行楽日和 薄れていく眠気を追いかけるように膝丸は床の中で手足を動かした。近頃はすっかり暖かくなって、温もり恋しさに二度寝をするようなことも減ってきた。床の中で過ごす幸福は変わらないが、頭は勝手に覚醒していく。夜のうちに靴下を脱いでしまったらしく、裸の左足が気になった。
靴下を探して身体を折ると、大きな塊を蹴飛ばした。重くて温かくて、中身が詰まっている。膝丸はぎょっとして布団を持ち上げた。
「いたい……」
寝ぼけた声をして、仕返しとばかりに膝丸の胴に腕を絡めてくるのは、兄だった。膝丸は昨晩のことを思い出して青くなった。
「髭切、起きて」
「なあに」
「き、昨日……」
「うん……」
緩慢な動作で布団から這い出した兄は、見事なあくびを一つした。膝丸に微笑み、片手で髪を撫でてくる。
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