驚翔する鳥、相隨いて集い 時間にすればそれはほんの数秒のことだった。
空桑近郊で暴れ回っていた食魘の討伐の最中のことである。やや大型と分類できる体躯の相手ではあったが、鵠羹、鍋包肉、佛跳牆を中心とした古参の面々から連なる一行の攻勢は危なげないものであったはずだった。
だが冷静かつ無比な一撃で顳顬を射抜いた鍋包肉の矢を、断末魔の悲鳴を上げて抜き取った食魘が、最後の足掻きとばかりに投擲して来たのだ。
瀕死とは思えぬ鋭さで放たれた矢は射手である鍋包肉から大きく逸れ、暴投とも呼べるそれが後方で支援に回っていた鵠羹へ運悪く掠めた。
結論から言えば、敵の暴投とは言え反射的に体を引いた彼に直接的な怪我は無かった。だが咄嗟の身躱しであったが故に、彼の特徴的とも言える片側だけ長く伸びた髪の一房が、ブツリと切れてしまったのだ。
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