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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    薫輝。(2018/02/24)

    ##薫輝

    共に生きるということ。塩と胡椒をしただけの肉が、じゅうじゅうと焼ける家庭的な音。
    その音を聞きながら桜庭薫はため息をつく。
    何故、自分が食事を作っているのだろう。自身と、彼との二人分の食事を。

    きっかけはほんの些細な雑談だった。
    「桜庭って、料理できなかったら一人暮らし大変じゃねぇの?」
    ちょうど桜庭のフォークがレタスを突き刺した瞬間。
    確か、天道が作った食事を二人で囲んでいたときに、天道が何の気はなしに言ったこの言葉。
    「バカを言うな。僕は人並みには食事くらい作れる」
    料理ができないだろう、という前提の発言に少しムッとして返せば、そこにあったのはキラキラとしたラズベリー色の瞳だった。
    「そうなのか」
    裏切られるなんて思ってない、信頼の色。
    「俺、桜庭の飯食ってみたいな!」
    失言ではなかった。だが、面倒なことになった。

    こうしてあれよあれよという間に話は進み、桜庭はこうしてキッチンで二人分の食事を作っている。テーブルでは、天道が上機嫌に待っている。立場が入れ替わっただけの幸せな食卓だ。
    人並みに料理はできる。嘘はない。ただ、桜庭は自分の料理がおいしいと思ったことなど、ただの一度たりともなかったのだ。
    無意味だ、と思う。天道のほうが料理はうまいし、天道自身、他人に料理を振る舞うことを楽しんでいる。だとしたら、天道が料理を作った方がよいに決まっている。ただ、料理を食べてみたいと言われそれを断るには、桜庭は天道の瞳に弱すぎた。
    「ほら、できたぞ」
    「おお!うまそうだな」
    うまそうなものか。桜庭は内心、そう思う。それでも天道の笑顔を見ていると、何か自分がとてもよい行いをしたような気分になった。
    「いただきます」
    二人の声が重なる。示し合わせずに、互いに肉にナイフを入れ口へと運んだ。
    「うまい!」
    そう言って天道が屈託なく笑う。その表情には、嘘や世辞なんて一つもなかった。そして桜庭はと言えば、少しだけ驚いたように口を開いた。
    「……そうだな」
    何故だろうか。いつもの食事よりおいしいと感じたのだ。特別いい食材を使ったわけではない。味付けもいつも通り。取り立てて空腹なわけでもない。なのに、いつもの味気ない食事が今日はおいしく感じたのだ。
    不思議だ、と思う。でも、理由はわかるような気がした。
    「……たぶん、君のおかげなんだろうな」
    言葉の意味をわかりかねるようで、天道がきょとんとした目でこちらを見ている。
    そうだった。
    彼と食べる食事は、いつだって少しだけ特別で、きっと格別においしいのだ。
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    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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