そこに反論はなかったし、もしあったとしてする気もさらさらなかった。その証明、とでも言うようにヴァイスは苦笑いを作る。
    「さて、いつまでもダラダラ喋ってるわけにはいかないな。そろそろ本題に入ろう」
     そう言って放たれたのは、彼の名の如く凛とした声色。それによってヴァイスの思考はリセットされる。ここからは真面目な時間。彼の声に神経を集中させた。
    「事前に言っておいたと思うが、今日ここに呼んだのは任務の話をするためだ。チームとしては初めての依頼任務・・・・、だぞ。ちゃんと聞いてくれよ〜?」
     外部からの依頼、その言葉にヴァイスはピクリと反応する。気持ちが引き締まり、その心に緊張感が湧いた。

     組織から下される任務には、大きく分けて二種類ある。組織から直接下される任務、そして外部からの依頼を通した任務の二種類だ。
     前者は至ってシンプル。組織が何者も介さず見回りや異形の討伐任務を命じるだけ。文字通りである。といっても任務が下されるまでの手順はそれなりに踏んでおり、見回りではなく討伐任務の方がその性質が顕著に出ている。
     異形殲滅特別組織は、戦闘員と非戦闘員で構成されている。ヴァイス達正隊員はもちろん戦闘員の括りに入るが、中でも特殊な役職についている者もいる。それが“異形の感知を主とする隊員”だ。彼らの役割も文字通りである。各地に出没する異形をその性質まで特定し、情報を組織に持ち帰るのが彼らの役目。そうして情報を元に構成された任務が改めて正隊員達に発令される。
     他にも見回りを担当する隊員が異形を倒し損ねたり、討伐不可能と判断した場合にも、それらが討伐任務として持ち込まれることになる。こちらは言ってしまえば見回り担当が端から端まで見つけた異形を殲滅していけば問題なくなるが、そう上手くはいかないのだ。この組織はいつでもそれなりに人手不足である。悲しいかな、見回りに十分な戦力を充てるほどの余裕はない。

     そして気を取り直してもう一種類の概要。こちらは街や村、そして国が異形によって被害を受けた際、依頼主が組織に異形の討伐や調査を依頼することによって生じる任務だ。一般的には青鈴が使用していたように、依頼任務と称されることが多い。
     前述した通り、組織は慢性的な人手不足に陥っている。異形感知隊員——便宜上はそう呼ばれている——の感知が追いつかない場所、特に他国からはその依頼が多いのだ。ただし他国はここ「亜人ノ国」ほど異形がわらわらと潜んでいる訳ではないので、任務の消化自体は追いついているのが幸いと言ったところだろうか。それでも元を断てる訳ではないので、依然としてこの組織は忙しい。

     これら二つの形態によって任務が遂行され、そうして組織——ひいてはこの世界の安寧が成り立っていた。

     そして今回命じられる任務。それは外部からの依頼を通したものである。だからこそヴァイスは緊張していた。外部からの依頼は他国によるものが多い。つまり、外国に出張という可能性もある訳で。国が違うならば言葉も文化も当然違う。勉学を得意としていないヴァイスはそこを懸念点としているのだ。
    「今回の任務はファタリアの街からの依頼だ」
     ファタリア。ふぁたりあ。ヴァイスはその五文字を頭の中で繰り返す。地理にも滅法疎いヴァイスであったが、その名称には聞き覚えがあった。
    「……それって、この国の街ですよね」
     うんうんと唸ってどうにか捻り出そうとしていれば、横に立っていたノワールがそう放った。ヴァイスは「え」と驚きを声に出す。どちらかといえば他国でのものが多い外部からの依頼。まさか自国の街だとは。珍しいという思いが湧き、それと同時に何だか拍子抜けしてしまった。
    「あぁ。まぁ、珍しいことではあるがそんな驚くことでもないさ。何ら変わらん、いつもと同じく組織隊員としての“仕事”だ」
     爽やかな表情を崩さぬままに青鈴はそう言った。冷静な返答。そう説明されれば確かにと頷くほかない訳で、やる気を消失させている場合でもない訳で。頭をこくんと一回下げながら、彼が現役の正隊員でありながらも教育の立場にもいることに納得がいった。青鈴は上下関係や堅苦しいことは苦手とは言っているが、中々どうして、若手をまとめる手腕はあるのだ。
    「それじゃ、任務概要を説明していくぞー。まぁ端末にもテキストは送られてるだろうから、何ならそっちで確認してくれても構わないけどな!」
     わははと快活に笑ってそう言った。そういうところは大雑把なようだ。そんな緩急も彼が慕われる理由に入るのだろうけれど。ふふっと笑いをこぼしながら、ヴァイスはそれでも真面目に青鈴の話を聞いていた。


     今回下された任務は、「西三番地区に湧いた異形の討伐」という内容だ。言ってしまうとあれだが、ありきたりな内容だ。なんとなく、青鈴が「いつもと同じ仕事」と言っていた意味を理解する。果たしてそれが意図して発した言葉であったのかは分からないが、本当にいつも通りの仕事だ。国内と言えども、初の依頼任務で緊張していたヴァイスの心は少し和らいだ。
     因みに、西三番地区というのはファタリアの街が属している地区であり、様々な木々が生い茂る謂わば森地帯だ。ヴァイスは西三番地区自体には見回りで訪れたことはあるが、今回任務で足を運んだこの辺りに来るのは初めてのことである。四方に生える木々を、ヴァイスは新鮮な気持ちでキョロキョロと見回す。森に入った直後のノワールとスティルなんかは「いかにもって感じだ」と言い合って嫌な顔をしていたが、ヴァイスにはそんな風に感じられず、ただただ自然の豊かさを身に浴びていた。
    「行方不明、ですか」
     不意に、後方でノワールと共に何やら話し込んでいたスティルの声が聞こえる。シリアスなその声色に、ヴァイスの表情も僅かに翳った。
     ファタリアの街が異形討伐を依頼してきた経緯。それは数日ほど前に遡る。まず事前情報として、街の住人の何割かは森で仕事を行っている。植生管理やら何やら、まぁ種類はあれど森への人の出入りは少なからずあったようだ。
     そんなある日、一人の住人が森に行ったまま帰ってこないことがあったという。まさか迷子か? とあり得ないような気持ちで何人かがその帰ってこなかった住人を探しに行ったところ、そのうちの数人もまた、帰ってこなかったという。そして無事に帰ってきた一人の青年は、とあるものを発見したのだ。
     動物のものでも亜人のものでもない、不気味で奇妙な痕跡を。

     その報告を受けた街のお偉いさんが取り急ぎ組織に依頼をして、そうして任務を発令されたNoDiWSは今に至る、という訳である。
     青鈴の話と、そして端末に送信されていたテキストとで確認した内容を振り返りながら、なんともまぁ恐ろしい話だと思った。普段の、ベルトコンベア式で流れてくるような組織からの任務を受けるだけならば、こう言った思いを抱くこともなかっただろう。異形の被害を受ける一般異界人の例は知識として持ってはいたが、実際に自分が関わることはこれが初めてなのだ。まだまだ、知らないことはたくさんある。
    「元凶の異形討伐が本命、余力があれば行方不明者の捜索、だっけ?」
     ヴァイスが回想を行っている最中にもスティル達の話は当然進んでおり、その中で発したノワールの言葉がヴァイスの耳を貫く。淡々と始まった確認には、終わりに向かっていくにつれて嘲るような微笑が含まれていった。ヴァイスはほんの少し眉を顰める。
    「僕達を便利屋か何かと思っているのかな? この依頼主は。僕たちの仕事は異形を倒すこと、ただそれだけだ。人探しなんてそれこそ街の仕事だろう」
     途端にスティルは黙り込み、ヴァイスたち四人の間には重い静寂が流れた。
     またか、とヴァイスは思った。時々、というより元からの性質により滲み出るのだ。ノワールの、他人嫌い・・・・が。ただ嫌いと言うには味気ない部分もあるため「他人への好奇心と良心の欠如」が近く、だがそれにしては刺々しい態度が非常に分別に困るのだ。
    「本当、面倒ったらありゃしな——いたっ! ちょっとスティル、何するんだい」
    「流石に言葉がすぎます、めっですよ」
     突然、ノワールの腑抜けたダメージボイスが響いた。その言葉と効果音から察するに、スティルにどこかしらを叩かれたらしい。くるりと振り返って見てみれば、眉間に皺を寄せたスティルと、そんなスティルに睨まれて笑顔のまま不貞腐れるノワールがいて。そんな絵面に不謹慎ながらも笑いが込み上げてしまい、ヴァイスは思わず口を押さえる。
    「説教されてやんの」
     ものの見事な棒読みでそう言ったのはディアンだった。けれど挑発的な言葉選びは効果抜群だったようだ。怒りを含ませながらもにこやかに彼の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
    「異形と遭遇したら君を真っ先に餌にしてやろう。名案だろう?」
    「おーおー、そりゃ“迷”案だ」
     明らかにニュアンスの違う言葉同士がぶつかる。ノワールが短気すぎるのはそうだが、ディアンもディアンで自らの持つ煽りスキルをこんなところで使わなくても良いだろうに。
     そう思っていれば、バシッと勢いの良い音が二つ重なって聞こえてきた。同じようにダメージボイスもハモって聞こえてくる。デジャヴだ。
    「貴方達! 今は仕事中なんですよ!? もう少し真面目な態度でいてください!」
     今度はディアンも一緒になって叱られる。何やってるんだ、とヴァイスは呆れた。それと同時に、やはりスティルはどことなく母親のようだと思った。だがそれを言ってしまえば自分も説教に巻き込まれることは目に見えていたので、口には出さないでおく。スティルに限った話ではないが、叱られるのはできるだけ避けたいのだ。

    「——ですから、もう少し自覚を持って……」
     そうして五分ほど続いた説教は不意にぴたりと止んだ。何かと思ってヴァイスは振り返る。スティルは普段の綺麗な所作までその動きを失くし、どこか訝しむように辺りを見ていた。先程まで説教を受けていたノワールと、そしてディアンまでもが同じように動きを止めている。不気味なまでのその静寂。感化されるようにして、ヴァイスは呼吸を浅くさせて自らが放つ音を最小限にした。
     しん、と静まり返っている森の中。よくよく考えてみれば先ほどまで聞こえていた小鳥の囀りや木々のざわめきすらもその鳴りを顰めている。異常だ。警戒するようにヴァイスは身構えた。
    「! 下だ!」
     突然、空気を裂くような大声が聞こえてくる。咄嗟に反応して跳躍すれば、コンマ一秒も経過しない間にヴァイス達の立っていた地面が隆起した。その衝撃で飛んできた土塊を、反射的に顕現させた片手剣で弾き飛ばす。適当な木の幹に着地して様子を窺っていれば、巻き上がった砂埃の間から影が飛び出してくる。明らかにこちらに向かっている影を避けるように再び跳躍して後退を図るが、その先にも敵が——異形がいることに気付いたのはその異形が攻撃体勢に入ってからだった。
    「くそっ……!」
     焦りを露わにしながら、ヴァイスは白剣を構える。それが無駄な行動として消費されたのは、直後発生した轟音の意味を理解してからだった。
    「詰めの甘さと危うさは、そうそう治らないものだね」
     呆然とするヴァイスの耳に入ってきた声。戦いの最中でも普段の緩やかな仕草を欠かさない少年——ノワールは、憂慮するような笑みを見せてヴァイスの隣に歩み寄った。
     ありがとう、と少し不服な思いで礼を述べながら周囲を見渡す。そう言えば、先程の掛け声もノワールのものだった。それに対する感謝は心の内側だけでつぶやいておいた。
    「ディアンとスティルは?」
    「分断されて向こうにいる。……まぁ、二人一緒みたいだし大丈夫だろう」
     遠くの方を見つめながらノワールはそう言った。恐らく魔力感知を使って状況を確認しているのだろう。器用だな、と思いつつ「了解」と短く返す。
     一、二、三…………十体。行手を塞ぐように立ちはだかる異形を視線で威圧しながら、その数を数えた。狼を模ったようなその姿は、数も相まって相当な威圧感だ。同時に飛ばされる殺気を強気な笑みで振り払う。
     奴らの有様は通常の動物で例えるとするならば“群れ”が的確なのだろう。異形が群れを成すことは滅多にあることではない。複数いたところで、それは別の型、種類の異形が偶然にも同じ場所に存在しているだけのこと。異形は群れを作らない。それが人工亜人の一般常識だ。
     誰がどう見たって同じ種類としか思えない目の前の異形を見ながら、その常識が覆る様を体感した。
    「この数にこの状況……疑問は色々あるけれど、結局僕たちのすることはただ一つ」
     ヴァイスとシンメトリーな制帽を目深に被りながら、ノワールが静かに放つ。それに付随するように、ヴァイスは剣を構え直した。
    「さぁ殲滅の時間だよ」
     この瞬間、ようやく真っ当に戦いの火蓋は切られた。
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    Replies from the creator

    花式 カイロ

    DONEモノ君十二話です!お久しぶりのネームドキャラ登場!

    出演メンバー
    ・NoDiWS一行
    ・ニーファ
    十二話 胡桃色の少女 深緑の木々がざわめく中をヴァイス達四人は駆け抜けていた。異形の魔力を追跡可能なノワールが先頭を行き、ノワールと同じく魔力感知を得意とするスティルが補助役として斜め後ろを進む。そして二人の後ろでヴァイスとディアンが並走する。特に何かを話し合ったわけではなく、自然とこの陣形となっていた。
    「さっきのが嘘みたいだね、あれ」
    「本当にな。苦労した甲斐があったのかなかったのか、分かんねえわ」
     先導する二人を追いつつ、ヴァイスがそう切り出す。横で走っていたディアンは、呆れ笑いを浮かべながらもそう返した。ヴァイスは彼の返答を飲み込んで、確かに、と独り言みたく小さく溢す。
     スティルがマッチポンプだと叫んだシーンのその後は、それはもう大変なものだった。奇人ぶりを言動に滲み出させるノワールと、それに苛立ち堪忍袋の緒が切れる寸前だったスティル。それを必死で宥め説き伏せたのがヴァイスとディアンだった。全く悪びれない——というより己の言動が悪いとも思っていなさそうな——ノワールをディアンが黙らせ、ヴァイスの拙い弁論でなんとか仲裁したのだ。
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