できあいの運命論と三時のおやつ 初めて一緒に食べたおやつは秋の野苺だった
崖を降りれば途端に血の匂いが遠ざかる。
草木をかき分け、踏み入った。人間たちの戦場の目を掻い潜ったオレたちの戦場から、さらに一歩自然に足を踏み入れる。人の手の入らない森はひんやりと涼しく、木漏れ日が美しい。落葉と紅葉の混じる十一月、晩秋というにはまだ鮮やかな気配がある。
ふと嗅覚が甘い匂いを捉えた。ちょうど目当ての方角だ。
ガサガサと葉を鳴らして落葉樹の木立を抜けると、緑と光の中にとても自然のものとは思えぬ銀色が見える。
「何やってんだよ」
大の字に転がった山姥切長義。先の戦闘中に崖から滑り落ちていく敵を、喜び勇んで追ってった男。
受け身は上手に取ったのだろう。衣装の乱れはなければ目立った怪我もない。真珠色の外套が艶やかな緑の上に広がって、裏地のはっとするほどの青を覗かせる。同じ色の眼は閉じられていた。深い皺が寄っているのは眉間だけだ。
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