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    michiru_wr110

    @michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    brmy
    槻衣都
    衣都のペディキュアに気づいてしまった槻本さんの葛藤

    女性の――弥代さんの御御足先がこんなにも繊細なつくりをしていたなんて。

    #槻衣都
    #brmy男女CP

    タランチュラは惑わせる(つきいと) 照明に照らされた弥代さんのつま先が光沢を放つ。不覚にも俺は、玄関照明に照らされた深紅にしばし、目を奪われた。
    「お見苦しいところを、申し訳ありません」
     恐縮しきりの弥代さんは、おろしたての靴下を手にしている。片方の履き口を両手で手繰り、その小さな足先にそっと被せていく。ちらりと見えた素足のつま先はシンプルな単色に彩られていて、爪紅は目の覚めるような華やかさと共に艶めきを放っていた。見え隠れした足の指の一本一本がほっそりとしなやかな曲線を描いていて、それぞれの爪も俺のそれに比べると驚くほどにちいさい。

     儚げな足先だ、と、思った。

     男所帯に身を置き続けた人生。男女の体格差はそれなりに理解したつもりでいたが、とんでもない。女性の――弥代さんの御御足先がこんなにも繊細なつくりをしていたなんて。

    「お恥ずかしながら、行きがけにストッキングをひっかけて、破れてしまい」
     虚を突かれて固まる俺の体たらくを知ってか知らずか、弥代さんは仰る。
    「靴下を調達する猶予はありました。ストッキングはどうしても、時間がかかるので」
     間に合って良かった、と続けながらもう片方の御御足も、パンプスからそっと外す。やはり同様に、手入れの行き届いた足先に爪紅がひかる。指の質感もマシュマロと間違えそうなほどに柔らかな質感で、本当に同じ人間なのか、その事実すらも疑わしくなるほどだった。
     ハウスでの打ち合わせ予定時刻は五分後。道中のアクシデントをもってしても遅れず到着するのだから、日頃から如何に時間管理・危機管理がしっかりしているかが伝わる。

     が、胸中としてはどうにも、それどころではない。

     ずっと見ていたくなるような足先だった……などとは間違っても、天地がひっくり返っても口に出来るはずもない。万が一にでも表に出してしまったが最後、切腹をも辞さないほどの罪深さである。

     冷静さを取り戻すべく深呼吸をする中で、
    「あ、もしかして……見ましたか」
     靴下を履き、勧めていたスリッパを履き終えた弥代さんは問う。
    「」

     なにを……見たと? 背筋がすうっと冷たくなる。

    「え、と……」
    「バレちゃいましたね」
     弥代さんは軽い様子で履いたばかりのスリッパの片側を脱ぎ、靴下を履いた足を軽く上げる。
    「靴下、お揃いにしちゃったんです。槻本さんと」
    「くつ……した」
     曇りのない微笑みに促されるまま見つめてみれば、その靴下は見慣れたゆるキャラの柄。いつかハウスで見られてしまった、俺が持っている靴下と同じものだった。
    「百円ショップにちょうどあって、なんだか嬉しくなって。買っちゃいました」
    (な、なんだ……靴下)
     へなへなと崩折れそうになる態勢を、気合いでどうにか堪えて保つ。
     俺のあまりに失礼な言動の数々は、どうやら弥代さんにとってなんら違和感のない反応として処理されたらしい。
     ひとまずは、良かった。思いがけず都合の良い方向に誤解してくれたから。しかし体裁を保った気持ちの隙間から、どうしたって邪な本音が入り込んでいることをも自覚する。

    (もう一度……あわよくば……なんて)
     きっと気のせいだ。間違っても、考えてはいけない。
     自分に言い聞かせながらも、努めて冷静に彼女をリビングへと誘導する。

     程なくして顔を出したおこげが、無邪気に弥代さんの足元にじゃれつき、頬を擦り寄せた。何だかくらくらしてきたが、それもきっと気のせいだろう。

     表出する前に、間違っても彼女を傷つけないように。消えてくれよ、と願った。
     遅効性の毒はもう体内を巡りはじめている。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    戦衣都(+🌹&🧹)
    お付き合い済の戦衣都、主に⚔の破壊力が凄まじそうだ……と妄想した結果

    * * *

    新開さんはどこぞの王子様よろしく、ダンスにでも誘うのかと問いたくなるほど恭しく丁寧に手を取り、かれこれ数分が経っている。
    (私は一体、ドウスレバ……)
    お前のこと、全部に決まってんだろ(そよいと) この状況は彼の、あるいはその周囲の策略だったのかもしれない。

    「綺麗なもんだな」

     至近距離には今、新開さんがいる。私の手を取って、指先を矯めつ眇めつ、眺めている。

     新開さんが釘付けになっている青色のポリッシュは、水の泡を彷彿とさせる爽やかな水色から呑み込まれそうな深海色のグラデーション。小さなパールが光をはじき、親指と薬指には、真っ白な線画で漂うクラゲのイラスト。それらは指先に閉じ込められた水族館を彷彿とさせる素敵な仕上がりではあるけれど――

    (ミカさんへのお土産だったはずなのに、ここまでは聞いてない……)
     水族館のお土産コーナーにさりげなく陳列されていたのが、海の生物たちを模したネイルシール。これは、と思いミカさんや真央さん用に確保して手渡したのが一昨日。複数のポリッシュと渡したはずのシールを携え「その御御御手を拝借するわよ」と休憩室へ連れ込まれ、見事な手際で装飾を施してくださったのが昨夜の仕事終わり。
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    tang_brmy

    PAST⚠️パソスト公開前に書いたので公式の設定と齟齬があります

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25044306 の続きのふたりのおはなしというか、起承転結の起に当たるはなし。
    なので、衣都ちゃんが出て来ない吏衣都です。出て来るのは吏来さんとミカさんだけ。
    「その日」に思いを巡らす吏来さんを捏造しました。
    on that day「あら、吏来。いらっしゃい」
    「お疲れ」
     勝手知ったる何とやら。ジム帰りにAporiaに寄った吏来は、案内されるより先にカウンターの隅の席に腰を下ろす。
    「いつもの?」
    「うん、お願い」
     おしぼりを手渡しながらオーダーを確認したミカが、何かにあてられたように目を細めた。
    「機嫌がよさそうね」
    「わかる?」
    「それはもう。詳しく教えて……と言いたいところだけど、聞くまでもなくお嬢のことなんでしょ」
     首を横に振って肩をすくめるミカに、吏来は口の端を上げて答えとする。
    (お嬢のこと貰う約束した――とは、流石に言えないよな)
     たとえ親友と言えど、衣都を良く知る相手に詳しい話をするつもりはない。ただ、彼女とうまく行っているのが伝わればいいと、曖昧に濁す。ミカもその辺りの機微には聡いので、それ以上は何も聞かずに笑って、吏来の酒を作り始めた。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    戦衣都

    味のある大根について
    辛さが喉元通り過ぎれば(そよいと) 七……八…………。
     バーベルを持ち上げる腕が、回数を追うごとに重たくなってくる。
    (オーソドックスなのは煮物かおでんだろうか)
     九…………。
     視界の端にトレーナー、もとい新開さんの姿を認める。余計なことを考えてしまうのは、目の前にのしかかる負荷からの逃避なのだろうか。
    (けれど、この時期ならもっと、さっぱりしたものが食べたい。となると)
     …………十。
    (さっぱり…………大根サラダ?)


    「よし、休憩」
    「ふう……」
     取り敢えずの結論が出たと同時にカウントが終わり、十キロのバーベルを所定の位置に戻す。仰向けの体勢のまま私は、天井の壁の無機質な模様の一点をぼんやりとみつめていた。
     当初は五キロほどで息も絶え絶えだった私が、今は倍の重量をそれらしく動かせる程度には進歩している。とはいえまだまだ初心者の域を出ない重量に違いはないし、まだまだトレーナーもとい新開さんのサポートは必須だけれど。いつものジム内、ほぼ貸し切り状態で行われるトレーニングは定期的に続けている甲斐あって、微々たる成長とともに「ある」寄りの体力に近づきつつある。
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    michiru_wr110

    DONEanzr
    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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