empty 1話1.
緑色のベチャベチャが全身にまとわりつく。というより自分自身から湧き出したそれに覆われ、丸ごとスライムになっているかのようだった。ベチャベチャにまみれた自分の手を見つめる。こどもの小さな手。
これは夢だな。
一番に思ったことはそれだった。これは何度も見る夢だ。
研究所にいるいつもの光景で、研究所は失敗して、NO.8が脱走する夢。
でもまあ、確かに研究所にいた頃は常に得体の知れないものにまみれていたけれど、それにしたっていくらなんでもこんなスライムみたいにはなってはいなかった。きっと夢がこの場所での出来事と感情とを一緒くたにして、めちゃくちゃにかき混ぜてこの光景を見せている。
緑色で、蛍光灯が妙に明るく見えたあの日。
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