もう少しで忘れてしまった
── デミウルゴス様から元の世界に戻れるって言われたから、ちょっと里帰りしてくる。え、いつ帰るかって? うーん、2、3日くらいかなぁ。作り置きは沢山してくから。
そう言って、彼奴が元の世界に帰って10年が過ぎた。2、3日ではなかったのか。
作り置きは最初の2日で全て食べきってしまった。何故全て食べてしまったのか、あの頃の我らをぶちのめしたい。
もう、こちらに戻ってくる気はないのか。このままではお主の作った飯の味も、お主のことも……。
「ただいま〜」
『は?』
「ん?」
『あ、あるじー!』
『お前! 今まで何してたんだよ!』
「え?」
『待ちわびたぞ主殿!』
『お主っ!今まで何をしていたのだ!!』
「ちょ、えっ、何!?」
詳しく話をきけば、彼奴は3日の帰省で戻ってきたそうだ。既に10年の時月が流れたと話せば、驚きと同時に「心配かけてごめんな〜」と申し訳なさそうに謝られた。
「とりあえず、ご飯作るよ。みんな腹減ってるだろ」
『肉!肉だ!!』
『あるじのご飯!』
『久々に美味いもんが食える!』
『ついでに酒も出してくれんかのう』
「はいはい」
10年振りに食った彼奴の飯は、待たされた分これまでで1番と言っていいほど美味かった。それと──
『おい、今夜は覚悟しておけ』
「えっ!?」