空洞です。牙崎さんが死んでしまいました。
私が見つけたときにはもう絶命していて、どうにもこうにもならなかった。悲しすぎて涙すらでない。
困る、というよりは単純に悲しかったので、蘇生することに決めてからは早かった。私は悪魔と契約して、牙崎さんを見事に復活させたのだ。
ところがこの悪魔が適当な仕事をしてくれた。この牙崎さん、なんと、笑うのだ。恩を魂に刷り込まれたのか、私にだけ、ひどく柔らかく笑う。
無意識なんだろう。一度だけ肩を強く掴み「笑わないでください」と懇願したのだが、彼はいつもの不機嫌な声で「アァ? 笑ってねぇよ」と言うのだ。だからその言葉を信じようとして、あの笑顔を全部忘れようと努めて──また裏切られる。彼はふわりと、にこりとする。綻ぶ花のようなくすんだ黄色は、仏花の水仙を想起させた。
それだけだ。
彼は今日も私の理想のアイドルだ。それでも、ちょっと考えてしまう。直したのは私なんだから、壊す権利だって、私にあるんじゃないか、なんて。