姉と弟産まれたばかりの柔らかい甥を抱き、胸を赤子の香りでいっぱいにする。姉と甥のそばに居られる短い間は泣けば抱き、おしめが濡れれば代える。乳をやる以外のことは何でもやった。
「姉上、何故人は誰かを好きになるんです?」
寝もせず落ち着いた金凌を抱えて飽きもせずあやしながら、ふとそんな言葉を口にした。
人はどうして別の誰かを好きになるの。江厭離はそう尋ねたもう1人の弟を想った。
「阿澄にも好きな人が出来たの?」
それにしては思い詰めた表情だった。返事はなかった。「是」ということだろう。この子も難しい恋をしているようだ。
「宗主だからこんな人と結婚せねばとか、蓮花塢の為にと自分の心を犠牲にしてはだめよ。」
江澄は責任感が強い。悩んでいるのはそんなところだろう。一生を囚われようとしている弟が不憫でならなかった。
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