怪呼ぶ将校(仮題)4翌日、昼前に腹ごしらえをして、意気揚々と地図の場所に向かう2人は途中、子どもの集団と出会い、これを呼び止めた。
「道案内を1人雇いたい。お前たち、ここらの土地には詳しいだろうな」
見慣れない軍服を警戒してか、遠巻きに見ていた子どもたちも、鯉登が金額を提示するとぞろぞろと近づいてきた。
「軍人さん、どこへ行きたいの?」
「立閑川だ。この辺りにあるだろう?」
鯉登が答える。
興味深そうに集まっていた子供たちが、その言葉を聞くと一目散に散っていった。
鯉登は月島を見た。
「私、何かおかしなことを言ったか?」
「さあ、普通だと思いますが」
月島は首を傾げて答えた。
辺りを見回すと、少し離れたところに1人の少年が立っているのが見えた。先程の子どもたちの輪の中には混じっていなかった子どもだ。歳の頃は同じようだが、背が高く、がたいもよく、どこか達観した顔付きをする。
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