政府が押収した終末病棟看護師の日記2XXX年 3月19日
今日は不思議なことがあった。
いつも病室に行けば患者様の匂いとは違う、なんだか花のいい匂いがした。
しかも俺が苦手な【修正済み】さんの病室からだった。あの人花なんか飾ってないんだけどな。
2XXX年 3月20日
夜勤のシフトで遅い時間に出勤したんだが、【修正済み】さんの部屋に見覚えのない人がいた。あの人に面会者だなんて珍しいなほんと。いつもはしかめっ面してるのに、あんな穏やかに笑って話すんだな。
しかも、俺に急に「ありがとう」なんか言ってくるし。
2XXX年 3月21日
【修正済み】さんが今日未明に亡くなった。昨日の「ありがとう」はこういうことだったのかな。ここに勤めて数年経つのに、患者様の意図を読み取れないなんて失格かもしれない。そういえば、あの部屋からまた花のいい匂いがした。
2XXX年 【修正済み】
今日は内部監査か何かで面談があった。外人か知らんけど端正な顔立ちの男だったな監査の人。男も惚れる男ってあんな感じなんだな。これ今書いてて思い出したんだが前にあった花の匂い、桜だ。俺のじいちゃんが亡くなった時にも桜の匂いがした。
案外お迎えにくる死神ってヤツは、桜の匂いがするロマンチストなんかね。