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    michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    brmy いと束無印 新刊
    戦衣都+強行部
    20250921【TOKYO FES Sep.2025】頒布予定作品
    A6・50P 300円
    代行あり、 日常あり、藤ヶ谷つかさ(捏造)ありetc
    前半はお仕事の話、後半はつかさ視点+もだもだ足踏みしている両片想いそよいとのお話です。

    #brmy男女CP
    #戦衣都

    【サンプル】騒がしき揺籃歌(戦衣都+強行部)【依頼内容:藤ヶ谷つかさ 極秘警護】
     Aporia店内は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。照明は落とされ、カウンターの奥に置かれた間接灯が、琥珀色の柔らかな光で空間を包み込む。
     節見と弥代は、事前にアポイントのあった男性と向き合っている。約束の時間ちょうどにAporiaのドアを叩いた依頼人は朝倉と名乗り、落ち着いた物腰のまま勧められた席に腰掛けていた。

    「……つかさ嬢の件は、社長にも内密でお願いしたいのです」
     三人だけが集ったこの場が、たった一言により急速に張り詰める。その名前は記憶に新しい。こちらの心情を悟らせまいと、節見が軽く頷き、弥代もまたそっと姿勢を正す。

     年の頃は四十代半ば。朝倉の人当たり良さそうな印象の隙間からは意志の強さが見え隠れしており、言葉にも揺らぎがない。
     交渉部から共有された事前調査によれば、朝倉は恵まれなかった学歴からたたき上げで現在の地位に収まっているらしい。部下に慕われる気配をまといながらも、必要とあらば冷徹な判断を下す人間特有の鋭さが、時折その眼差しに宿っている。

    「理由については察するに余りあるところですが——まずは詳細をお聞かせください」
     節見が促すと、依頼人は声を潜め、言葉を選びながら経緯を語る。

     朝倉は事前に共有されていた通り、藤ヶ谷グループ傘下のホテル事業を取りまとめている立場である。
     社長令嬢である藤ヶ谷つかさは現在、ホテル事業部の広報担当として勤務しているようだ。婚約破棄を経て経営の勉強を始め、下積みの一環として現場に立つようになってからいくらかの月日が経っている。彼女自身の努力の甲斐あって大型の案件に関わる機会も増えており、来月にオープンを控えた某ホテル開業記念イベントにも携わっている。
     実力はあるものの、日々業務に臨んでいるのは一般社員と同じ。とはいえ、つかさの出自を知る者は少なくない。社長令嬢の肩書きは依然として特別な存在ともいえるだろう。

     そんな折に届いたのが、朝倉を名指しした匿名の内部告発だった。
    『とあるスタッフが企業スパイの可能性が高い』
    『外部の人間と結託し、藤ヶ谷社長のご息女を狙っている』

     表向きにはつかさの立場上、開業記念イベントでの登壇を強く望まれているという。だが実際のところ、それはつかさを拘束するための口実に過ぎない。企業スパイたちは、ホテルないし藤ヶ谷グループ全体の弱みを握ろうとする計画だという。

     節見は顎に手を添え、「……なるほど」と短く返す。
    (つかさちゃん……)
     弥代は落ち着かない心情を押し殺し、表情に出すことなく黙って相槌を打った。

     社長の娘であり、弥代の大学時代の後輩でもある藤ヶ谷つかさが狙われようとしている。間近に危険が迫っている事実に、弥代の胸の奥が冷たくなるばかりだ。

    「彼女には追って、ご自身が置かれている状況を伝えるつもりです。何度か関わりを持っているが、つかさ嬢にはここぞという場面での度胸がある。できるだけ普段通りを装ってもらっても問題ないでしょう」
     朝倉は視線を落とし、低く締めくくった。
    「計画が実行された場合は。——安全に、そして早急に、連れ戻していただきたい」


     * * *


     依頼内容の詳細は間を空けず、日付が変わる間際に共有された。
     本来ならば弥代を帰すつもりだったが「代行が決まっているミーティングであれば」と帰宅を固辞。根負けした節見は、無理や無茶が板についてしまいつつあるオーナー代理を連れて行かざるを得なくなった。
     内容が内容だけに、依頼人のヒアリングに同席した弥代も十中八九参加することになるとは思っていたが……弥代がはなから自身を頭数に入れている事実に、節見は内心で盛大な溜め息を零す。

    (Omitted)

     ステージ袖では、つかさが広報担当らしい落ち着いた笑みを浮かべ、司会者の紹介を受けて歩み出る。
     膝下丈のスカートのネイビースーツは、照明に負けない華やかな色合いながらも万が一の際は「走れる」仕様の仕立てらしい。胸元には社章が控えめに光っている。歩調は一定で、視線は真っすぐ前へ向けたまま登壇した。
    「本日はお越しいただき、誠にありがとうございます」
     透き通るような声が会場に広がり、拍手がそれを包み込む。
     弥代は人波の後方からその様子を見つめつつ、周囲の動きを確認した。南口はミカが押さえ、外部からの不審な出入りはない。新開と相沢は出入口や控室周辺を巡回している。

     つかさは淡々と、しかし堂々とイベントの趣旨とホテルの魅力を語り、短いスピーチを締めくくった。
    「——皆さまにとって、この場所が新たな思い出を紡ぐ場となりますように」

     再び拍手が湧き起こり、つかさは一礼してステージを降りた。

     スピーチを締めくくる直前、ステージ袖で動きがあった。
     袖で待機していた付き添いスタッフが、胸元に社章を付けた女性から何事か告げられている。
    「控室まで、私がご案内します」
     そこまでは誰も疑問を抱かなかった。
     本来なら付き添いのスタッフとともに戻るはずが、その女性が先に歩き出し、つかさも自然と後に続く。数歩遅れて元の付き添いが別方向へ離れていく様子を、弥代は遠目に見る。その光景へ俄かに違和感を覚えた刹那。

     ——空気が変わった。

     人混みの向こう、降壇したつかさの周囲には不自然な空白が生まれる。と同時に、先ほどの女性とは別に、社章を付けた二人の男が左右に立ち、軽く腕を取るようにして歩き出した。向かう先は、一般客の立ち入りが制限された奥の通路。

    (……別室に連れ込む気!)

     弥代は即座に骨伝導イヤホンをつけた耳元に手を添え、低く告げる。
    〝つかささん、南西側の控室に向かっています。不審なスタッフ二名と同行〟
     最悪な事態の一報に、誰ともなく息を呑む音がした。


    (Omitted)


    【interlude】
     昼下がりのカフェには、窓越しに柔らかな光が差し込んでいた。渋谷駅から少し外れた裏通りにあるその店は、Aporiaの近くにありながらも人通りが少なく、落ち着いた雰囲気が漂っている。
     木目調のテーブルに腰を下ろすと、ほんのり甘い焼き菓子の香りと紅茶の蒸気が鼻をくすぐった。思わず深呼吸して、ふっと肩の力を抜く。

    「改めまして……先日は大変な状況の中で、本当にありがとうございました」

     私が切り出すと、向かいに鎮座している衣都先輩は小さく笑ってカップを持ち上げた。
    「どういたしまして」
     その笑みは張り詰めていた糸がようやくほどけたような、淡い安堵を含んでいる。
     朝倉さん経由でAporiaに代行依頼をした一連の出来事は記憶に新しい。あれからそう日は経っていないはずなのに、どこか遠い昔の出来事にも思えるのが不思議だった。おかげさまで私自身は慌ただしくも、いつも通りの日常を取り戻しつつある。


    (Omitted)


    【騒がしき揺籃歌】

     夜風に触れた頬がまだひんやりとしたまま、寮の自室前に立つ。
     そのまま鍵を取り出そうとすると、背後で微かに、聞き覚えのある足音が聞こえた。

    「おう、おかえり」
     振り返ると、案の定。ランニングから戻ってきたであろう、軽装の新開さんが外階段を上がってきたところだった。
    「……おかえりなさい」
     短く交わした声が、密やかに夜気に溶けていく。
     話しながらも探り当てた鍵を手にした瞬間、ふと指先が止まる。脳裏をよぎるのは、あの夜の光景。

     つかさちゃんが絡んだ例の代行依頼を受けた夜。その足で節見さんに同行した。強行部に早めに情報共有するとのことで、同席を申し出たからだ。
     節見さんの部屋の前には深夜にもかかわらず、既にミカさん・相沢くん・新開さんが集まっていて、節見さんが開錠すると同時に慣れた様子で室内へと滑り込んでいった。
     「お邪魔します」と口にしてから遅れてパンプスを脱ぎ、靴を揃えたところで顔を上げると――

    「お疲れ」
     あれ、と内心首を傾げた私の傍らで、いつの間にか靴を脱いだ状態の新開さんが待っていた。新開さんの大きな身体の隙間からは、自室へと入っていく節見さんの足だけが見える。素早い動きのミカさんや相沢くんの後を追ったのかもしれない。
    「新開さんお疲れさまです。すみません、もたもたしてしまい」
     待たせてしまっている罪悪感で早口気味に挨拶する。けれど新開さんは、なんてことないようにからりと笑った。


    (Omitted)


     寮の外階段を上がる途中、廊下の奥でノートPCを抱えた弥代の姿が見えた。
     共用回線のルーターがある壁際に腰を下ろし、ケーブルを差し替えている。

    「……回線、落ちたのか?」
     声をかけると、弥代は小さく頷く。
    「はい。さっきから断続的に切れてしまって、作業が進まずでして」
     ほっそりとした横顔には、疲労の色が濃く滲んでいる。ほんのわずかに眉根を寄せ、乾いた笑みを浮かべているのは、内心動揺しているからだろう。
     ただでさえ、あんな重たい代行依頼を終えたばかりだってのに。
    「てことは、全部の部屋が駄目になっているか……? うちは予備回線があるが、弥代はそれ使えないときついだろ」
    「そう、ですね。持ち帰りの仕事を少し片づけようと」
    「今日休みだろ? 真面目か」
    「ハハ……」
     根詰めすぎかよ、と思わず短く息をつく。いつもの弥代ならば、こうした指摘にもう少し上手い返答ができるはずだが。誤魔化すような笑い方を隠そうとしない辺り、本当に疲弊しているようだ。
     俺たち以外の他の面々は、カフェ営業や代行の仕事などで全員出払っている。弥代は今日が代休だったと記憶しているが……まあ、仕事中毒な事実についてはいったん置いておくことにする。
     ひとまずネット修理は日中のうちに連絡するとして、取り急ぎ弥代の作業場所だけでも確保する必要があるだろう。

     逡巡していると、弥代は取り繕うように口を開いた。
    「それにしても、予備の回線、なるものがあるとは」
     あからさまに話を逸らされた気配を感じるが、いったん否定はせず返事をする。
    「翻訳の仕事中に止まっても困るからな。万一があっても使えるようにはしてんだ」
     俺の説明に弥代は、おお……と静かな感嘆の声を上げた。
    「私もそうしたリスクを考慮すべきでした」
    「弥代は基本リモートワークでもねえんだから、必要性は薄いだろ」
     それもそうですが……と複雑な表情をする弥代。反応の可愛さあまりに言葉遊びのように会話を続けていたが、いい加減このまま立ち往生させるわけにもいかないだろう。
    「今日のところは俺の予備回線を貸せる。ただまあ、弥代の部屋まで届くかは微妙だから」
     自室を見上げながら、打開策を提案してみる。
    「もし使うなら俺の部屋に来てもらうことになるが——どうする?」
    「……本当にご迷惑になりませんか?」
     躊躇いと共に、こちらの狙いを探るような視線で問いかける。
    「俺もこれから少し仕事やるつもりだったし、ちょうどいい」
     気を遣わせないように敢えて、淡々と告げる。

     弥代はしばらく迷った末、「では、お邪魔します」と答えた。


     to be continued...
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    弥代衣都(+皇坂+由鶴)
    捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
    image song:遠雷/Do As Infinity

    『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
    軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線でめつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。

     無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。

     女の両手は塞がっていた。
     片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
     歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
    3347

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    PAST⚠️パソスト公開前に書いたので公式の設定と齟齬があります

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25044306 の続きのふたりのおはなしというか、起承転結の起に当たるはなし。
    なので、衣都ちゃんが出て来ない吏衣都です。出て来るのは吏来さんとミカさんだけ。
    「その日」に思いを巡らす吏来さんを捏造しました。
    on that day「あら、吏来。いらっしゃい」
    「お疲れ」
     勝手知ったる何とやら。ジム帰りにAporiaに寄った吏来は、案内されるより先にカウンターの隅の席に腰を下ろす。
    「いつもの?」
    「うん、お願い」
     おしぼりを手渡しながらオーダーを確認したミカが、何かにあてられたように目を細めた。
    「機嫌がよさそうね」
    「わかる?」
    「それはもう。詳しく教えて……と言いたいところだけど、聞くまでもなくお嬢のことなんでしょ」
     首を横に振って肩をすくめるミカに、吏来は口の端を上げて答えとする。
    (お嬢のこと貰う約束した――とは、流石に言えないよな)
     たとえ親友と言えど、衣都を良く知る相手に詳しい話をするつもりはない。ただ、彼女とうまく行っているのが伝わればいいと、曖昧に濁す。ミカもその辺りの機微には聡いので、それ以上は何も聞かずに笑って、吏来の酒を作り始めた。
    3692

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    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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