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    樹希@xedPLUS

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    白鳥デシル関係のラフスケッチ

    ##AGE

    AGE白鳥ラフスケッチデシル関係のフィッツジェラルド攻防戦~最終決戦ラクガキ。
    ほぼ台詞が書き付けてあるだけのラフスケッチ。


    ***
    (フィッツジェラルド攻防戦/何故か地上に出てるデシル/何年ぶりの兄弟の会話)

     何かに呼ばれたような、何かを感じたような気がして、ゼハートは何もないはずの地上に目を向けた。一瞬。見えるはずもない、小さな何かが見えた気がした。拡大。そこには確かに、壊れかけの白い人影があった。
    「兄さん!?」
     何故こんなところにだとか、何をやっているのかだとか、浮かぶ端から弾ける。
     上からは敵。間もなく攻撃が来るのが見えている、回避してカウンターを当てることは容易だった、だが避ければ兄が死ぬ。
     もう一度、兄が死ぬ。
     自分が見捨てたせいで。
    「こ、のっ」
     交差させたギラーガの腕で受け止めるが、無理な防御を取ったことで姿勢が崩れる。肉薄する敵ギラーガのスピアが突き下ろされる。だがその切っ先がギラーガを貫くことはない。
     とっくに辿り着いていた、割り込んできたAGE2のビームサーベルが疾る。

    「お友達に比べて腕が鈍ったなあ、へぼ弟」
    「誰がへぼだこの馬鹿兄が! 何をやっているんだ、本当に! 少しくらい周りの迷惑も考えられないのか!」
    「なんだ、聞こえてんじゃねえか」
    「……え?」


    ***
    (攻防戦後/デシルとヒンメル)

    「やっと見つけたぞ、このクソガキが。こんなところに落ちてやがったか」
     ヒンメルがびくりと身体を強張らせる。得体の知れない存在への怯えだ。
    「俺をイゼルカント様のところへ連れていけ」
    「バ、バカ言うな! なんで、おまえみたいな……」
    「決めるのはてめえじゃねえんだよ。――俺の名前はデシル・ガレットだ。イゼルカント様の壊れたオモチャを、俺なら動かせる。そう伝えろ」


    ***
    (セカンドムーン/キオ救出作戦の裏の裏)

    「何だ、ゼハートの野郎いねぇのかよ」
     ふらりと現れた赤毛の若い男に、レイルはぎょっと身を強張らせる。
     セカンドムーンは敵地ではないが、ゼハートの味方でもない。その中でこのホームは講話派の前線基地でもある。敵と味方をわかっているフラムが驚きながらも警戒をしていないのでこの男は敵ではないはずだが、しかし頼みの彼女がどうしようもなく唖然としているので、仕方なくレイルは赤毛の男に誰何の声を投げた。
    「どちら様ですか?」
    「あー。面倒臭ぇな。おい、てめぇはわかってんだろ」
     心の底から面倒臭いと思っているに違いない顔で、男がフラムに目をやる。つられてレイルも目を向けると、フラムはどっと疲れたようなため息をついて。
    「レイル。この方はデシル様だ。ゼハート様のお兄様の」
     とんでもないことを言い出した。
    「え? ……えええ!? だ、だってデシル様って包帯ぐるぐるで、ゼハート様より若いようにしか見えないのに!」
     どう見ても二十歳そこそこの青年だ。ゼハートもアセムも実年齢より若く見える方だが、その二人より年上の彼がこれはない。
     だが当の本人はレイルの驚きなどお構いなしに、周りをきょろきょろと見回した。
    「なあおい、何か食える物ねぇのかよ。せっかく体を取り戻しても、セカンドムーンの飯は不味くて食えたもんじゃねえ」
    「あー。すぐに食べられるものだったら果物とかどうです」
     答えてレイルは、厨房のテーブルに転がしてあった真っ赤なリンゴを一つ取った。
    「こいつは料理用じゃないのでそのままでも美味しいですよ」
    「知恵の実の嫌みか?」
    「いえ、手に入りやすくて長持ちさせやすくて、使い道もいろいろあるので」
     果物ナイフで食べやすいサイズに適当に切り分けられたリンゴをつまんだデシルは、それをひょいと口に放り込み、しゃくしゃくと咀嚼し、これまたわかりやすく満足げな顔で一つ肯いた。
    「あー、やっぱ食い物は地球だな」
     初めて見る、死体寸前ではないデシルを見つめながら。
     嫌みって何だ。考えて、レイルはすぐに気づいた。
     地球生まれのアップル呼ばわりのことか。


    「兄さん…!?」
    「よぉ。食い物は地球に限るな。二十年ぶりの食事が不味いもんだらけでうんざりしていたところだ」
    「どうしてここに、それにその姿は」
     二十年以上前のノートラム戦役の頃、アセムに墜とされ癒えない傷を負う前の姿と寸分違わない、年齢さえもあの頃とまったく変わらない姿で、デシルが立っていた。
    「そんなに驚くことかよ、てめぇのお友達と似たようなもんだ」
    「まさか」

    「んなことより、どこほっつき歩いてやがった? 悪巧みなら噛ませろよ。でなきゃ、わざわざ身体を取り戻した意味がないからな」

    「兄さん。その身体は、本当に、私の友人と同じなのか」
    「その力を貸してほしい」
    「言ったな。兄より優れた弟なんざいねぇんだよ、大舞台の中心に立つのはこの俺だ」



    「今の俺は、セカンドムーンの影の支配者」

    「昔イゼルカント様が手に入れたEXA-DBのサブユニットは、今はセカンドムーンのメインシステムに接続されている。コロニーの心臓とあんなもんを繋ぐとか正気の沙汰じゃねえが、他にあれを解析できる量子コンピュータがなかったんだとさ。

    問題はEXA-DBのおまけの化け物だ。
    動かなくなったあの化け物を叩き起こすために、イゼルカント様は生贄を用意した。
    ――あれのことは、おまえの方がよく知ってるだろ。
    化け物のシステムに調整を施した人間の精神を突っ込めば、あの化け物を操れる。

    その実験体に造られた特別製が、あのガキどもだったってわけだ。
    ま、エルデが連れ戻されるより先に、この俺が中に入っちまったけどな。

    てめえはエルデをさっさと連れ出しておけよ。利用価値のなくなった道具は捨てられる。ろくでもない実験に使われたあげく、廃棄されちまうぜ」


    ***
    (昔話。デシルとアセムとロマリー)

    「あなたが、デシル・ガレット?」
    「その。ゼハート・ガレットという男を知らないか?」
    「知ってるも何も、弟だ」


    「──今、あいつが何処でどうしているか、知らないか?」
    「てめえに撃墜された俺が、あの戦いの後を知ってるわけねえだろうが」
    「そ、そうなのか?」

    「まさか忘れたわけねえよなぁ? 俺が乗っていたのはクロノス、黒い砲撃型だ──俺からおまえのガンダムを庇って、白い奴がどてっ腹に風穴開けて死んだよなぁ」

    「……あんた、よく生きてたな」
     呆れたような感嘆のため息を、殺した当人がこぼすのもずいぶん間の抜けた話のような気がした。

     あの時、この男の憎悪の矛先はXラウンダーの予知よりも速くクロノスを貫いていた。デシルは未来を見失っていた。未来は不確定だ。先読みしたデシルが選んだ行動を見てからこの男は自分の行動を選び直すことで、未来を上回ったのだ。
     尋常ではない反応速度だが、小細工ではないし、だからこそこの男はXラウンダーではないのにXラウンダーよりも強い。最後に最善を選んだ者が勝つのは当然だ。

    「死んでたさ。まあ、そういうわけだ。無駄足だったな」
     あれはたぶん生きている。何となくわかっていたが、それを教えてやる気はなかった。
     何か言いたげにセシリオがデシルを一瞥したが、何も言わなかった。


    「そう言われてもな。今さらウルフ隊長を殺したと言われても、あんまり実感がない。顔も名前も知らない初対面なんだぞ。……Xラウンダーってのは面倒くさいな」

    「あんたが本当にウルフ隊長の仇だとして、それに何の意味がある。戦場でお互いMSに乗っているときならともかく、こんな枯れ木みたいに痩せ細った今のあんたに復讐しろとでも言うのか?」

    「んなのはイケてないって、あの人なら笑うだろうな」

    「それに俺は、あの頃の莫迦なガキだった自分が一番憎いよ」

    「あー、あの莫迦だった弟が、おまえのせいで輪を掛けて大莫迦野郎になった理由が何となくわかってきた」
     アセムはいっそう意味がわからないと言ったように首をかしげたが、その隣の女には通じたらしく、くすくすと笑いを忍ばせている。
     あれは綺麗なものが好きだった。
     けれど決して欲しいとはねだらなかった。
     じっと見つめて、心に刻みつけるように見つめて、ただそれだけで満足したつもりになっているような莫迦だった。


    ***
    (昔話。デシルとセシリオ)

    『最初に意識がはっきりしたのは二十年前だ。
    ノートラムの軍病院だった。身動き一つ取れず、声を出すことも出来ない。
    周りの機械と繋がってる管一本引っこ抜くだけで俺は死ねただろう。
    だがそんなことすら自力では出来なかった。
    息があるだけの肉塊だ。死んでるのと同じだ。
    俺は死ぬまでずっと、憎たらしい地球種に生かしてもらわなきゃ生きられねえんだよ。

    地球種にとっちゃ、死体同然でもこの俺が初めての捕虜だったらしいからな。情報を引き出したくて無理やり生かしたのに、最初の数年は植物状態、ようやく意識が回復しても声が出ねえ物も食えねえ。
    あの頃は右腕も骨と皮だけで、ろくに動かなかったしなあ。
    うわごとみてえに殺してくれって繰り返したところで誰にも聞こえちゃいねえ。

    偶然セシリオが俺の声を聞きつけてフロアに迷い込んできたとき、俺が最初に言ったのは、俺を生かしているその管を引っこ抜いてくれってことだった。


    「その頃はセシリオさんも目が見えていたんですか?」
    「いいえ、まったく見えてませんでした」
    「じゃあ」
    『そうなんだよ、目が見えねえとかぬかしやがるから俺が見せてやった。そしたらこいつ、感激しやがって……』
    「デシルさんと一緒だと、見えるんです。何故か」

    「視界をそっくりそのまま共有してるわけではないですよ。私の視界はちゃんと私の位置から見える角度になっていますから。なので普段はまったく不自由を感じません。おかげでデシルさんがいなくなると、私は一歩踏み出すことも出来ませんが」


    ***
    (セカンドムーン。擬似的に身体を取り戻したデシルと視力が回復したセシリオ)

    「私はもう、デシルさんには必要ありませんか?」
     宇宙船の事故で家族を失って記憶を失って、視力までも失って、ただ一人生き残った子供。
    「いいや? まだとっておきの頼み事が残ってるぜ」
     そのためにセシリオの目を治したのだから。
     デシルがいなくなっても、セシリオは歩いて行ける。


    ***
    (最終決戦/レウナより)

    「セカンドムーンのEXA-DBはゼハートの兄貴がコントローラーになってたんじゃなかったのか!?
    「そうです、ですけど……! シドがEXA-DBを汚染してるんです、シドのマスターがEXA-DBではなく別の何かに書き換えられていて、乗っ取られてるんですー!」
     EXA-DBは本体がマスターシステム、その守護者であるシドはスレイヴシステムとして設計されている。シドの自己進化のための技術さえも、EXA-DBの検証プログラムを経た是認がなければ引き出されることはないのだ。
     シドがEXA-DBを支配しようとすることなど、本来はありえない。
     セカンドムーン内部をスキャン。──ヒット。セカンドムーンを維持管理している巨大なホストコンピュータ。それに取り憑いている、黒い影。

     だれ?

    「ひっ」
     振り返った蟲が、ぎょろりとこちらを見返す。
     ぞっとするような悪寒がレウナの精神を揺るがした。まるで闇の奥底を覗き込んだような、虚ろな眼がレウナを見つめ返している。
     血の凍るような痛みと痺れがレウナの手足をじわじわと蝕む、喉に息が詰まる、助けて、声が出ない、助けて、震える手を伸ばす、助けて、消えてしまう、助けてウィービック!
    「レウナ」
     ぐっと腕を掴まれて力強く引き寄せられて優しく抱きしめられて、あたたかくて、ほうと息をついたレウナの目尻から涙がこぼれる。
    「ウィービック」
     愛しい男の名を呼ぶ。それだけでレウナはレウナでいられる。
    「大丈夫か?」
     精神を喰われかけたのだ。あの黒い蟲に。その中にいる、おぞましい狂気が生み落としてしまった何かに。
    「はい。セカンドムーンの中心にこの狂気の源がいます。それはセカンドムーンのホストコンピュータを支配して、シドを乗っ取って、EXA-DBのサブユニットを取り込んでしまったんです。そして今、セカンドムーンを地球に落とすつもりです」
    「ゼハートの兄貴は」
    「わかりません……見つけられませんでした」
     もう飲み込まれてしまったのか。

    「これより私たちのシドをα、セカンドムーンを飲み込んだシドをγと呼称します」


    ***
    (最終決戦/少女たちの戦い)

    「シドγはこちらのマザーフレームを取り込むつもりです。EXA-DBのすべてと、条約以前の技術を保持する工廠すべてを手に入れてしまったら、あれは自らを無尽蔵に増殖させ、すべてを食い尽くすでしょう。それにこの工廠を奪われてしまったら、エルデ、あなたの治療薬が間に合わなくなります」

    「薬って、これだけじゃ駄目なの?」
    「その薬は応急処置でしかないんです。二時間おきに投与が必要だし、それでももって一ヶ月」

    「だったら、私もシステムに入ります」
    「それは駄目です、エルデ。あなたはセカンドムーンに行ってください。セカンドムーンのメインシステムからシドを切り離すために、外側からの操作が必要なんです。向こうでデシルさんが待っています」


    「バカ言わないで! そんな体で何が出来るの?」
    「ウェンディ、けど」
    「私も付いていく。レイルさんはエルデを背負っていくだけで手いっぱいでしょう、あなたの薬は私が持っていく」
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