朝ごはんのはなし窓際の悟がくあ、とひとつ伸びをする。
ふわふわの毛が朝のひかりをきらりと跳ねた。
「悟はなにか食べたいものある?」
「んん、、なんでも」
あ、でもサラダは嫌
「だーめ、野菜もちゃんと食べな」
後ろからきた言葉は聞かなかったことにして台所に立った。
人参と玉ねぎをストッカーから出し、玉ねぎは薄皮を剥いで四等分、人参は頭を落としてざく切りし、そのままレンジに突っ込む。
(堅そうなら後から剥けばいいか)
ざっくりとした夏油の調理法は、はじめこそ悟に目を剥かれが実際の生活にはよく馴染んだ。
さすがに私だって泥付きのものは洗うし皮は剥くよ、ひとくち食べてみて、最近のレンジは優秀だから
そういってレンチンした温野菜を口に含ませれば、もともと合理性を重視する節のある五条は、微妙そうな顔をしながらもそれをもくもくと咀嚼し、ふむ。とこぼしたきり黙った。どうやら次第点はもらえたらしいことに安堵しつつ、そっと席を立ったのを覚えている。
レンジが温野菜をつくる合間に冷蔵庫から卵を二つ、チーズとバターは目分量。自分用のベーコンと悟の分のソーセージを取り出しコンロにフライパンをかける。
布団から出たはいいものの、そのまま椅子の上で動かなくなった悟には、きっと日の光が足りない。
チチチ、と手回しで点火するその流れがお気に召したらしい悟のおねだりで、この家のコンロはいまだにガス火だ。ボウ、と音を立てともる火を見ながらそっと、バター、卵を割り入れる。じゅわ、とはぜる油に蛋白質が白く固まっていくのを横目で見ながら、あとはポットのスイッチを押せばざっくりとした朝食のできあがり、というところでチリチリと呼び出し音が鳴った。