俺がよかった 「最高の死場所、用意しろよ。」
そう言った男の顔は血塗れで、そしてこの世で一番綺麗だった。
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白いシーツに黒い髪が広がっている。黒髪の主は一糸纏わぬ姿でシーツの上に横たわって動かない。数時間前には体を重ねていた筈の相手の体はすっかり冷たくなっていた。死体のように冷たいそれは、かすかに聞こえる呼吸の音でまだ生きているのだとわかった。
「一虎クン」
独り言のような声で彼の名前を呼ぶ。起きる気配はない。伏せられた長い睫毛がわずかに揺れた。
顔にかかった金髪をそっと耳に掛けてやる。まだ、起きる気配はない。
「キレイな顔」
中学生のあの時から、この整った顔立ちは変わっていない。それどころか過去故の表情の翳りが、一層彼の美貌を引き立てている。それは人を惹きつける彼の魅力ではあるし、彼の武器でもある。彼自身も自分もそのことは理解している。それでも、今この瞬間を切り取って彼を閉じ込めたい。誰にも彼を見せたくない。
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