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    michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    brmy
    槻衣都
    ※ティーパーティーイベスト微バレ&捏造
    シゲを招いた槻本さん主催の試食会と、ふと気がついた衣都へのささやかな想い。

    「なんすかこれうまいっす!」
    「とりあえず落ち着け」

    #槻衣都
    #brmy男女CP

    及第点を超えてゆけ(つきいと+春日+シゲ)「う……ンまい! っす」
     ハウス内のリビングは、ある種の賑やかな歓声が絶えない。主な原因は、あの世界を離れてもなお俺を慕う男だった。
    「若、なんすかこれうまいっす!」
    「とりあえず落ち着け」
     元舎弟、こと茂田憲保、ことシゲ。半ば強引に試食要員として引きずり込んだのは、考案中のメニューのヒントが欲しかったからだった。シゲのいかつい風貌と洋風の茶会など(それも女性受けしそうなモチーフなど)、この世で最もかみ合わないもののひとつである旨は重々承知の上である。だが致し方ない。今は、いわゆる「猫の手も借りたい」状態なのだから。
     食卓に並ぶ、次回のドレスアップメニュー。アリスのティーパーティーをイメージしたそれらは食事よりもやや軽めの質量で、味はもちろん見栄えするラインナップを考案したつもりだ。
    「なんつーか……めちゃくちゃうまいっす」
    「もっと気の利いた感想はねえのかよ」
    「す、すいやせん! えっと……洒落た味がするっす!!」
     額に手を当て嘆息する。猫の手などとはとんでもない。猫の額並みに語彙力の幅が狭い男だった。
     がっつくシゲの瞳はきらきら……どころか、ギラギラしているほどなので、ラインナップは及第点だったのだろう。ボリュームは、奴の腹を満たすには到底足りないが。

    「大河……さすがに人選間違えたんじゃない?」
     ジト目の春日はぼそりと、率直過ぎる感想を述べる。まったくその通りだとわかっているから言ってくれるな。後悔半分呆れ半分で首を振ると、春日はその平坦なトーンのままに呟いた。
    「弥代に良いとこ見せたいからって張り切りすぎ」
    「げほっごほっ」
     心の内を読んだかのような春日の発言に、呑み込みかけた紅茶が器官に入る。
    「わっ若 大丈夫っすか」
     途端に向けられたシゲの、純粋に心配する視線が色々な意味で痛い。
    「っいい……いいから、気にせず食ってろ……」
    「わ、わかりやした」
     誤魔化すように睨みを利かせると、シゲはおとなしくなり、再びメニューにがっつき始めた。

     とはいえ、春日の指摘は至極まっとうな内容で、だからこその気まずさや気恥ずかしさがある。
     何しろ弥代さんがきて、初めて一緒に運営するドレスアップイベントなのだ。
     彼女が入って間もなくから、企画立案・運営を含め、迅速かつ円滑な進行により成功に導いたという。まだ数回の実績ながら、その盛況ぶりは聞き及んでいる。
     だからこそ、足を引っ張るような真似はしたくない。弥代さんに力量があるとはいえ、アポリアのメンバーとして加わってからはまだ日が浅い。俺が携わることで彼女の評判を落とさないよう、より一層、気合いを入れてしかるべきだろう。

    「春日お前な……」
     かといって易々と春日の発言を認められるほど、俺は人間ができているわけではない。気持ち控えめな抗議の意を述べると、春日は呆れたようにゆるゆると首を横に振った。
    「戦力外ってわかりきってる茂田くんにまで助け求めるとか。どんだけ切羽詰まってんのってハナシでしょ」
     切羽詰まっている……否定は、できない。
     そもそもの前提として、イベント時に訪れるお客様方の、期待を超えたいとは考えている。カフェのコンセプトに沿っている前提で、更なる驚きや感動を提供できないか。
     そのためにはまず、俺の持てる力を総動員しなければ。そうした想いがあることは事実だが。

    (……まずは弥代さんにこそ、喜んでもらいたい)

     唐突にこぼれた本音に気づいて。ああ、そうだと腑に落ちる。
     毎回ハウスを訪れるたび。手製の茶菓子やケーキを、嬉しそうに召し上がってくださる弥代さん。ご本人は表情に乏しいと仰っていたがとんでもない。俺の自信作を目の当たりにした弥代さんの、ふっと、僅かに張り詰めた糸が緩む瞬間に見せる表情を知っている。春日でも、誓さんでも(ましてやシゲなどでもなく)他の誰でもない彼女のあの振る舞いが何ともあどけなくて。他の誰でも代わりにならない、あの眦が微かに下がる瞬間を見たくて。

     恐らく、それなりのものを出したとしても彼女なら受け入れてくれるだろう、とは思う。仲間の力量に全幅の信頼を寄せてくださる、弥代さんなら。
     だが、及第点だけでは物足りない。

     彼女に喜びを……できれば、驚きを引き出させるような、そんな喜びを提供するには。

    「……自力で、どうにかする」
    「ん」
     再考の意を伝えるべく。言葉少なに返事をすると、春日もまた短く肯定する。
     相変わらず前のめりなシゲの、声も表情も賑やかな様を観測しながら。俺は再び香り高い紅茶を口に、そっと含んだ。

     他でもない弥代さんへ、不思議の国に相応しい驚きを提供したい。
     解決すべき事柄はまだまだ山積みだ。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    弥代衣都(+皇坂+由鶴)
    捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
    image song:遠雷/Do As Infinity

    『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
    軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線でめつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。

     無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。

     女の両手は塞がっていた。
     片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
     歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
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    味のある大根について
    辛さが喉元通り過ぎれば(そよいと) 七……八…………。
     バーベルを持ち上げる腕が、回数を追うごとに重たくなってくる。
    (オーソドックスなのは煮物かおでんだろうか)
     九…………。
     視界の端にトレーナー、もとい新開さんの姿を認める。余計なことを考えてしまうのは、目の前にのしかかる負荷からの逃避なのだろうか。
    (けれど、この時期ならもっと、さっぱりしたものが食べたい。となると)
     …………十。
    (さっぱり…………大根サラダ?)


    「よし、休憩」
    「ふう……」
     取り敢えずの結論が出たと同時にカウントが終わり、十キロのバーベルを所定の位置に戻す。仰向けの体勢のまま私は、天井の壁の無機質な模様の一点をぼんやりとみつめていた。
     当初は五キロほどで息も絶え絶えだった私が、今は倍の重量をそれらしく動かせる程度には進歩している。とはいえまだまだ初心者の域を出ない重量に違いはないし、まだまだトレーナーもとい新開さんのサポートは必須だけれど。いつものジム内、ほぼ貸し切り状態で行われるトレーニングは定期的に続けている甲斐あって、微々たる成長とともに「ある」寄りの体力に近づきつつある。
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    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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