壁から海老フライが生えているんだが この人はついに呪われたのだ。
依頼人である霞ヶ丘煌平の話を聞いて狐はそう思った。
2メートルはある巨体を丸めて話す様子は小人の国を訪れたガリバーのように見える。確か年齢は自分と同じ35歳のはずだ。大の大人から相談されるには、今聞いた話はあまりにも馬鹿げている。
「煌平さん、酔ってませんか?」
公園のベンチに並んで座っていた狐は、コーヒーの缶で煌平を指した。
そもそも煌平との出会いは行きずりのバーだった。そこで狐は早々に酔い潰れ、散々に嘔吐しながら煌平に絡んでいた記憶がある。後で店と煌平に弁償と謝罪をしようと店のある場所を探したが、誰に聞いても「そんな店は知らない」との事だった。
あの夜の馬鹿騒ぎが夢の中の出来事だったのだろうかと自分を疑ったが、煌平の名刺だけはしっかりと財布に残っていた。名刺を頼りにその住所を訪れると霞ヶ丘煌平はしっかりと存在し、古美術商を営んでいた。
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