花の名道端に咲く花が、きれいだと思った。ピンクとか白とか黄色とか紫とか、目線を下に向けなきゃ誰も気付かないような低い視点の世界で生きてる花たちを、きれいなものが好きなあいつはきっと好きなんだろうとふと頭を過ぎり、帰路を辿っていた足は自然と駅前の大通りの方に向かって動き出していた。
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裏口から入ってみると店内は照明が全て落ちていて、物音も人の気配もない。念の為確認したが荒らされたような形跡は無く、恐らく此処の主は夜の営業に向けて買い出しにでも出たのだろう。呼び付けてくれれば荷物持ちくらいはしたし、万が一の時には護衛にだってなれるって前にも言ったはずなんだけど。裏の世界を知らないやつはみんな日本という国を安全地帯だと思い込みすぎだ。素知らぬ顔してナイフや銃を持ち歩いている奴だって居るのに。例えば、おれとか。
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