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    げ謎に狂ってる期間限定

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    ぬいのいかがわしい挙動を見てしまうggst鬼水。落書き。

    「はあ……」
     布団にもぐる鬼太郎の肺の奥底から落胆の溜息が溢れ出てしまったのは、すこぶる散々な目にあわされたせいだった。今日という今日はとんでもなく災難な日だった。
     妖怪がらみの相談を解決するはずだったのだが、どうしてあんなことになってしまったのか。考えても答えは導き出せない。そもそも、あれは偶発的な事故、と言っても過言ではないだろう。
    (……ああ、あんなもの、おじさんに見られるなんて)
     忘れようと考えれば考えるほどに、鮮明に記憶が舞い戻ってきて脳裏に描かれてしまう。羞恥心と絶望感に囚われながら鬼太郎は布団の中で蹲るように頭を抱えた。
     ことの発端は数日前に遡る。乳飲み子の両親からの相談が妖怪ポストに寄せられたのだ。自宅にいる一対のぬいぐるみが夜な夜な動き回り、赤ん坊の周りをうろつくのだという。
     世の中には【付喪神】という、物を大切にした時に宿る神というものがいる。今回の相談もその類かと思われたが、どうやらそのぬいぐるみを相談者が購入してからまだ一年にも満たないらしい。挙句、誰かのお古というわけでもなく、新品を購入したのだから付喪神が宿ったというには得心がいかないものだった。
     実際にその二体のぬいぐるみとやらを見てみれば、兎ぐらいの大きさをした円柱状の何の変哲もないものだった。男女の人間をデフォルメ化したようなぬいぐるみだろうか。気になる点があるとするならば一方のぬいぐるみの見た目は、蒼褪めている母親の姿に似ていることか。母親はぬいぐるみに悍ましそうな視線を向けていた。
     一時的にぬいぐるみを預かって調べてみれば、そこには妖精に類するものがどうやら入り込んでいることが判明した。名も無きその妖精は、どうやらぬいぐるみなどに憑りついて、自分に触れた存在を模すらしい。その上、模した存在の願望を叶えようと行動するという。
     つまり、ぬいぐるみが夜な夜な赤子の周りを徘徊していたというのは、触れた両親の『赤ん坊が無事でいてほしい』という願いを反映したに過ぎない。
     その妖精には人間に対する害意はなく、少しすれば別のところに行く性質があるらしく、放っておいても問題はなさそうだった。だからこそ、今日は結果を報告がてら、ぬいぐるみを相談者に返却しに来たのだが、どうにも母親は気味悪がって受け取ろうとしない。妖精に害はないのだと幾ら説いても、納得しようとせずに、ゴミとして破棄しようとしたくらいだ。それではあまりにもその妖精が哀れだと、同情した鬼太郎がそのぬいぐるみを引き取ってきたのだが、それが良くなかった。
     帰宅後、鬼太郎が居間のちゃぶ台の上にぬいぐるみを置くと、二体の人形は姿を変えた。円柱状の体躯に動物のような短い手足が生えた姿は人間をそのまま縮小したものではなかったが、模した存在の特徴を明確に捉えている。二体のうち一体は鬼太郎に似た容姿に変貌した。そこまでは良かった。問題は、残るもう一体の方だ。そちらが黒髪の目元に傷のある壮齢の男に似た姿になったものだから、鬼太郎は困ったように端正な顔を顰めた。
     この妖精はどうやら番の存在らしい。だからこそ、前の持ち主では夫婦の姿に擬態したし、今度は鬼太郎と黒髪の男に姿を変えたのだろう。
     妖精が模した黒髪の男は、水木という。彼は、鬼太郎の養父であり、つい最近鬼太郎が根気強く口説いた結果、粘り勝ちで陥落させた相手でもある。墓場で赤ん坊である鬼太郎を拾い上げ、その上育てた彼は気立ても良く、他者から好かれる存在だ。夏の太陽のように溌剌とした態度、明朗な笑顔を好まないという存在がいるのであれば見てみたい。実際、彼は人間からは勿論、妖怪からも好かれていた。
     他者から一様に愛される彼が、他の誰かの物になるのがとても怖かった。他者が見惚れてしまうような笑みを、自分以外に向けてほしくなどなかった。
     無論、彼は自分を愛してくれている。深く深く、丁寧に愛してくれている。しかし、彼の与えてくれる特別な愛情は、所詮親子の情に過ぎない。
     親子であれば、いつか離れてしまうことがわかっている。それが耐え難いからこそ、一度水木の元を離れたにも関わらず、彼の元へと戻ってきたのだ。唐突に水木に向ける恋情を理解した鬼太郎は、水木の傍を離れたくないと、自分の欲望に従ったのだ。
     十数年ぶりに戻ってきた鬼太郎を彼は気前よく受け入れてくれた。迷惑がる様子などまるでなく、気さくな態度はまるで長い時離れていたことを感じさせないほどだ。幸いにもどうやら水木に一生を添い遂げる比翼連理の相手はまだいないらしい。それどころか、誰かと一緒になることを考えたことなどなかったと、人懐っこい笑みを浮かべながら言ったのだ。
     水木に対する好意を自覚した鬼太郎にとって、またとない絶好の機会だった。きっと、このままもだもだしていれば、このお人好しの人間は誰かに流されてしまう。そんな事態になれば、悔やんでも悔やみきれない。
     それからというもの、鬼太郎の行動は早かった。水木の家に戻った翌日の夜、会社帰りの水木の前に正座をして告白したのだ。人が良いわりに、水木は人からの好意というものに酷く疎い。曖昧な態度で想いを伝えたところで、喜んではもらえるものの、恋情だと気付くことがないのは火を見るよりも明らかだった。だからこそ、誰が聞いてもわかる言葉で、『僕はあなたが好きです。貴方と一生を添い遂げたいんです』と、真剣に告げたのだ。 
     切々糖訴える鬼太郎の言葉を聞いた当初、水木は理解などまるでできていない様子だった。やはり鈍いこの男は鬼太郎が恋慕を抱いていたなど、微塵も気付いていなかっただろう。凍り付いたように固まった水木の姿に、不安がなかったわけではない。想いを伝えてしまったことで、今まで通りの太陽に似た笑顔が向けられなくなることは怖かった。それでも、告げてしまった以上は逃げるわけにはいかない。せめて水木の一挙一動を見逃さないように視線を外さずに、ただ見つめ続けていたそんな時のことだった。
     まるで、火山が噴火するかのように、水木の頬が一気に真っ赤に染まり上がったのだ。上気した頬は隠しようがないほどに熟れている。硬直が解けた水木は狼狽した様子で左右に手を振りながら視線を彷徨わせていた。明らかに焦った様子で落ち着きのない様子を見せるその態度はまるで生娘のように初心な反応に思えた。
     その態度を目の当たりにした瞬間、嫌われてはいないのだと本能的に理解する。そして、同時にこのまま押し切ればどうにかなるのではないかという希望が鬼太郎の中に産まれた。この状況を利用しない手はない。
     それから、想いを伝え続けた結果、やっとのことで実ったのがつい最近の話になる。
     しかし、恋人という新たな関係に昇格したからと言って、大きく何かが変化したわけではない。何せ、想いを受け止めてもらった際、水木からブレーキを踏まれている。
    『まだ混乱していて、お前のことを息子として見ている方が大きいんだ。それでも、お前を受け入れたいと思ったよ。だから、関係はゆっくり進めていこう?』
     聖母のように慈悲深くはにかむ水木の言葉に、どうして嫌ということが出来よう。実際、その時はそれでも良いと思えた。水木が他の誰かのものにならないのだから、恋人らしいことが出来ずとも良い、と。
     しかし、一つ願いが叶ってしまうと、次の望みを抱いてしまうのは生き物の性なのだろうか。恋人になったのだから、恋人らしい行為をしたいと願うようになってしまったのだ。手をつなぎたい、キスをしたい、抱きしめたい、そして、最終的には彼の知らないところに触れてみたい、と。醜い欲望は沸々と己の中で際限なく湧き上がってくる。
     それでも、衝動的に行動に移さなかったのは、水木の想いを汲んでいるからだ。きっと水木は大抵のことは受け入れてくれるだろうが、ゆっくりと進みたいと願った彼の気持ちを蔑ろにすることは避けたい。
     そんな風に悶々とした想いを抱えながら、欲望を表現するぬいぐるみに触れてしまったのだから、結果は明瞭だった。
     鬼太郎の形を模したぬいぐるみは、水木に似た方へと擦り寄っていく。水木の形をした方も鬼太郎に似たぬいぐるみに近付かれることに満更ではないのか、自ら顔を押し寄せている。まるで動物のグルーミングのようにちゃぶ台の上で身体を寄せ合う姿を眺めながら鬼太郎は腰を下ろした。その後、ちゃぶ台の上に突っ伏すように頬を押し当てる。
     二体のぬいぐるみは一通り顔と思しきところを触れ合わせた後、体勢を変えた。水木のぬいぐるみに圧し掛かるように、鬼太郎のぬいぐるみが覆い被さる。その後、鬼太郎のぬいぐるみはせっせと身体を前後に振り始めた。その姿はまるで四足歩行動物の交尾のようだ。
     きっと他のぬいぐるみの挙動であれば、その光景に鬼太郎自身げんなりとしていたに違いない。しかし、目の前にいるぬいぐるみは自分と恋人の水木を模したものになる。自分たちに似た存在が、願望を体現しているのだ。羨ましいと思わないわけがない。
    『……僕も、おじさんと、』
     ちゃぶ台を軋ませるように交尾を続ける一対のぬいぐるみを鬼太郎はぼんやりと眺め続けた。その時ばかりは羨望に意識が持っていかれ、緊張が解けていた。そう、それがいけなかったのだ。
    『鬼太郎、帰って来てたんだな! 今日の晩飯は豪勢にハンバーグでも作ろうと思ってだな、牛肉を、』
     普段であれば、水木の足音も気配もきっとわかっていただろう。正しく油断していた。その一言に尽きる。障子戸を勢いよく開きながら入ってきた彼の言葉が、途中で途絶える。
    『……あ』
    『あ……』
     振り返りざま、呆けた声が彼と重なった瞬間、鬼太郎は何もかもが終わったと、絶望した。唖然としたように口を開いた水木は鬼太郎を一瞥した後、ちゃぶ台の上へと視線を向けた。そこでは、未だぬいぐるみが重なり合って交尾のようなまねごとをしたままだ。
     空気が凍るとは、こういうことを言うのだろうか。
     その後と言ったら、居心地が悪い地獄の時間以外の何物でもなかった。ぬいぐるみには妖精が憑りついていることを説明した。流石に自分の欲望を露わにするものだとまでは言えなかったが、水木は納得した様子だった。とはいえ、水木の態度はぎこちないままだった。場を和ませようと気丈に振る舞ってくれていたものの、こういう時の彼の態度は空回りする。やけに強張った声を張り上げながら誤魔化されると、いっそ惨めで哀れだった。
     ぬいぐるみに憑りついた妖精たちは満足したのか、水木と鬼太郎が互いに湯浴みを終える頃にはいなくなっていた。振り回された想いがあるが、いなくなってしまった対象に怒りをぶつけるわけにもいかない。
     結局、水木とは一日中気まずいままだった。少しばかり救われたとすれば、先に水木が床についてくれたことか。それでも、明朝、また今日のままの関係性が続いてしまうかと思うと些か気が重い。
     嫌われたとは思わないが、だが確実に水木に気を遣わせているのは確かだった。これでは、ゆっくりと関係を進めることさえ難しくなってしまうのではないかと、不安が頭を過る。
     ぐるぐると嫌な方へと考え出すと、負の連鎖は止まらない。思考はギンギンに冴えてしまって、一向に眠気がやってこなかった。
    (墓場にでもいって頭を冷やしてこよう……)
     こっそりと布団から顔を出してみれば、隣の布団で横になる水木の背中が見えた。眠っているのだろうか。その身体は動き出すことはない。今はそれがとてもありがたい。
     明日、普段通りに振る舞うためにも、冷静さを取り戻す必要がある。そんなことを考えながら鬼太郎がひっそりと布団から抜け出した、そんな時のことだった。
    「……鬼太郎」
    「……? ……はい」
     音を立てたつもりはなかったが、身じろいだことを気取られてしまったのか。鬼太郎が立ち上がろうとしたところで、水木から声がかかった。呼びかけてきたその声は普段よりも少しだけ低い声に聞こえたような気がしたからこそ、鬼太郎は立ち尽くしたまま動けない。
     鬼太郎が固まったままでいることをいいことに、水木がゆっくりと上体を起こす。寝転んでいたせいで僅かに乱れた着衣のずれを直しながら、水木は布団の上に正座する。その後、対面する位置を示すようにぽんと軽く布団の上を叩いた。
    「少しだけ、ここに座りなさい」
    「……はい」
     穏やかな口ぶりではあったが、言葉は些か有無を言わせない圧を持っていた。逆らう気持ちになどはなれず、言われるがまま、鬼太郎は水木の前に腰を下ろす。
     呼び寄せた割に、何故か水木は鬼太郎を直視しようとはしなかった。その上、口を開こうとしないものだから鬼太郎は訝し気に彼を見つめる。
    「おじさん……?」
    「……なあ、鬼太郎。お前は、俺のことが好きだと言ってくれていたな?」
    「……ええ、はい」
    「それは、その、……そういうことがしたいって、意味ってことで良いのか?」
     いよいよ口に出された内容を聞いても、いまいち鬼太郎は彼が何を言わんとせんのか、ぴんと来なかった。たどたどしい口調で濁された言葉はあまりに漠然としており、一体何を指し示しているのか鬼太郎には理解出来ない。むっと口角を下げて、鬼太郎は淡々と答える。
    「おじさんの言っている意味が分かりかねます。そういうこととは、一体どういうことですか?」
    「そういうことっていうのはな、つまり、だな、その……」
    「はっきり言ってくれないと、わかりません」
    「あー、つまりだ! 今日、ぬいぐるみたちがやっていたようなことがしたいのかって聞いたんだ!」
     普段以上の声量が突然ぶつけられて、鬼太郎はびくんと肩を跳ね上げた。しかし、その声の大きさはたかだか一瞬の驚きで、すかさず別のことに思考が引っ張られてそれどころではなくなってしまう。
     ばくばくと早鐘を打ち始める心臓の音が、煩い。自然と呼吸も荒くなってしまいそうになるのをどうにか理性で押さえ付けて、鬼太郎は射抜くように水木を見据えた。目など逸らせるわけがない。
    「おじさん」
    「……ああ」
    「今、ぬいぐるみがしていたことがしたいか、って聞きましたね? 聞き間違いじゃないですよね?」
     問い掛ける口調にも焦りが生じて、吐き出す言葉が機関銃のようになってしまう。前のめりになりながら問い掛ける鬼太郎に対し、水木は深く頷いて見せた。
    「……ああ、言ったよ。間違いじゃない」
    「そんな当たり前のことっ。ぬいぐるみみたいなこと、したいに決まってるじゃないですかっ。僕はおじさんが好きだから、おじさんに触れたいし、他の人が知らないおじさんを見たいんですっ。でも、おじさんを困らせたいわけじゃないから、僕は、……っ!?」
     想いの丈をぶちまけていた最中、突如として鬼太郎の喉から声が出なくなったのは、あまりにも驚いてしまったせいだ。
     驚愕するのも仕方ない。何しろ、対面していた水木が腕を伸ばして抱き締めてきたのだから。
     すぐ傍で、清潔感のある石鹸の透き通った匂いがした。同じ石鹸を使っているはずなのに、どうして彼の肌からする香りにこんなにも心臓が煩く戦慄いてしまうのだろう。
     程よい力を込めた腕で抱き竦められ、鬼太郎は身動き一つとれなかった。彼のように両腕を背中に伸ばして抱き締めることが出来なかったのは、思考の許容限界を越えてしまったせいだ。がちがちに強張った身体は自らの意思に反するように微動だに出来ない。
    「お、じさん……」
    「……お前は本当に、良い子に育ったなぁ、鬼太郎」
     ぽんと背中を優しい力で叩いてくる水木の言葉が鼓膜を揺らした瞬間、冷や水を浴びせられたような気がした。その言葉に、浮かれていた心が殴られたような心地を味わった。心の中に薄暗い靄に似たものが立ち込めて、ずんと圧し掛かってくる。
    「……それは、僕は未だあなたにとってはこどもで、恋人なんかには見えないってことですか、おじさん……」
    「ん? あ、ああ! 違う、それは違うぞっ!」
     恨みがましくも聞こえる拗ねた呟きを零した鬼太郎に対し、水木は弾かれたようにぶんぶんと左右にかぶりを振った。その後、鬼太郎の顔を覗き込んだ彼は、目尻に皺を寄せて花が綻ぶような温かい笑みを浮かべながら口を開く。
    「俺のことを考えてくれる、良い子に育ったんだなと思ったら、何だか感慨深くて、それに嬉しくてさ」
    「……」
    「だけどな」
     口も開かずに水木の言葉に耳を傾けていた最中、身体を引き剥がされる。突然のことにひゅっと息を呑み、目を丸めた鬼太郎の目に映ったのはどこか気恥ずかしそうに口元を緩める水木の姿だった。その頬には僅かに朱が滲んでいる。
    「俺だって、お前のことを考えているんだぞ、鬼太郎」
    「おじさん……?」
    「お前さえしたいなら、しようか。そういうことを」
    「……っ!!」
     一瞬、何を言われているのかわからなくなる程、その突然の申し出は衝撃的だった。目玉が飛び出そうなほどに右目を見開いて水木を凝視する鬼太郎の口からは当惑の声がぽろぽろと零れ落ちる
    「え、なっ……え、……?」
    「はは、さっきまでの勢いはどうしたんだ?」
    「だって、ゆっくり、進もうって、おじさんがっ、」
    「ん、そうだな。でも、お前に我慢をさせたいわけじゃないんだ。ああ、それとも本当はしたくないか? そうなら、」
    「そんなの、したいに決まっているでしょうっ」
     見当違いなことを口走った水木の身体を抱き締めながら布団に押し倒す。転がるように掛布団の上に二人して横向きに倒れ込めば、触れ合った胸元から水木の拍動が聞こえてくる。忙しなく肌を打つその音に思わず鬼太郎は生唾を飲んだ。
    「……おじさんの、心臓が煩いです」
    「そうだなぁ、そりゃあ緊張しているから仕方ないだろ。鬼太郎は、緊張していないのか?」
    「……僕だって、緊張してますよ」
     平静を取り繕うようにつんと吐き出した声に、水木はふふっと声を潜めて朗笑した。その吐息が肌に触れて擽ったかったが、身を捩れば離れてしまいそうでぐっと衝動を我慢する。
     焦点が合わなくなりそうな程の距離で暫く水木の瞳の奥を覗き込んでいると、不意に彼の瞼が下ろされた。眼前に晒される無防備な姿に、一際心臓が跳ねる。
     鬼太郎は擦り寄るようにおずおずと顔を彼の方へと近付ける。僅かに頬を触れ合わせた後、そっと顔の位置をずらした。
     そして、まるでぬいぐるみたちの挙動と同じだな、とそんなことを考えながら鬼太郎はそっと水木に唇を重ねたのだった。

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