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    imori_JB

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    imori_JB

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    俳優パロのさめにょたししの続き。
    言質を取られてはい決着。
    いちおう此処で完結です。
    この後週末に村雨の実家に連れていかれて顔合わせ、次のデートでブライダルフェア、三回目のデートで結婚式でリアルタイムアタックも完了する。

    #JB腐
    #さめしし
    #女体化
    feminization

    午前零時を過ぎても② けっこん。血痕……いや、結婚?? 
     目の前の男と結婚という単語がいまいち結びつかない。そういった事とは完全に縁遠い雰囲気だ。
     妙な事を口走った男には血痕の方がよほどしっくり来るが余りにも文脈的に不自然、というよりも完全に意味不明で破綻する。結婚の方でもある意味十分破綻しているが。
     いや結婚、結婚である。目の前の男は何と言ったか。交際を前提に結婚を。こうさい。けっこん。獅子神と。獅子神と????
    「……、……、……はぁ!?」
     嬉しいでも悲しいでも無く、良いでも悪いでも無く。獅子神の口から突いて出たのは心の底からの驚愕だ。
     誓って――誰にかは知らないが――獅子神と村雨はそんな関係では無い。同じ作品に出演した共演者というだけだ。
     確かにただ一度だけ、ベッドを共にしたけれど。
    「急な話で驚かせている事は分かっているが、こうでもしないとあなた、私との連絡手段を全て断とうとしているのだろう?」
    「うっ……」 
     何故バレている、と獅子神は動揺した。
     芸能界は人脈に重きを置く人間が多く、業界内の人間の連絡先を多く知っている事はある種のステータスだ。獅子神もパーティーで顔を合わせ挨拶をしただけの相手から連絡先を訊かれ、閉口した事は数知れない。
     獅子神はそういった関わり合いから一線を引いており、連絡先の類は教える事は最小限、相手の連絡先必要であれば保持するが必要が無くなれば消去する方針を取っていた。そもそも他人に教える番号やアカウントは事務所支給の仕事用スマートフォンのものだ。プライベートの番号を教えたのは片手に収まる程度の人数しかいない。
     薄っぺらい人間関係は多くの場合、獅子神に禍を齎す。実際今までに幾度そういう事があったやら。
    「冷たい」「薄情」「人づきあいが悪い」「お高く止まっている」どうでもいい相手からそんな評価を受ける事など、危機回避の前には小さなことだ。
     だから。
     この仕事が終わったら連絡を取る必要が無くなる目の前の男の連絡先も、今までと同じように消そうと思っていた。
     ほんの僅か、それを惜しむような気持ちは心の奥底にしまったまま。
    「……。あの時の事に責任感じてるなら、」
    「それは違う。責任感で結婚を申し込むほど殊勝な性質では無い」
     それは必要のない気遣いだ、と断ろうとした獅子神の言葉を最後まで言わせないとばかりに村雨が被せて来る。
    「……えーと。オレじゃいいとこの坊ちゃんには到底釣り合わねぇよ」
    「あなたが困難の中、一人で生き抜いてきた事は知っている。その強さもあなたに惹かれた一つだ」
    「……」
     どうしよう、どうやって断ろう、と思考を巡らせる。アルコールが入った頭は何時も通りの働きをしてくれない。自覚が無かっただけで思ったよりしっかり酔っていたのか。
    「そもそも、私は気が無い相手にあのような提案はしない」
    「……」
     今の事務所に俳優として所属する際の事務所との取り決めで獅子神は肌を晒すもの、ベッドシーンなどの性を連想させる仕事は全てNGにしてある。
     今回の映画も当初はそんなシーンは無かったのだ。それを確認した上でオファーを受けた。
     けれど映画の撮影も後半に差し掛かった頃、いきなり脚本家が変更を言い出して追加されたのが主役二人の濃厚なベッドシーン。
     ふざけるな、話が違う、と思った。マネージャーの梅野も事務所社長の宇佐美も降板して良い、と言ってくれた。今回の降板が獅子神の今後に一切影響しないようにする事や、発生する面倒ごとは全て事務所が引き受ける、それが契約だからと。
     けれどそうまで言って貰った獅子神が降りる事を躊躇ったのは、共に映画を作り上げて来た人々の顔が脳裏を横切ったからだ。
     良い作品になる、と村雨はもとより獅子神の事も気遣ってくれた彼等の仕事を無意味にする事は憚られる。
     極めつけは村雨までもが、獅子神が降りるなら自分も降りると言い出していた事を知ってしまった事だった。梅野も宇佐美も獅子神の耳に入らないよう気遣ってくれたようだが結局人の口に戸は立てられない。
    『降りない。このまま続ける』
     そう決めたのは獅子神自身だ。降りないと決めたのだから当然俳優としての仕事を全うしなければならない。
     けれど性に纏わる嫌な記憶が多すぎて、ベッドシーンに差し掛かると獅子神は途端にとんでもなく残念な大根役者に成り下がった。リテイクを数日に渡って連発し、監督が頭を抱え、村雨の溜息を何度聞いただろう。
     身体は上手く動かず台詞は全て頭の中から飛んでいく。ただ恐怖で叫び出さないよう歯を食いしばるのが精一杯。
     そんな獅子神に村雨が提案したのが、ベッドシーンの演技指導だ。演技指導という名目で獅子神は村雨に抱かれた。
    『経験が無いからベッドの中での事に過剰に怯え緊張する事になる。ならば一度でも経験してしまえば余裕も出るだろう』
     後から思い返せば突っ込みどころだらけの提案を、上手く演じられない事を悩み思い詰めていた獅子神は頷いた。
     いつか逃げ切れずに経験するになる位なら、愛だの恋だのは無くてもせめて尊敬できる相手と、と思ったのも理由の一つだ。
     突っ込みどころしかない荒療治は幸い功を奏して、別日の撮り直しでは監督に突然とても良くなった、と褒められる程度に上達していたらしい。未だに獅子神には正解は分かりかねているが監督がOKというならばOKだ。
     その夜以降も、村雨は何事も無かったかのように獅子神に接した。それは獅子神には有難い事だ。ことある事に蒸し返され、何かを要求されては堪らない。
     そしてこのまま、何も無いまま終わるのだろうと思っていた。
    「……何時から?」
     喉が異様に乾いて、貼り付く様な感覚。
     獅子神は他人の悪意や欲望、下心といった感情には敏いつもりだ。
     そうでなければ身を守れなかった。外見だけはやたらと異性に好まれるタイプの、庇護者のいない無力な若い女は驚くほど簡単に踏み躙られる事を獅子神は良く知っている。
     村雨からそんな気配を感じた事はただの一度も無い。たった今、こうして交際を申し込まれても尚、そんな気配は感じないのだ。
    「真経津にあなたの話を聞いていた。その頃から興味はあった」
    「……あ、」
     真経津晨。同じ事務所に所属している、獅子神より四つ歳下の、しかし子役であった為芸歴は獅子神より遥かに長い天賦の才を持つ俳優。現状村雨と並んで事務所の看板俳優だ。
     共演を切っ掛けに何故か友人としての付き合いが始まり、関係する仕事が終わっても連絡先を消さなかった、数少ない友人と思える俳優の名に獅子神は小さく声を上げた。
     その反応に村雨は紅い瞳を細めて思い返す。
    『面白い女優さんがいるんだよ。村雨さんは絶対に好きそうなタイプ』
     同じ事務所の年下の俳優仲間は、村雨を前にしてそう笑った。
     楽しい事にのみ価値を見出し、楽しい仕事しかしないと嘯く一種の異常者は、人付き合いの悪い村雨を友人として扱い事ある事に呼び出し付き合わせる。応じる方も応じる方だという事は村雨も分かっているのだが。
     そんな異常者こと真経津がある日上機嫌に示したのは、彼が出る連続テレビドラマ。そのドラマの中で真経津の相手役を務めていたのが獅子神だ。
     異国の血を表す華やかな見た目、男ならば大抵二度は見るだろう恵まれた身体。
     自らの美しさや能力を誇り、ややもすれば周りを見下す高飛車で驕慢な女。
     ――というように見せかけた、大人の女の姿をした臆病な少女の姿。
     実際の本人の能力と自意識と周囲への見せかけが全てバラバラという何ともアンバランスな彼女を、この手で花開かせられたらどんなにか。
     だからこそ、気心の知れた監督が持ち込んで来た村雨を主役に据えた映画の企画に、村雨は真っ先に相手役として彼女を推薦したのだ。
     そしてその読みは全て当然に当たった。
     獅子神はこの映画で大きく成長し、花開いた。それは何も村雨の手助けだけでは無く、獅子神の飽くなき向上心による物が大きい。
     その向上心や本質的な善性、一切の欲を含まず村雨を真っ直ぐ見据える獅子神の瞳に村雨は恋をした。人生で初めての恋だ、当然成就させる事しか考えない。
     しかし美しく開花した大輪の花を前に、人が考える事などそう大差ないのだ。
     手折り、手に入れ、近くで眺めたい。今よりも更に多くの有象無象が彼女に手を伸べるようになる。
     ならば村雨がすべきことは明確だ。
     他の何よりも先んじて彼女を手に入れ、この腕の中に囲い込む。
     村雨は獅子神の手に重ねた自らの掌に少しだけ力を籠めた。
     戸惑いを浮かべるアクアマリンの双眸に目を細めて、村雨は人生で初めて、人に乞う。
    「――あなたを非常に好ましく思っている。どうか頷いてはくれないか」
    「え、あ……、オレ、は……」
     獅子神の掌越しに彼女のスマートフォンの振動が村雨にも伝わる。迎えを呼んでいたようだからその連絡だろう。
     動揺に揺れる眼差しはスマートフォンの上に重ねた二人分の手と村雨の顔とを忙しなく行ったり来たりを繰り返す。
     このままでは迎えの人間がこの場に来てしまう、という焦りが手に取るように分かる。大方彼女のマネージャーだろうが、社長に近しいマネージャーにこの場を目撃される事は村雨にとっても余り好ましくない出来事だ。社長の宇佐美の耳に届けば確実に妨害してくる。
    「え……っと、まずはお友達から、で……?」
     その返事に村雨は唇の端を釣り上げる。
     例えこの場から解放される為の逃げの為であったとしても、村雨はその返事で言質を取った。
     もう迎えが来たから行く、とスマートフォンとハンドバッグを掴んで慌ただしく、まるで逃げ去る子狐のように駆け出した獅子神を今は追わず彼女の背中を黙って見送る。
     はてさて、今頃車の中で何とか逃げおおせたと胸を撫で下ろし安堵しているであろう彼女をどうやって絡め取ろうか。
     村雨のくつくつと忍び笑う声だけが、バーカウンターの上に落ちた。

     *

     ピピピ、という無機質な機械音で意識を浮上させた獅子神は重い瞼を開き、ナイトテーブルの上にあるスマートフォンの画面を確認する。普段オフ日の起床予定時刻より二十分遅れだ、随分酒を飲んだのだから仕方がない。
     直ぐに起き上がる気にならず、再び目を閉じてベッドの中で何度か寝返りを打つ。
     主演した映画の舞台挨拶後の打ち上げパーティーでそれなりに量を飲み、早々に切り上げて帰って来た。
     帰って、来た。それだけか?
     チリ、と感じた違和感を探ろうと記憶を漁ろうとして、それは直ぐに見つかった。
    『獅子神。私と、交際を前提に結婚して欲しい』
    『――あなたを非常に好ましく思っている。どうか頷いてはくれないか』
    「……ってんな訳あるかぁぁぁぁっ!」
     獅子神は枕を抱えて飛び起き、天井に向かって吠える。
     あの村雨礼二が! 獅子神に!!
     誰が聞いてもそんな訳無いだろうと判断する話だ。下手をすると言い出した獅子神の頭が疑われかねない。
     これがもしアルコールが見せた幻覚の類であるならいくら何でも恥ずかしすぎる。二度と村雨の顔をまともに見る事が出来ないだろう。
     そうでなければ村雨の方がアルコールにやられていたのかもしれない。
     今頃酔った上でのやらかしに頭を抱えている可能性もある。いや、それどころか覚えていないかもしれない。
     寧ろそうであってくれという獅子神の切なる願いは、まるで起床を見計らったかのようなタイミングでプライベート用のスマートフォンに届いたメッセージにより至極あっさりと打ち砕かれた。

    『次の週末迎えに行く。逃げるな』

     教えていない筈のプライベートの連絡先を何故知っている、なんてきっと今更なんだろうなと獅子神は力無く笑うしかなかった。
     午前零時を過ぎても、恋の魔法は解けないのだ。
     
     
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    imori_JB

    DOODLE村雨とにょたししが付き合ってることを知らなかった宇佐美班の面々に、真経津邸に入り浸るせいで自然と知った御手洗がうっかり暴露した話。
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     毎年年に一度行われているパーティーであるからして既に数回経験している面々にとっては特段今更疑問を持つような内容では無い。
     しかし今回が初めてである御手洗にとっては疑問しかないイベントだ。
    「あの……何ですか、この……」
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    「はい」
     普通課が主催するイベントとは異なり特別課が主催するイベントは勿論ギャンブルに関した物だ。
     創立記念謝恩パーティーの中でも特別業務部4課と5課が合同で主催する4リンク以上に所属しているギャンブラー達を招き、彼らを相手にVIP達がギャンブルを楽しむという企画はその中のメインイベントとして位置づけられている。
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