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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    街角探偵の幻覚です。間違いは見逃してください……!(2022/09/26)

    ##街角探偵

    1袋5食入り428円「……これで解決だな。よし、飯でも行くか」
    「はい! センセー!」
    「なににすっかな……デカいヤマだったしな。肉でいいか」
    「センセーと食えるならなんでもいいっす!」
     解決。そう呟いて新米の刑事はため息をついた。目の前で和気あいあいと、少し早めの晩飯について話す探偵たちにとって事件は解決なのだろうか、警察である自分たちは今からやることが山積みだ。
    「なに、お肉食べるの?」
    「そっちは今から飯食う暇もなさそうだな。ご愁傷さま」
    「いいなー。僕もそっち行きたい」
    「駄目ですよ先輩。……っていうか、こんな猟奇殺人を検挙した直後によくお肉が食べられますね……」
    「僕は平気」
    「俺も」
    「俺もだな」
    「あー!」
     三対一で少数派となった新米刑事が声をあげた。彼だって探偵たちが行きつけにしている焼肉屋なら知っていたし行ったこともある。彼は店を思い浮かべて、壁に貼られたメニューを思い出して──思わず大きく息を吐く。
    「別に焼肉くらい食べられますけど……」
    「ならちょっとくらい休憩したっていいだろ。一緒に行くか?」
    「何が楽しくてバラバラ殺人事件を調べたあとにホルモンが売りの焼肉屋行かなきゃならないんですか!……僕は嫌ですからね」
     タン、ハツ、ハラミ。彼らはここ数日ですっかり肉の部位に詳しくなっていた。ついでに、人間の中身にも。
    「じゃあ三人で行くか」
    「先輩は置いていってください。ほら、あとは警察の仕事です」
     言外にもう探偵に用はないと告げればサングラスの青年が不満げに牙を見せた。抵抗するように凄んでみせる後輩を見て、先輩と呼ばれる刑事は楽しそうに笑う。
    「お肉行ってらっしゃい。ふふ、でも意外だなぁ」
    「アァ?」
    「おい、なんにでも突っかかんな。……で、意外ってのは?」
    「いや、てっきり食べるものは選ばせてあげるのかと思ってた。泉さんが決めるんだね」
     そういえば、と新米刑事が呟いた。探偵が言うところの事件解決に立ち会ったことは何度かあったけれど、食べに行くものを決めていたのはいつだってこの掴みどころのない糸目の男だ。
    「舎弟くん。食べたいものがあったら頑張って試験に受かってこっちにおいで。リクエスト、聞いてあげるよ」
    「大きなお世話っすよ。それに、俺の食べたいもんは特別だからな。ね! センセー!」
     パッと向日葵のように咲いた笑顔を真正面から浴びて、探偵は苦笑する。「そういうことだ」と呟いて、今度こそ探偵は背を向けた。それを追う派手なジャケットを見送りながら、残された刑事たちは現場に目を向ける。
    「……じゃ、頑張ろっか。終わったらなんか食べに連れてってあげる」
    「はい。寿司でお願いします」
    「言うねー」
    「ホルモンは見飽きたので」
    「ラーメンでいいじゃん」
    「じゃあチャーシュー麺で」
    「肉じゃん!」
     糸で縛られた死体を見る機会はなかったのでセーフだと、童顔の刑事は顔色一つ変えずにそう言った。

    ***

     センセーと食べる飯はなんだってうまい。でもどうしても忘れられない、特別な味がある。
     特別だから、たまにしか食べられない。例えば事件解決にとんでもなく貢献したときとか、カラダ張って依頼人を助けたりとかしたときに食わせてもらえる、特別なもの。
     寿司はまぐろが好き。肉だったらカルビがいい。馴染みの町中華はレバニラがうまいしラーメンは絶対とんこつ。あとは、なんだろう。先生って考えてみたらあんまりいろんな店に行かないんだよな。定食屋、ラーメン屋、中華のローテ。そんで定期的にコンビニの飯。めんどうなときは買い置きのカップ麺。早い話、センセーは自炊をしない。
     そんなセンセーが台所に立っている。今日は特別な日だから、センセーが俺のために台所に立っている。
    「本当にこんなもんでいいのかよ」
    「こんなもんなんて言わないでくださいよ。俺、これが世界で一番好きっす」
    「寿司でも焼肉でもいいって言ってんのに……物好きなやつだよ、ほんと」
     ふつふつと、熱が漂う。形容もできない無色透明な湯気がワンルームの事務所に満ちていく。センセーがシンクの下からインスタント麺を取り出して袋をあけた。ぱらぱらと、群れからはぐれた麺のはじっこが落ちる。
    「……俺、センセーの作るラーメンが一番好きです」
     俺にとってこのラーメンは特別だ。出会った一番初め、ボロボロだった俺を拾ったセンセーが何も言わずに差し出してくれた一杯のラーメンに、俺は本当に救われたから。
     あのときの俺は腹が減ってんのか、傷が痛いのか、無性に寂しいのか、何が悲しいのかもわからないまま、ぼーっとしてたんだと思う。なんだか、手を差し伸べてくれたセンセーに暴言も吐いたような気がするけど覚えてない。覚えてるのは差し出されたラーメンの湯気越しに見たセンセーの顔だ。自分の涙で情けなく歪んだセンセーの、どうしようもない子供に向けるような苦笑いをずっと覚えてる。
     センセーのラーメンはいつも適当だ。水の量なんて計らないから味は薄かったり濃かったりするし、具だってほとんどない。ぐつぐつと煮えたお湯に麺と粉末スープを同時に入れて、麺がガチガチに固まっているうちから箸でくるくると、ずっと混ぜている。もちろん時間だって計らない。ある程度煮たら麺を一本取って、かじる。よく首をひねっているのは、だいたい茹ですぎているからだ。
     ラーメンが入った鍋が俺の目の前に置かれる。この事務所にラーメンが一杯入る大きさの器なんてないから、そのまま。そしてセンセーは必ずひとつだけたまごを入れてくれる。透明な白身が黄身を守るようにどろりと膜を貼り、外側から徐々に熱で白く染まる。俺はラーメンを混ぜていた箸を受け取って、麺を持ち上げて勢いよく啜った。
    「……うまいかよ」
    「はい! 世界一うまいっす!」
     今日も麺は少し伸びていた。スープは少し濃いめ。たまごを乱雑にかき混ぜて黄身を麺に絡めて食べれば、胃がぽかぽかと温かくなる。
    「……ほんと、今日も特別うまいっす」
    「そうだな……特別にたまごもいれてやったからな」
    「はい!」
     俺はこの言葉をずっと覚えてる。ラーメンを持ってきたセンセーはたった一言、「特別にたまごもいれてやったから」って笑ったんだ。
    「……俺、このラーメンが一番好きです」
    「聞いたよ。ったく、さっさと嫁さんもらって手料理に篭絡されて、こんな味忘れてくれ」
    「嫌ですよ! だいたい、嫁さんならセンセーのほうが……」
    「俺は仕事が恋人だから」
     そう言いながらセンセーはピザ屋のチラシを広げていた。というか、いつも引き出しに入れてるデリバリーのチラシ全部持ってきてる。
    「え!? センセーもラーメン食べましょうよ!」
    「やだよ、俺の作るラーメン不味いもん」
    「なら俺が作って……」
    「無理無理。もー完全にピザの口になっちゃった。お前は?」
    「えー……パイナップル入ってるやつ」
    「出たよ……お前それ全部食えよ」
    「おいしんですって! センセーも騙されたと思って!」
    「騙される探偵なんて泳げない河童よりも役立たずだろ」
     そう言ってセンセーは電話をかけはじめた。マルガリータ、トロピカルパイン、テリヤキチキン。その声を聞きながらずるずると麺を啜っていたら、あっという間にラーメンはなくなってしまう。惜しむように少しずつスープを飲んでいた俺に、電話を終えたセンセーが笑う。
    「そんな不味いもん食わなくても、今日はなんだって食わせてやるのに」
     テーブルの上に散らばったチラシをセンセーは指で弄ぶ。いろんなメニューが色とりどりに踊っているけど、俺はこのたった一杯のラーメンが心の底から嬉しくてどうしようもない。
    「俺、特別な日は絶対にセンセーのラーメンが食いたいんですよ」
    「……知ってるよ。別にたまになら作ってやるのに、仕事がうまくいった日とかしかリクエストしないんだもん、お前」
    「特別な味っすからね! これは自分へのご褒美っていうか……なんだろう? とにかく特別なんですよ!」
    「はいはい。食ったら流しに持ってっとけよ」
     そう言ってセンセーは伸びをしてソファに沈み込んだ。財布をテーブルにおいて、ピザ屋が来たら精算しとけと告げる。俺は二つ返事で了解し、鍋を流しに運ぶ。後ろから、声がかかる。
    「誕生日おめでとう。来年はもっとうまいもんねだれよ」
    「……来年も、またラーメンよろしくお願いします!」
     呆れるような、小さな笑い声が聞こえた。センセーはわかっているんだろうか。来年って言葉が、俺にとってどんなに嬉しいのかを。
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    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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