不眠症本歌と安眠剤写しのちょぎくにペタペタという足音が廊下から聞こえてくる。間もなく日付が変わる本丸の一室で、書物をしていた山姥切国広はその音を耳にすると、ハッと何かに気づいたように顔をあげた。
戻ってきたのだ、と理解するのと同時に急いで襖の前まで移動する。足音は段々と国広のいる部屋まで近づき、やがて、部屋の前でくるとピタリと止まった。
国広はさぁ来い!と言わんばかりに両手を広げて待機すると、ガラッと襖が勢いよく開かれ、銀色の何かがドサッと勢いよく腕の中に飛び込んできた。
「………………。」
「今日もお疲れ様だな、本科」
国広はそう言って、その銀色のもの__山姥切長義を労るように優しく声をかける。ついでに髪を梳くように撫でるが、その手の動きは慣れていないのかどこかぎこちない。
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