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    こまつ

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    こまつ

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    [概要]
    現パロ?パラレル? 21歳のRと、Pの出会い
    [備考]
    ・現代日本的な世界観
    ・診断メーカー(ID878367)より、『RPのBL本は
    【題】通り雨
    【帯】正反対なのに妙に惹かれ合う不思議な関係
    【書き出し】そういえば今日の星座占いは最下位だった。
    です』
    ・『このお題で書いたRP絶対オリジナルになってしまう説』検証第二弾
    [更新履歴]
    23.10.22 ☆まで

    #リゾプロ
    lipoprocessing

    deliveryそういえば今日の星座占いは最下位だった。そんなトピックの期限も残り一時間を切った。時刻だけを素早く確認して消灯したスマホを黒いパーカーのポケットに仕舞い、リゾットは闇に呑まれた公園のベンチの上から、十数メートル先のマンションの明るく切り取られた玄関口を引き続きじっと見つめる。

    ここ数年で急速に開発が進んだ駅前の一帯は、真新しい美容室やチェーンの飲食店の新店舗、モデルハウスのような住宅と、良く言えば比してレトロで味がある外観の理髪店や中華料理屋や民家などが混在していた。
    新しく整備された片側一車線の広い市道と、一方通行ですら難儀する狭く古い道が交差する角にぽつんとある猫の額ほどの公園は、明らかに後者のグループだった。曲がり角に立ち並ぶ二本の銀色のポールの合間から中に入れば、日当たりの悪い敷地中央には、過度に湿った重い砂をたたえた砂場と錆びた滑り台が一つ。出入り口の側に唯一立つ街灯は時計付きだが、文字盤の上の針は静止している。敷地際、離して置かれた二基の朽ちかけたベンチからの眺めといえば、手前から、件の砂場と滑り台、見過ごしそうな手洗い場、手入れのされていない植え込みとポールと街灯、その向こうに歩道、広い車道、広い歩道、そのまた向こうに三棟並びそびえる高層マンションの低層階、そこで行き止まる。
    マンションには、パステルカラーで彩色された遊具の揃ったプレイロットが敷地内にあり、入居者は選ぶまでもなくそちらを利用していた。空間ごと忘れ去られたようなその公園に滞在する者は、時間帯に関わらずほぼいなかった。ごくまれに足を踏み入れた散歩中の人や犬も、一望して、間違えた、といった体ですぐに引き換えしてきた。

    (来た)
    ガラス扉が開き、現れた人影が歩道から車道に向けて歩き出すのをリゾットは認めた。パンジーの植わった植樹帯を抜けた人影は、左右に軽く首を振り、車道を小走りで横断する。
    (――違う)
    道路照明を受けながらこちらへ一歩近寄るごとに、目的の人物ではないことが明白になった。落胆も、別の何をも感じないうちに、リゾットは茂る植え込み越しにマンションの玄関に目を戻した。日を跨ぐことはほぼない、来るならそろそろのはずだ。
    当て外れだった人影は車道を渡りきり、対岸に比べて幅の狭く明かりの少ない歩道を公園方面に歩き出した。植え込みの前を横切り、そのまま通過していくだろうと思われたその影は、しかし方向を九十度変え、ポールを抜けて中に入り込んできた。
    予想外の展開に、リゾットは体勢を変えることなく、マンションの出入り口から公園の出入り口へと焦点だけをそっと移した。
    勝手知ったるように、人影は暗がりの小さな手洗い場に迷いなく近寄った。豪快に捻られた蛇口から吐き出される水がコンクリートを激しく叩く。両手のひらをきつく擦り合わせるように洗い、その手ですくった水で口を何度かすすいで吐き出すのが、後ろ姿のシルエットからでも見て取れた。
    はあっ、と音をのせた息を吐いたあと、人影はその場に立ったままもぞもぞと身体を動かし、盛大な舌打ちを一つした。そして、顔を上げてぐるりと公園を見渡した拍子、リゾットの座る奥のベンチに顔を向けてうおっと今度は小さいがはっきり声を上げた。
    既に見当はついていたが、十中八九、男だった。
    出入り口に一つきり立った街灯の光は弱々しく、公園の対角線上の端にあるベンチまでは届かない。全身黒尽くめ、パーカーのフードまでを被り闇に紛れた先客の存在に、むしろよく気づいたものだと思う。驚きか、恐れか、気まずさか、その表情に浮かんでいるものは読み取れなかったが、いずれにせよ立ち去るだろうと思われた男はところが、
    「なぁ」
    と声を掛けてきた。
    「火、貰える?」
    あまつさえ男はずかずかといった風情で砂場を踏み越え角のベンチまで躊躇なく歩み寄り、反応をしないリゾットの前に立ち、指に挟んだ煙草を掲げて「火」と重ねて言った。「貰えねぇ? 悪いけど」
    リゾットは仕方なく口を開き、視線を合わせぬままひとこと言った。
    「失せろ」
    関わりたくない。大抵の人間はこれだけで尻尾を巻いて逃げた。
    男は言った。
    「了解了解、その前に火ィくれねーかな」
    怯んだ様子もなく、かえって苛立ちすらにおわせた。たった今煙草を吸っているわけでもないリゾットに、何故かやけに確信的に火を強請る男のこの調子では、持っていないと返せば絡んできそうな気配すらあった。
    男の不躾さは、ただ一刻も早く喫煙したいという焦りに根ざしているだけのようではあった。下手に手を出して騒ぎになっても困る。今、余計なことはしたくない。
    さっさとけりをつけようと、リゾットはポケットに手を入れた。無言でライターを差し出すと、矢も盾もたまらずといった勢いで、男は洗ったばかりの手ではなく、煙草を咥えた顔を差し出した。余分な遣り取りをする煩わしさを避け、リゾットが黙ってヤスリを回し炎を立ててやると、男はより一層近づき、煙草の先を明かりの中に突っ込んだ。明色のシャツ一枚のやけに薄着の上体から、風呂上がりのような香りが漂った。
    じりじりと焦げていく筒の先端から細く白い筋が立ち上るやいなや、男は短く吸い込んだはじめのひと息をすぐに顔を背けて吐き出した。その後、深く吸い込み直した煙を僅かでも逃すまいと口内に閉じ込め、あまさず肺に染み渡らせてから、伏せた顔をゆっくりと上げ、やっと満足気に
    「どーも」
    と軽く微笑んだ。
    立てたままの炎の向こうに見えたのは、二十一のリゾットと変わらなさそうな若い男だった。形の良い大きな目、真っ直ぐ通った高い鼻梁、傍若無人な振る舞いからは想像だにしていなかった、人形のように美しく整った顔立ちだった。輪郭を縁取る淡色の髪からはぐれた細い毛束の先がかかった右の口角が、僅かに切れてでもいるのかその一点だけ唇より濃く色付いていて、痛々しくも艶めかしかった。このところめっきり冷たくなった夜風が湿気を孕んで炎を揺らし、肌に落ちた長い睫毛の影が動いた。




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    [備考]
    ・現代日本的な世界観
    ・診断メーカー(ID878367)より、『RPのBL本は
    【題】通り雨
    【帯】正反対なのに妙に惹かれ合う不思議な関係
    【書き出し】そういえば今日の星座占いは最下位だった。
    です』
    ・『このお題で書いたRP絶対オリジナルになってしまう説』検証第二弾
    [更新履歴]
    23.10.22 ☆まで
    deliveryそういえば今日の星座占いは最下位だった。そんなトピックの期限も残り一時間を切った。時刻だけを素早く確認して消灯したスマホを黒いパーカーのポケットに仕舞い、リゾットは闇に呑まれた公園のベンチの上から、十数メートル先のマンションの明るく切り取られた玄関口を引き続きじっと見つめる。

    ここ数年で急速に開発が進んだ駅前の一帯は、真新しい美容室やチェーンの飲食店の新店舗、モデルハウスのような住宅と、良く言えば比してレトロで味がある外観の理髪店や中華料理屋や民家などが混在していた。
    新しく整備された片側一車線の広い市道と、一方通行ですら難儀する狭く古い道が交差する角にぽつんとある猫の額ほどの公園は、明らかに後者のグループだった。曲がり角に立ち並ぶ二本の銀色のポールの合間から中に入れば、日当たりの悪い敷地中央には、過度に湿った重い砂をたたえた砂場と錆びた滑り台が一つ。出入り口の側に唯一立つ街灯は時計付きだが、文字盤の上の針は静止している。敷地際、離して置かれた二基の朽ちかけたベンチからの眺めといえば、手前から、件の砂場と滑り台、見過ごしそうな手洗い場、手入れのされていない植え込みとポールと街灯、その向こうに歩道、広い車道、広い歩道、そのまた向こうに三棟並びそびえる高層マンションの低層階、そこで行き止まる。
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