屍の一族と大男長年連れ添いサテマナの話（最初しんどい）


何だかんだ付き合って、事実婚みたいな感じで数十年一緒に生きてきた二人。
相変わらずガタイは良いものの、老いて性格の柔和さがより滲み出ている近所の人気者おじさんサテツ君。
あの頃よりもぐっと大人っぽくはなったものの、見た目はまだまだ若くて美人のマナ君。ちっちゃいグール達を引き連れてよく買い物したりしてて、いつまでも若々しくて仲の良い御家族ねぇってことで有名な二人。

ある日ちょっとした喧嘩みたいになる。
それまでの関係性に対する甘えから「アンタ俺をいつまで待たせる気ですか」と言ってしまうマナ。
本当はそこまで言うつもり無かったし、本気で転化してほしいわけでもない。
この人はこの年まで人間のままで来たのだし、最期まで人間として終わるのだろうと思っていた。でも心の片隅に捨てきれずに取ってある本音が少し混じってしまった。
「このまま年取ってって寿命で死ぬアンタを見送りたくないんで、もう今日サヨナラしましょう。それじゃ」
って言って一緒に暮らしてる家を出ていく。別れるつもりなんてさらさら無くて、２日ぐらいしたら帰ってくるつもりで、でももしすぐにサテツが追っかけてくるなら即許してあげるつもりの、プチ家出〜ぐらいの気持ちだったマナ。

でもその間にサテツは考えに考えて考え抜いて『確かに待たせすぎた、完全に甘えてた』『このまま置いてくのは嫌だな…』って思ってじいちゃんに頼んで転化させてもらっちゃう。
じいちゃんは頼まれたとき「孫の意思ちゃんと聞いた〜？」って怪訝な顔するけど、まあ老いてきたとはいえこういうガタイがいいのを血族に迎え入れてみるのもやぶさかでないな、仕方ないな〜ってことで転化させることに。でもそこは…長年退治人としてワクチン打ち続けてきた結果とかもあってか、なかなかすぐには目覚めないのである……。
とりあえずデカい棺桶用意して入れとくけど、孫が帰ってくるまでに起きてくれないと孫からの好感度が〜；；と内心冷や汗のじいちゃん…。

そして２日後に帰ってきたマナ絶句。
じいちゃんを責めるけどお門違いなのはわかってるから最後はワンワン泣く。もう泣きに泣く。「ちがう゛；；；人間兄゛ィが大好゛き〜〜；；；」って棺桶に縋ってワンワン泣く。
落ち着いてきたら静かなスンスン泣きに変わって、それでも棺桶からは離れない。「兄ィ〜…早く起きて…起きてちゃんと俺を叱ってよ……」ってペッショペショになる…。
マナが疲れて眠ってる間にじいちゃんもサテくんをペシッと叩いて「さっさと起きんか木偶の坊。マナを悲しませた分しっかり働いてもらうからな」って声かける……なかなか起きない……。

それから数年とか数十年とか経って、マナが日課のおはようのキスしに行くと急に返ってくる反応。「え！」と思ったらサテくんの寝起きの第一声が「腹減った……」なので大泣き大笑いするマナ……。

二人で沢山ご飯食べたあと、しっかり話し合いをして怒り合って謝り合って、その後はじいちゃんの仕事を手伝ったりしながら二人によく似た沢山のグールたちと末永く幸せに穏やかに暮らしましたとさ。ちゃんちゃん。