霊柩車 まだ霧が濃い朝。
定速を取り締まる警察をサボは300キロ出して振り切った。
ビームみてえなバックライトで目つぶししながらだとんでもねえ。
海沿いを爆走する車を雨が殴りつける。
「ただの定速だろ、金払えばいいじゃねえか逃げなくたって」ペットボトルの口を開けたお茶を渡す。
「おれ免許持ってない」
「えっ」
「エース寝てるし、車のなかひっかきまわされると困る」サボはミラーを見ながら笑った。
後ろからふたつのデカい段ボールに挟まれたエースの寝息が聞こえる、寝てんのかよ。
ありがと、とおれにペットボトルを戻してサボはにこにこスピードを上げる。
車通りの少ない道とはいえ常時80キロで走るサボに赤信号は見えてない、おれとエースの家は屋敷から歩いていける距離だってのにかっ飛ばすからここだぞって言う前にとっくに通り過ぎた。
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