正月小説1月4日、世間のサラリーマンやOLが正月休みを終え、仕事を始めた日に私はようやく仕事を終え正月休みを始めることができた。非常に残念なことにニューイヤーパーティーで薬物が使われることがあるようで、今年の年越しは盛り上がるパーティーに冷や水をかけているうちに終わってしまった。それから犯人の聴取やら報告書の作成やらで初日の出を庁舎の窓から眺め、いまだ初夢が見えるほどには睡眠がとれていない。それでもなんとか明日の午前休をもらい決して早いとは言えない時間に帰宅した。事件が起こったのは風呂に入る気力も食事をとる気力もないままにこれまた夢を見ることもなく熟睡した次の日の朝のことだった。
「う、うさ耳が生えてる…」
貴重な午前休を10時まで寝て過ごしたところでなんとか目を覚まし、顔を洗いに洗面所へ向かったところでそれは見つかった。そう、立派なうさ耳である。26の女が部屋着にうさ耳をつけているというだけで十二分に異常な光景であるが、恐ろしいことにこれはなんとカチューシャなどではないらしい。その証拠に引っ張れば同時に頭皮が引っ張られるし触られている感触もある。これはいったいどうしたことだろう。
「ひっ…」
まずい。もうひとつ異変に気がついてしまった。うさぎのしっぽが生えている。あの丸いやつだ。
こういうのってどこに相談すればよいのだろう。由井さん?朝起きたらうさぎの耳としっぽが生えてたんですけどって?相次ぐ徹夜でおかしくなったと思われるかもしれない。かといって他に頼れる相手もいない。幸か不幸か同棲している恋人は家にはいないらしい。耀さんならなんとかしてくれるだろうか、冷静に考えるとそんなはずはないのだがその一方でなんだか彼にできないことはないような気もする。完全にパニックになり思考がおかしな方へとんでいたところで噂をすればなんとやら、驚くほどのタイミングの良さで耀さんは帰ってきた。
「耀さん!これどうしたらいいですか?!」
おかえりなさい、やお疲れ様です、なんて言葉より先にパニックがそのまま口に出る。「は?」なんて言いながら怪訝な目をこちらに向けた耀さんがそのままの形で固まる。
「…うさぎ年だからってうさぎのコスプレ?」
「違います!朝起きてたら生えてたんです!」