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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    ××の独白。捏造。(2018/05/11)

    ##牙崎漣
    ##カプなし

    とある男の独り言 日本にはひさびさに来た気がする。ここは食べ物こそうまいが、利便性のある街は決まってくだびれたスーツの群れがゾンビのように徘徊しているか、日本という閉鎖空間で独自の文明を築いた若者が自分のようなオジサンには理解不能な行動を取っているかのどちらか、あるいはその両方だ。
     今日も例に漏れず、女学生達が群れている。相変わらずよくわからない。だが、華やかでいいことだと嫌みなく思う。子供は好きだ。若者は宝だ。見ていたい、関わっていたいと掛け値なしに思う。そんな彼女達は操られたように首を上に傾け、頭上のモニターを見つめている。何かが始まるらしい。

     突然、爆音とともにモニターに流れる映像と音楽。ひきつけを起こしたように一斉に黄色い歓声をあげる彼女達。何事かとモニターを見るより早く、耳に馴染んだ懐かしい声が大音量で鼓膜を揺らす。
    『オラァ! オマエら! 見てるか』
     キャー! と、モニター越しには届くはずのない悲鳴のような声援がわきあがる。こちらの声なんて届くはずがないのに、、画面の向こうの見知った顔は満足そうに頷いた。俺の好きな銀髪が動く度に美しくなびく。
    『THE虎牙道』
     画面下のテロップを見て、そしてモニターの映像を見て理解した。なんだ、アイツ、今はアイドルなんてやってるのか。
     数年前に別れたきりの子供が画面の向こうで踊っているのを見るのはなかなかに不思議な気分だった。
     そうか、アイツ身体能力は高かったからな。ダンス、うまいな。歌はもっと頑張れ。でも荒削りな歌声は悪くない。ひいき目ろうか。
     いつか、拳以外で頂点を獲ってみせると啖呵を切ってオレの手を離した息子。ああそうか、そこがオマエの新しいフィールドなんだな。
     モニターに惹かれて人が増えてきた。その場から離れ、歩き出す。
     そうか、アイツがアイドルか。
     昔から人目を惹く子だったのかもしれない。だから、オレも目をつけたんだろう。赤ん坊なんてみんな同じに見えるって言ったヤツがいたけど、そんなことはないだろう。オマエはどの赤ん坊とも違ってた。
     懐かしい記憶だ。ベビーカーに乗ったオマエはものすごく小さくて、簡単にオレの腕の中に収まってしまったから、そのまま連れて帰った。最初のうちは親がいないからか毎日泣いて大変だったっけ。でも、しばらく一緒に過ごすうちに笑うようになって、ああ、あの時は本当に嬉しかったなぁ。
     子供の育てかたなんて知らないから戸惑ったけど、素直でまっすぐないい子に育ったと思う。
    空気は読めない……いや、読まない子に育ったが、気が使えないわけではないと思う。親の欲目というやつだろうか。本当は、親でもなんでもないけど。
     一度だけ母親のことを聞かれて、オレが言葉に詰まっていると、もういい、とだけ言って、それきり母親のことは聞いてこなくなった。優しい子だと思う。
     ごめんな、オレはオマエしか見てなかったから、オマエの母親の顔なんて覚えちゃいないんだ。もちろん、父親の顔なんて見たこともない。オマエの母親、まだオマエのこと探してるのかな。だとしたら、ちょっと可哀想だな。アイツはもう、母親なんていなかったものとしてるから。
     名前だって違うんだ。アイツ、今は『漣』って名前なんだぜ。オレがつけた、オレだけの、オレの子供の名前。
     考え事をしてたら坂道を上り終えていて、視界が一気に開けて気分が良かった。カレーでも食べて帰ろう。そうして、少しして落ち着いたらまた子供を育ててみるのもいいかもしれない。次の子も、目の色がキレイな子がいいな。
     ああ、初夏の日差しが気持ちいい。あの子に出会った季節。5月の空気を目一杯吸い込んで、オレは歩き出した。
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    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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