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    ポイピクテスト。

    #曦澄

    双璧と双傑、暇じゃないだろうけどたまには食事会して。「人を見る目がない貴方が俺を好きだと言うので心配になるのだ」

    「身も蓋もないね」

    双璧は茶を、双傑は酒をちびりちびりとやりながらそんな話になった。
    確かに藍曦臣は人を見る目がない、というかまあアレは悪質な詐欺だったから仕方がないと言えば仕方がない。観音廟に至るまでもなく、射日の頃からほぼ全員金光瑤は怪しいと見ていたが、沢蕪君も騙されたことの無い温室育ちのお坊ちゃまだったというだけだ。誰も当人にはそんなこと言えないが。
    その不文律のすれすれの話題に魏無羨は大ウケだった。
    藍忘機は大爆笑の魏無羨に膝をバシバシ叩かれているが涼しい顔をしている。今にも帰りたそうではあるけれども。

    「この人に愛されたということはつまり俺は悪人、良くても性悪だろ」

    「阿澄、そろそろお茶はいかがですか」

    心配だと言いつつ、愛されていることは揺るぎないのがなんとも感慨深い。自己肯定感の低い江澄がなぁ……どんな愛情の注ぎ方をしているんだ……というのが幼い頃からを知る兄としての感想だった。

    「お前は良い奴だよ、阿澄」

    「身内の評価なんて当てにならない」

    「み、身内だって〜、らんじゃん〜」

    今にも泣きそうな道侶の背中を黙って摩ってやる。面倒だが魏嬰が喜んでいるから仕様がないと顔に書いてある。
    魏無羨が一頻り「身内」の言葉を噛み締めていると、あろうことか仙門百家全体が細心の注意を払っていた話題を真正面から振られた。

    「じゃあ藍渙が悪いのか?あんな男に騙されて、」

    藍渙だって〜、ひゅーひゅーと冷やかす余裕は無い。
    まずい、また義理の兄が閉関してしまう。思考はその一点だ。

    「いやでもほら、例えばさ、師姐があの時好きになっていたのが沢蕪君だったら俺は応援してた!清廉潔白な沢蕪君、万人が万人藍曦臣は良い奴だって……」

    「いくら姉上でもそれは無理だ」

    間髪入れ無いどころか遮られた。藍曦臣は世界一大切にしている姉にも譲れない?今日は素直すぎる。

    「いくら、姉上でも、それは、無理だ」

    潤んだ藤色は酒のせいか。

    「え、ちょっと待って、曦臣兄さん今の胸に刻みました?」

    藍曦臣の目が座っていた。間違って荷風酒飲んじゃったかなというくらいには。藍忘機は兄もこんな顔をするのかと心が動いたが、同時に当然であろうとも思えた。姑蘇藍氏の男とはそういうものだ。

    「こんな夜はまたとない、忘機、無羨、お開きです。」

    待ってましたとばかりに礼をし、自分を抱え上げる道侶に、今夜ばかりは抵抗しない魏無羨であった。

    (獣の目をしていた……)
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    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050

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    兄上、頑丈(いったん終わり)
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     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
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     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
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     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
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     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
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