Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    つづり

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 5

    つづり

    ☆quiet follow

    ポイピクテスト。

    #曦澄

    双璧と双傑、暇じゃないだろうけどたまには食事会して。「人を見る目がない貴方が俺を好きだと言うので心配になるのだ」

    「身も蓋もないね」

    双璧は茶を、双傑は酒をちびりちびりとやりながらそんな話になった。
    確かに藍曦臣は人を見る目がない、というかまあアレは悪質な詐欺だったから仕方がないと言えば仕方がない。観音廟に至るまでもなく、射日の頃からほぼ全員金光瑤は怪しいと見ていたが、沢蕪君も騙されたことの無い温室育ちのお坊ちゃまだったというだけだ。誰も当人にはそんなこと言えないが。
    その不文律のすれすれの話題に魏無羨は大ウケだった。
    藍忘機は大爆笑の魏無羨に膝をバシバシ叩かれているが涼しい顔をしている。今にも帰りたそうではあるけれども。

    「この人に愛されたということはつまり俺は悪人、良くても性悪だろ」

    「阿澄、そろそろお茶はいかがですか」

    心配だと言いつつ、愛されていることは揺るぎないのがなんとも感慨深い。自己肯定感の低い江澄がなぁ……どんな愛情の注ぎ方をしているんだ……というのが幼い頃からを知る兄としての感想だった。

    「お前は良い奴だよ、阿澄」

    「身内の評価なんて当てにならない」

    「み、身内だって〜、らんじゃん〜」

    今にも泣きそうな道侶の背中を黙って摩ってやる。面倒だが魏嬰が喜んでいるから仕様がないと顔に書いてある。
    魏無羨が一頻り「身内」の言葉を噛み締めていると、あろうことか仙門百家全体が細心の注意を払っていた話題を真正面から振られた。

    「じゃあ藍渙が悪いのか?あんな男に騙されて、」

    藍渙だって〜、ひゅーひゅーと冷やかす余裕は無い。
    まずい、また義理の兄が閉関してしまう。思考はその一点だ。

    「いやでもほら、例えばさ、師姐があの時好きになっていたのが沢蕪君だったら俺は応援してた!清廉潔白な沢蕪君、万人が万人藍曦臣は良い奴だって……」

    「いくら姉上でもそれは無理だ」

    間髪入れ無いどころか遮られた。藍曦臣は世界一大切にしている姉にも譲れない?今日は素直すぎる。

    「いくら、姉上でも、それは、無理だ」

    潤んだ藤色は酒のせいか。

    「え、ちょっと待って、曦臣兄さん今の胸に刻みました?」

    藍曦臣の目が座っていた。間違って荷風酒飲んじゃったかなというくらいには。藍忘機は兄もこんな顔をするのかと心が動いたが、同時に当然であろうとも思えた。姑蘇藍氏の男とはそういうものだ。

    「こんな夜はまたとない、忘機、無羨、お開きです。」

    待ってましたとばかりに礼をし、自分を抱え上げる道侶に、今夜ばかりは抵抗しない魏無羨であった。

    (獣の目をしていた……)
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖💖💖💖💖👍💕👏💖👏💯💜💙💖💜💙👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    takami180

    PROGRESS恋綴3-5(旧続々長編曦澄)
    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
     江澄は藍曦臣の衣の背を握りしめた。
     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
    1437

    takami180

    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050

    takami180

    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそ 1337

    recommended works

    takami180

    PROGRESS続長編曦澄11
    これからの恋はあなたと二人で
     寒室を訪れるのは久しぶりだった。
     江澄は藍曦臣と向かい合って座った。卓子には西瓜がある。
     薄紅の立葵が、庭で揺れている。
    「御用をおうかがいしましょう」
     藍曦臣の声は硬かった。西瓜に手をつける素振りもない。
     江澄は腹に力を入れた。そうしなければ声が出そうになかった。
    「魏無羨から伝言があると聞いたんだが」
    「ええ」
    「実は聞いていない」
    「何故でしょう」
    「教えてもらえなかった」
     藍曦臣は予想していたかのように頷き、苦笑した。
    「そうでしたか」
    「驚かないのか」
    「保証はしないと言われていましたからね。当人同士で話し合え、ということでしょう」
     江澄は心中で魏無羨を呪った。初めからそう言えばいいではないか。
     とはいえ、魏無羨に言われたところで素直に従ったかどうかは別である。
    「それだけですか?」
    「いや……」
     江澄は西瓜に視線を移した。赤い。果汁が滴っている。
    「その、あなたに謝らなければならない」
    「その必要はないと思いますが」
    「聞いてほしい。俺はあなたを欺いた」
     はっきりと藍曦臣の顔が強張った。笑顔が消えた。
     江澄は膝の上で拳を握りしめた。
    「あなたに、気持ち 1617