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    村人A

    @villager_fenval

    只今、ディスガイア4の執事閣下にどハマり中。
    小説やら色々流します。

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    村人A

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    書き殴ったXENOフェンヴァル。
    というより、フェン→ヴァルみたいな感じ。
    衝動のままに書き殴ったので、おかしい所あったらすみません。

    変わる想い、変わらない想い月明かりに照らされる窓辺、部屋の中で影が動いた。
    袖を通した衣擦れは、何も音がない場所では響く。

    「…今日はまた、随分と余裕が無かったようにございますね?」
    「……」
    「フフ。理由は分かっていますがね」

    新たに出来た傷跡を軽く手当てし、ボタンをひとつずつ閉めていく。
    少しでも表情が隠れるように、といつからか着けているチェーンの付いた眼鏡は、内ポケットにしまう。

    ──主は、変わった。

    暴君から儚君となり、誇りは野望へ。
    全ての引き金は、あの女だった。
    見ている限り、どちらにせよ、変わるのはあの女がきっかけだったように思う。

    「閣下?どうされたので?」
    「……か」
    「はい?」
    「…お前は、あの言い分が正しいと思うか。アルティナをああしたのは…間違いだったのか。俺が全て…間違っていたのか」

    伸びた髪が、表情を隠す。
    膝の上で握りしめられた拳から、感情は読み取れる。
    フェンリッヒは、その手にそっと手を重ねる。

    「…ご無礼をお許しください。……わたくしは、閣下の執事…シモベでございます。わたくしには、閣下のお考えが分かるほどの頭脳はございません。ですが…」
    「…なんだ」
    「あれが、あの時の貴方様の中では最善の策だった。今、別の歴史を歩んだ者が何を言おうと、それは閣下の気持ちを汲んだものではありません。…わたくしは常に、貴方様の正しさを信じております」

    微笑む顔が、月光に照らされる。
    シモベとして、いついかなる時も共に在る存在。
    それは、どちらのヴァルバトーゼにも、同じだった。

    「……お前は……そうか、そうだな」

    何かを言おうとはしたが、先の言葉は飲み込まれ、微笑みに変わる。
    先程噛んだ場所を、服の上から撫でさする。

    「…悪かった、酷くした」
    「…!いいえ、なんてことはありませんよ。閣下の身体も、今日は相当な負荷がかかったでしょう。さ、もうお休み下さいませ」

    たまに、ヴァルバトーゼはフェンリッヒの血を吸う。
    気が立っている時は、分かりやすく乱暴だ。
    今日、気が立っている理由は分かっていた。“別世界”から来たという自分たち。
    その中に居た別世界の主──暴君ヴァルバトーゼは、主君とは真逆の道を歩いていた。
    誇りを捨てない、真っ直ぐに何もかもを信じて勝ち取ってきた、暴君。

    「では、わたくしはこれで失礼致します。お休みなさいませ、閣下」
    「…ああ」

    服をきちんと着て、一礼した後に部屋を出て行く。
    その帰り際、別の顔が見える。

    「……あら?こんな夜更けに、何をしていらっしゃるの?」
    「…あなたですか」

    ピンク色の、短いウェーブがかった髪が視界に入る。

    (──ああ、目障りだ)

    ついキツくなった目付きを戻し、内ポケットから眼鏡を出してかける。

    「何でもいいでしょう?それとも、わたくしは行動をする度に、あなたへ許可を取れとでも?」
    「……」
    「あなたもさっさと休みなさい。明日、今日のことで疲れたと言い訳はさせませんよ」
    「…分かっていますわ」

    眷属だか何だか知らないが、主の眷属になったということは、彼女は最早操り人形のように動いている。
    だがなぜか、時に己に対して敵意のような感情を向けて来ていることが、フェンリッヒには不可解であると同時に不快でもあった。

    (…今回は失敗した。だが、次こそは必ず)

    あの日、死なせないという約束の元に、眷属として主が連れ帰って来た、邪魔な女。

    次こそは、失敗などしない。
    次こそは、あの女を仕留める。

    廊下を歩きながら、フェンリッヒは、昔よく言っていた口癖を空に言った。

    「──すべては、我が主のために」

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    last_of_QED

    DONEディスガイア4で悪魔一行が祈りに対して抵抗感を露わにしたのが好きでした。そんな彼らがもし次に祈るとしたら?を煮詰めた書き散らしです。【地獄の祈り子たち】



    人間界には祈る習慣があるという。どうしようもない時、どうすれば良いか分からぬ時。人は祈り、神に助けを乞うそうだ。実に愚かしいことだと思う。頭を垂れれば、手を伸ばせば、きっと苦しみから助け出してくれる、そんな甘い考えが人間共にはお似合いだ。
    此処は、魔界。魔神や邪神はいても救いの手を差し伸べる神はいない。そもそも祈る等という行為が悪魔には馴染まない。この暗く澱んだ場所で信じられるのは自分自身だけだと、長らくそう思ってきた。

    「お前には祈りと願いの違いが分かるか?」

    魔界全土でも最も過酷な環境を指す場所、地獄──罪を犯した人間たちがプリニーとして生まれ変わり、その罪を濯ぐために堕とされる地の底。魔の者すら好んで近付くことはないこのどん底で、吸血鬼は気まぐれに問うた。

    「お言葉ですが、閣下、突然いかがされましたか」

    また始まってしまった。そう思った。かすかに胃痛の予感がし、憂う。
    我が主人、ヴァルバトーゼ閣下は悪魔らしからぬ発言で事あるごとに俺を驚かせてきた。思えば、信頼、絆、仲間……悪魔の常識を逸した言葉の数々をこの人は進んで発してきたものだ。 5897

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025

    last_of_QED

    DOODLE【10/4】ヴァルバトーゼ閣下🦇お誕生日おめでとうございます!仲間たちが見たのはルージュの魔法か、それとも。
    104【104】



     人間の一生は短い。百回も歳を重ねれば、その生涯は終焉を迎える。そして魂は転生し、再び廻る。
     一方、悪魔の一生もそう長くはない。いや、人間と比較すれば寿命そのものは圧倒的に長いはずであるのだが、無秩序混沌を極める魔界においてはうっかり殺されたり、死んでしまうことは珍しくない。暗黒まんじゅうを喉に詰まらせ死んでしまうなんていうのが良い例だ。
     悪魔と言えど一年でも二年でも長く生存するというのはやはりめでたいことではある。それだけの強さを持っているか……魔界で生き残る上で最重要とも言える悪運を持っていることの証明に他ならないのだから。

     それ故に、小さい子どもよりむしろ、大人になってからこそ盛大に誕生日パーティーを開く悪魔が魔界には一定数いる。付き合いのある各界魔王たちを豪奢な誕生会にてもてなし、「祝いの品」を贈らせる。贈答品や態度が気に食わなければ首を刎ねるか刎ねられるかの決闘が繰り広げられ……言わば己が力の誇示のため、魔界の大人たちのお誕生会は絢爛豪華に催されるのだ。
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    last_of_QED

    CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
    「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html
    俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】



     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
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