えごころ「え、これもしかして猫だったんですか?」
うさぎだと思いました、とバイトの女の子が目を見開いてこちらを向く。
「……いや、くま……なんだけどな」
「え」
女の子はしばらく立て看板とこちらを交互に見続けた。
「青、お前本当に絵下手だよな」
君伸がビールを飲みながらじとっと見てくる。左手でひらひらとさせているコピー用紙には俺が描いたくま。今日も2人で宅飲みだ。
「せめて猫らしく描いたらどうだ」
「くまだって」
君伸からコピー用紙をひったくる。家に帰ってもう一度生み出したかわいいくまを猫だと言う君伸には渡しておけない。
元々自分は立て看板を描く機会が少ないのに、バイトの子にあの絵を見られてはさらに減るだろう。別に看板を描くのが特別好きと言うわけではないが、
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