いつか一緒になる日を待って こん、と音が鳴って壮五は窓の外を見つめると、黒影がベランダの外に映っている。
ドアの鍵がかかっていることを確認して窓の外に向かう。
ゆっくりと窓を開ければ空のような水色の彼が太陽みたいに笑った。
「環くん」
入って、と促すと環は辺りを見回して部屋に入るなり壮五のことを抱きしめた。
「そーちゃん」
会いたかった、と環の言葉が壮五の耳を擽る。
逢坂家と四葉家といえばこの辺り一帯を牛耳る一族なのだが、この二つの家はずっと昔から争いが絶えず、物心ついた時には互いの家の人間と関わらないように言い聞かされるのだ。
壮五も例に漏れず環のことをどうしようもない男だと言い聞かされていたが、いざ本人と言葉を交わすと、心優しい青年なのだとわかった。
壮五が環に惹かれるのはあっという間で同じように環も壮五に惹かれ、こうして人目を避けて会うようになった。
いつものようにキスをして、抱き合って、そうした後に壮五が環に抱きついた。
一緒にいたいね、といつも手を繋いでそれから呟く。
「ここから逃げ出したら君と一緒にいられるのかな」
ぽつりと呟くとハッとしたように環が息をのんだ。
「そしたら、俺がそーちゃんを攫ってくよ」
「君が?」
「うん。そんで、誰も知らないとこ、一緒に行こっか」
思わず手を伸ばしたら環は壮五の手を掴んでそれから逃げる? と聞いた。
「ううん。逃げるより自分の力でなんとかしたい」
「そう言うと思った」
壮五の言葉に特に不快な思いをした様子はなく、むしろ壮五のことを環は優しく見つめている。
「それでも、どうしようもなくなったら連れ出して」
部屋に来た時のように外の様子を窺いながら環が部屋を出ていく。
今度いつ会えるかはまだわからないせいか、今すぐにでも会いたくなるなんて。こんな人に出会うと思わなかった。
ぼんやりと見つめた窓の外はすっかり誰もいなかった。