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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    四季漣。(2019/04/30)

    ##四季漣

    するのとされるの 漣っちはいつも気まぐれだけど、今日は輪をかけて気まぐれだった。
    「おい、四季」
    そして、上機嫌だった。何があったんだろ。ちょっと気になったけど、それを聞く前に漣っちは言った。
    「腕相撲で俺に勝ったらなんでもしてやるよ。何度挑んでもいいぜぇ? オマエみたいなもやしにゃ、ぜってー負けねぇしな」
     そういって、いつもみたく特徴的な声で笑う。オレは漣っちがそんなことを言い出した理由よりも、もっともっと考えることがあった。
     漣っち、今なんでもするって言った。
     しかも、何度挑んでもいいらしい。ってことは、オレが諦めない限り、永遠にチャンスはあるってことだ。いや、漣っちのことだから、コレが本日限定の思いつきであることは明確なんだけど、今日はあと十時間ある。ああ、家に帰らないといけないからそんなに時間はないんだけど、
    「何してもいいし。両手使われてもヨユー。どうだ? やるか?」
    「やるっす!」
     前のめりに返事をすれば、漣っちは得意げな顔をしている。オレを手のひらの上で弄んでる時の笑顔だ。漣っちは、オレが漣っちのことを好きだと知って以来、たまにこういう顔をして、オレを試すように振り回す。
     ぎゅ、と手を握る。普段はなかなか繋げない手が、がっちりと触れ合う。
     漣っち、オトコはオオカミなんすよ。オオカミにそんなこと言っちゃって、後悔したって知らないんだから。


    「飽きた」
    「ま……まだまだ……っす……」
     やっぱり漣っちは気まぐれだ。一時間弱で漣っちは飽きた。あまりにも飽きていて、オレは文字通り片手間に相手にされている。漣っちは巻緒っちや咲っちにお菓子を取ってきてもらってそれを空いた手でもぐもぐ食べている。巻緒っちと咲っちはオレを応援してくれてるけど、一向に勝てる気配はない。
    「もっかい! もっかいっす!」
    「好きにしろよ……ふぁ、ねみ」
     ヤバイ、漣っちマジで寝そう。ほっといたらこれは絶対に寝るパターンだ。知ってる。
     でも、眠いならチャンスかもしれない。もう何十回もやったことだけど、もう一度、と意気込んでオレは両手に全体重をかけて思い切り漣っちの腕を押す。
     のだが、ピクリとも漣っちの腕は動かない。こっちは全体重をかけてるのに。そんなハテナも何十回目。オレの手の甲が思い切り机に叩きつけられるのも何十回目。
    「ってぇー……」
    「オマエじゃ勝てねーってわかったか? わかったら……」
    「もっかい! もっかいっす!」
     そして、オレのセリフも何十回目。手が触れ合うのも何十回目。
     でも、漣っちは優しい。漣っちは嘘をつかない。だから、もうとっくに飽きてるのにまだオレに付き合ってくれている。
     少し前まではそれなりにいたギャラリーもだいぶ減った。結果がわかりきっているからだろうか。それでも何人かは見守っているオレ達の試合。何十回目かわからないスタートの合図。
     あー、なんで勝てないんだろ。何してもいいって言われたから、こうやって両手を使ってるのに。
     ん、ちょっとまって。何してもいいって、漣っち言った。だったら。
    「漣っち」
    「あ? ……は?」
     スタートの合図と共にオレは体を乗り出す。近づいた漣っちの唇をぺろりと舐める。本当は舌でもいれてやろうかと思ったけれど、さすがにそれは遠慮した。
     漣っちの顔が固まる。オレはすかさず両手に全体重をかける。なんかギャラリーの声が聞こえた気がするけど、無視。
    「うおりゃー!」
    「んあっ?」
     ダン、勢いよく漣っちの手の甲が机にくっつく。勝った。漣っちに勝った。
    「やったー! やったっすよ! 漣っち! オレの勝ちっすよー!」
    「………………は?」
     まだ状況が飲み込めない漣っちの腕をぶんぶんを振り回す。漣っち、約束、忘れてないよね。
    「お願い、聞いてもらうっす!」
    「……まてコラ」
    「なんすか?」
    「今のはナシだろ!」
     漣っちが怒ってる。いや、怒ってるというよりは、困ってるのかな。だって漣っちは怒れない。「何してもいいし」って、漣っちは自分で言っちゃったから。
    「……何してもいいし」
    「ぐっ……」
    「何してもいいって、漣っち、言ったっす」
     チッ、って。隠す気のない大きな大きな舌打ち。それでも漣っちは自分で言ったことは守る人だ。
    「………………………………なにすりゃいいんだよ」
     観念したように漣っちが言う。こういうとこ、大好き。なんだかんだで漣っちは優しいのだ。
    「おい! なにすりゃいいのか聞いてんだよ!」
     短気なとこも好き。っていうか、全部好き。そんな漣っちがオレの言うことを聞いてくれる。あ、そういえば。
    「なんでもって、何個までオッケーっすか?」
    「一個に決まってんだろ!」
     ふざけんな、と漣っち。そりゃそうだよね。でも、だったら。
    「決めたっす」
    「おう」
    「…………あの、……えっと」
    「……何まごまごしてんだよ」
     いざ言うとなると緊張する。それでも、意を決して口にした。
    「…………してほし……っす」
    「あ?」
    「……ちゅーしてほしいっす!」
    「………………はぁ?」
     さっきみたいに漣っちの時が止まる。でも、それは一瞬の出来事だった。みるみるうちに漣っちの顔が赤く染まっていく。なんだ、漣っち、照れてるのかな。
    「……っざけんな!」
     あ、違う。これ怒ってるだけだ。
    「テメー! さっき俺様に……キ……勝手なことしてきたじゃねーか!」
    「だって、それは何してもいいって言ってたから、」
    「さっきテメーからしたんだからもういいだろ!」
    「ダメっすよ! するのとされるのは違うんすよぉ!」
     漣っちはキレてるけど、オレだって引き下がれない。「なんでもしてやるよ」って言われたときから、いや、好きって伝えてから、ずっとずっとオレは漣っちにキスしてほしかったの。オレから、じゃなくて、漣っちから。
     おんなじような内容を、繰り返し繰り返しぎゃんぎゃんと言い合った。お互いが呼吸を整えるために訪れた沈黙に、一つの声。
    「いいからちゅーしちゃえよ、漣」
     振り向けばそこにはにやにやしたハルナっち。眉間に指を当ててるジュンっち。そんなジュンっちを見てるナツキっちと、赤くなってるハヤトっち。嬉しそうにこちらを見つめる咲っちと、いつもと変わらない様子の巻緒っち。
     そういえば、いた。残り少ないギャラリー達。
    「約束なんだろ? ほら、男に二言はないぜ?」
    「事務所でやることではないと思いますけど……」
    「いや……付き合ってるのは知ってたけど、実際に見ると照れるな……」
    「付き合ってねーし!」
    「ええ!? 漣っちオレと付き合ってるでしょ!?」
    「付き合ってねーだろ!?」
    「好きって言った時、そーかよって言った!」
    「なんでそんだけで付き合ったことになんだよ!」
    「断らなかったじゃないっすか! それにオレが漣っちにちゅーしても怒んないじゃん! 漣っちは付き合ってない相手にちゅーされても平気なんすか!?」
    「っ! それは、」
    「いいからとっととちゅーしろよー」
    「れーんー! そういうのはあんまり待たせちゃいけないんだぞ!」
     オレとギャラリーの圧が漣っちを追い込む。少しだけ黙った漣っちは、事態が好転しないことを悟ると小さな声で呟いた。
    「…………コイツらをどーにかしろ」
    「! 漣っち……!」
    「………………してやるから」
    「きゃー!」
    「はいはい、おじゃま虫は退散しますよー」
    「いこ、ナツキ」
    「お幸せに!」
     ぞろぞろと立ち去るみんな。二人っきりになったオレと漣っち。二人っきり。ああ、一体どんな情熱的なキスが。そう思った矢先、腕を掴まれ引き寄せられた。近づいた頬に、漣っちの唇が一瞬だけ触れる。
    「…………満足かよ」
     なにそれ。なにそれなにそれなにそれ。
     すっごい、かわいい。
    「……足んないっす」
    「もーやだ」
    「……じゃあ、オレからするから逃げないでほしいっす」
    「一個しか聞かねぇって言ってんだろ」
     聞こえないふりをして口づけた。漣っちは逃げたり怒ったりしなかった。
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    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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