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    pika_pikaidol

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    pika_pikaidol

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    旗主 ドラマCD&小冊子ネタバレver.の不発弾を埋めた俺の負け(pixivにあげたやつの名前言い換えていますそれだけで興奮するんですけど何これ)

     あぁ、ダメだわ。

     そう思ってしまった。自分を見つめてくる視線を、愛に溢れた告白を、三年も、いや十一年も成長してしまった一つの不発弾を、ずっと放置していたフラグを、爆発させずに折る方法がわからなくなってしまった。

    不発弾を埋めた俺の負け

     目が覚めたのは、全く知らない部屋……ではなく、最近一人暮らしを始めた自分の部屋だった。あぁ〜、なんだ。昨日の出来事は全て夢だったらしい。よかったよかった。
     そう思いながら起き上がろうとした俺に待ち構えていたのは――――――
    「いっ……た……!?」
     腰の痛みだった。ようやくその痛みで覚醒した。先程まで寝ぼけていた俺を殴りたい。どうして自分の部屋なら安心だと思ったのか。今まで違和感に気が付かなかったのか俺は。
     パンツ一丁でベッドに寝ていた俺。……俺はパンツ一丁で寝る癖なんて無いからありえない。
     鎖骨の辺りに散らばる無数の赤い跡。……さすがに蚊もここまで吸わないだろうという数だ。
     ベッドの上に置いてある、俺が使うために購入したゴムの箱が開封してある。……童貞を捨てた記憶は全くない。
     そして、何より。
    「……すー……すー……」
     俺の腰を抱き抱えたまま半裸で眠る男を、どうして俺は気が付かないふりをしようとしたのだろうか。叫びたくなる口を抑えて、俺は今からどうするかをひたすら考えた。
     昨日は、龍二くんが俺に告白してきてから3年経った日だった。帰宅する途中で、待ち伏せしていた彼に会ってしまった。すっかり忘れていた俺はその待ち伏せに全く気が付かず、彼の腕に引っ張られて三年前に告白された時と同じ道へと連れて来られてしまった。なぜ抵抗が出来なかったのだ、俺。
    「俺、アンタのこと好きなんですけど」
    「月がなんだって?」
    「……三年前から変わってないんですね、アンタ」
     あの時の同じように聞き返したが、当たり前のように躱されてしまった。目をそらさないままで旗野くんはありのままを伝えてくる。俺はその目が得意ではなくて、少しだけ逸らしてしまう。
    「あの日から、アンタが忘れていた年月の間も、アンタに再会してからの三年もずっと。諦めたことなんて一度もない。だって俺には……アンタしかいないんだから」
    「……いや〜まだ龍二くん二十歳じゃん。今決めなくても、これから先さぁ」
     大学でもモテているらしいと聞いた。それなのに、どうしてここまで俺に執着するのだろうか。BL世界に従順すぎないか。
    「これから先の未来も、アンタといたい」
    「…………俺が今断ったらどうすんの」
    「法に関しては心配無いので、アンタが嫌がらない範囲でアプローチさせていただきます」
    「……諦めるって選択肢は」
    「無いです。だって、俺の人生のほとんど」
     その時俺は、龍二くんと目が合った。その目は、この三年間俺を見つめていた瞳だった。
    「アンタしかいないし、これからもアンタしか好きになれないから」
     あぁ、なんという顔をするんだろうか。俺を好きになって、今までずっと俺を好きになって幸せだったと顔に現れている。どうして、心臓が高鳴っている?
    「好きです。俺と付き合ってください」

     あぁ、ダメだわ。

    「……おはようございます」
     腰の痛みと、今の状況をどうするかで悩んでいると龍二くんが起きてしまった。起きるまでにどうにかするべきだっただろう。
    「お、おはよう」
    「腰大丈夫ですか?」
    「……まぁまぁ痛いかなー……」
     初めてなのに痛くないって言ってたBL漫画、絶対に許さないからな。正直に言えば、龍二くんは少しあおざめた。
    「っ!あの、今日は責任取ってきちんとお世話します。それから……その、昨日のこと、覚えてますか?」
    「……あー、えーっとぉ」
     覚えている。覚えているのだ。全て、一語一句、全行動、全表情、何もかも脳に刻み込まれている。こういう時覚えていないのがBL漫画でよくあることだっただろう。たまに覚えているのもあったけどよ。こういう時は王道でいいだろ、王道で。
    「……覚えて、いないんスか」
     龍二くんが俺の曖昧な返事に身体を強ばらせた。まるで告白してきた日に、俺が覚えていないと伝えた時と同じようだ。その絶望に満ちた表情が――――――俺は苦手だった。
    「龍二くんが、忘れたいなら忘れればいいと思うし、それなら今すぐ出ていって欲しいかな」
    「……え?」
    「だから、昨日のことがもしも龍二くんに都合が悪いなら無かったことにすればいいと思う」
     身体を繋げて、もしも嫌だと思ったのなら諦めて欲しい。そうすれば、俺も龍二くんも違う人と付き合えるんだから。
    「……都合が悪いことなんてない!」
    「わっ!?」
     龍二くんが俺に勢いよく顔を近づけた。まるで二回目に会った時のように俺の手を掴み顔を真っ赤にしている。
    「むしろ本当に現実かって思うくらいやばかった。何度も何度も夢に見たし、妄想の中では何度も抱いた身体だったけど、それよりも、アンタの声とか表情とか脳に直接来て」
    「いい!これ以上はいい!いいから!」
     これ以上言わせると、記憶がぶり返してしまいそうだ。っていうか、今まで何度も夢で抱かれてのか俺。妄想の中の俺も。大丈夫だったか、お前らは。痛くなかったのか?そんな問答を心の中でしていると、落ち着いた様子の龍二くんが力なく言った。
    「それで、覚えているんですか」
    「……」
     さっきの発言から覚えていると思われていても仕方ないと思うんだが、どうなんだろうか。直接俺から覚えていると聞きたいのだろうか。それとも分かっていないとか。……それなら、覚えていないと言えば解放してくれるんだろうか。
    「あの、さ」
    「はい」
    「俺が覚えていないって言ったらさ、龍二くんはどうするの」
     これは一つの賭けだ。この答えできっと、俺の運命が決まる。
    「それは、アンタにとって昨日の出来事は都合が悪いってことですか」
    「……」
    「もしも覚えていなかったのなら」
     心臓が、痛い。なんでこんなに痛いのか分からない。もしかして龍二くんも今まで同じ気持ちだったのだろうか。龍二くんが口を開いた。
    「また何度でも告白して、何度でもアンタに頷いてもらいます。きっと、昨日頷いたアンタは本心からだったから」
     どうしてこんなにも、俺を信じてくれるんだろうか。今まで君の好意を避けて避けて遠ざけてきた男なのに。今だって、遠ざけた方がいいと思っているのにさ。

    あぁ、もうダメだわ。

     龍二くんの肩に額を乗せた。びくっ、と旗野くんの身体が震えた。俺から触れられたことなんて今まで無かったから、驚いているんだろう。クールキャラと言われているのに、こんなことで驚くなんて新しい発見が多すぎる。
    「ずるい……ずるいんだよなぁ。龍二くんは」
    「……はい」
    「俺、絶対に絶対に絶対に、男に恋しないって決めてたのにさ」
    「はい」
    「なんで龍二くんにならいいって思っちゃったんだろう」
     龍二くんならいい。それが、昨日出た俺の結論だった。三年間で旗野くんのいいところ、たくさん知ってしまった。これから先も、龍二くんのことを知っていきたいと少しでも願ってしまった。だから、俺は告白に対して頷いた。諦めたわけじゃなくて、彼を受け入れたのだ。
     龍二くんが俺の言葉に、息を少し止めた後恐る恐る俺を抱きしめた。ちくしょう、男の体は柔らかくもないのに、どうしてこんなに優しくて安心するんだろうか。こいつだからなのだろうか。
    「それなら、絶対に俺以外の男に恋しないでください」
    「龍二くん以外の男を好きになるはずないわ。……女はわかんないけど」
    「今はそれでも十分です。女の子に目がいかないように、俺だけに夢中にさせますから」
     はぁ〜ずるいわ。こんなのずるいわ。女にやったら全員落ちるのに、なんで俺なんだろう。考えたって無駄なことはわかっているけど、癖で考えざるをえない。いつだって俺は、この世界に翻弄されてきたのだから。だから、
    「俺はこの世界に負けたんじゃない!俺は龍二くんに負けたんだからな!」
     どこかで聞いてるであろう、BL漫画の世界の神様に向かって叫んだ。きっとここまで単行本化だろうからな。今頃引きのコマなんだろうな、ちくしょう。覚えてろよ神様。
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