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    Mamemo

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    Mamemo

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    本編の帰還後設定でのガイアシュ

    #ガイアシュ
    gaiash

    見えなかった光アッシュが帰還した。

    皆が出迎えた気持ちと温度差があったのも覚えている。
    先に死んだはずなのに、ここにいるのがどうしておまえだけなんだと酷く心の中で責めた。言葉に出来なかったのは困ったような浮かない表情が、よく知った存在だった。まるで、責めないでくれと懇願するような。庇護欲を掻き立てられた瞬間、彼が一人で帰還した理由を理解してしまった。
    同時に認めたくなくて、愛想笑いで覆い隠した。






    数ヵ月後。
    平和条約で定めた意見交換会がグランコクマで開かれる。領主らも続々と会場入りしていた。
    真紅の髪。陽光に照らされたルビーのような、確認せずともわかるその人に臆せず近づく。




    「ようっ!久しぶりだな」
    「ガイ…久しぶり。まさかここで会うとはな」
    「元ホド島民代表として会に顔を出す事になったんだ。まあピオニー陛下の勅命なんだが」





    よそよそしくならないように、元気だったか?最近はどうだ。と気さくに話す。アッシュの返事は覇気がない。
    会話がちっとも弾まず、一方的な尋問みたいで少し気まずい。



    ローレライの解放が終わったら、アッシュと一からやり直すつもりだったのだが…。やり直すどころかアッシュはあまり気乗りしないかもしれない。
    いや。気乗りしないのは自分かも。ただの独り善がりだろうか。提案もできず、さてどうしたもんかね。
    ガイは自分の理想と現実に溜め息を吐く。






    「今日はエネルギー分野の話し合いもあるんだよな」
    「領主たちとの擦り合わせ…どこまで上手く行くかねぇ…」
    「キムラスカ…特にファブレの俺を良く思っていない者は多いから難儀かもしれん。ガイもこれ以上、俺と関わるな」
    「(いや、違う。アッシュは気を遣っているんだ。俺が歩み寄らないばかりに)」




    入口に到着するまで、お互い視線を交えないまま。知った顔と一緒で少しホッとしていたのも束の間、身辺警護を固めた頭の堅そうな貴族らの様子が見えて、この会は苦労しそうだ。




    「身分証の確認を…。ファブレ様は左手側。ガルディオス様は右手側のお席へ」
    「先に失礼する。じゃあなガイ」
    「ああ」





    またあとで。たった一言が言えなかった。
    どこかすれ違う気持ちを抱き、案内されるままに別れた。




    ファブレ公爵家のアッシュはキムラスカ側。ガルディオス伯爵家のガイラルディアはマルクト側。俺と関わるなとアッシュに告げられた直後に、そんなつもりはなくても国籍で線引きをされて複雑だ。




    重厚感がある雰囲気の中、厳かに会が始まる。

    進行役が淡々と原稿を読み進め、参加者らが議論し様々な検討を重ねていく。
    領土の話からは世界の事情が見える。
    続いてはエネルギー関連。プラネットストームの再始動は可能か。アブソーブゲートもラジエイトゲートも魔物の巣窟と化している。と言った内容だ。


    参加者の中ではアッシュが一番若いようだ。加えて彼はマルクトの仇敵ファブレの息子。アッシュが発言をする度、マルクト貴族らの意見に何かトゲを感じる。このままでは本来の目的から逸脱してしまう。
    静粛に。進行役も時に貴族らを止める程だ。
    ガイも助け船を出そうとするが、発言を制され、拳を握りしめながらやり取りを見ているしかなかった。ピオニー陛下直々の参加命令だ。下手に睨まれる訳にもいかない。
    憎かったはずのアッシュが哀れに思う。







    「ファブレ公爵家の御曹司は六神将だったと言うだけあって、さぞやキムラスカも心強い事でしょうからなあ」
    「お父上も元帥と立派だ」
    「はははは。戦いに長けているとはマルクトも、うかうかして居られないですなあ」
    「(ホド戦争の話を持ち出したり、アッシュが六神将だったって話、只の嫌味なんだよ。わざわざ人を貶めて煽る。それにゴマすりの得意な貴族たち…か。みんなで勝ち取った平和だと言うのに。何だか胸くそ悪いぜ)」





    意見交換会に疑問や隔たりを感じながら、刻々と時間が過ぎ去り、どうにか話は纏まった。
    アッシュの表情はガイから伺えなかった。





    「お疲れ様でした。長いお時間ありがとうございました!」




    これにて閉幕。解散。
    進行役の言葉で貴族たちは部屋を後にする。
    アッシュが退室した事に気づいてガイは慌てて後を追う。




    「アッシュ!お疲れさん!大変だったな」
    「お疲れ様。はぁ……俺に関わるなと言ったはずだが…?ガイはお人好しだよな」
    「そうか?なあ。それより、どうしてあんな事言われて反論しなかったんだ」
    「あんな事?六神将だった事か。事実だから仕方ない。些末なことに反応していては議論も進まないし、何よりみんな俺が動く事を望んでいるからな」
    「……どうしておまえが矢面に立たないといけないんだよ。三国同盟の名の下に勝ち取った平和で。維持するため開かれた会なのに、マルクト側はあまり協力しようとしなかった。おまえに擦り付けて犠牲にしようとしてるって何故わからない」




    わからないはずはない。アッシュは頭が良い。貴族らの企みくらい理解しているだろう。

    ガイは自分が怒りの感情を抱えている事に驚いた。
    だが、この怒りは何に対するものだろう。アッシュが反論しなかった事か?マルクト貴族たちがアッシュを利用してニヤついていた事に?年若いアッシュをいじめる貴族たちから救えなかった自分に?

    厄介事を引き受けさせられたアッシュのお手並み拝見と行こうじゃないか。とは到底なれない時点で、きっと全部正解だろう。


    今のアッシュはまるで、死に場所を探す迷子。緑の瞳に光は見えない。
    これでは…。




    「犠牲なんかじゃない。俺は戦える。もう自立した大人だ。利用されている事も理解している。我慢することも、自分自身の心を守る術くらい持っている」
    「(いつかの、ルークと…同じ……だ…)」




    これは処世術なんだ。
    立ち去ろうとするアッシュに、ガイは辛抱出来ず反論してしまう。




    「そう考えているなら、まだまだだよ」
    「何だと」
    「そうやってムキになって引き受けるところさ。おまえもルークも、子供の内に自立させられて、世界に抑圧されながら必死に生きてきた。強がる所は一緒だ」
    「……」






    アッシュは10歳の頃に誘拐された。信頼していたヴァンの企み。人類補完計画。人間全てをレプリカに作り替えるため、アッシュの稀有な能力を利用しようと、研究者らの欲望を上手く駆り立て利害一致した計画が始動した。



    子どもだったアッシュが丸め込まれ、騙されるには充分だった。



    それから始まった昼夜問わず行われる研究、実験。薬で身体を走る苦痛。自尊心はズタズタにされ、それでも死ぬ勇気が無かった。生きていたかった。
    いつかあの場所に帰れる。必ず帰ってやる。自分は世界に必要な人間なんだ。そう信じて。



    アッシュに居場所は無い。
    現実を突きつけられ、希望は粉々に砕かれ絶望した。悔しさが頬を流れる。
    子供心にその存在を羨んだ。代わりの『偽者』を。

    それは憎しみだ。アッシュから全てを奪ったあの存在を憎め。

    心を守るためと称して、掛けられた目眩ましの呪詛。それを真に受けてとても硬い殻で心を覆った。

    だから生きるには、従うしかない。




    「違う。俺はレプリカとは違う。今も俺が俺として生きて行くにはこれしかないんだ!」
    「そうさ。勝手な事は承知で言ってる!おまえはルークと違う。一人で生きて行ける強さがある。でも平気なフリをしている」
    「平気な振りだと?ガイに何がわかるんだ」
    「俺も、一人で生きて行くものだと思っていた。でも気付いたのさ。失う怖さを知ったから逃げていたんだと」
    「……何が、言いたい?」
    「理解した上で動いてるのはわかった。従うしかないって事も。でも、これから先は一人で抱えず、俺にも頼ってくれって事だ。国は関係なく。幼馴染みだろう?」





    くだらん。
    そう吐き棄てられるとガイは思っていたが、意外そうな表情が見えた。
    刹那、緑の瞳が視線を落とす。
    本当は誰かに頼りたかったのだろう。彼は、人に頼るのは甘えだと封じていたのかもしれない。
    ガイだって幼少期に家族やヴァンたちに甘えていた。それが当然だった。そんな日常を奪われ、絶望の中で側にペールがいて見守ってくれた。

    だが、アッシュはどうだ。歳は違えど間違いなく10歳に満たぬ子供だった。
    騙したヴァンや、好奇の目を向けて動く研究者たちに、ルークを作られるまで酷い実験を続けられたはずだ。
    助けを呼ぶ声も届かぬ孤独。さも地獄だったろう。


    過去は変えられないが、未来は変えられる。これから先、アッシュが助けを呼べば駆けつけたいと思えるまでに変わった。おまえを助けられなかった自分に怒っている。友達として。
    そう伝えるのをアッシュは黙って聞いていた。





    「それとさ、アッシュ」






    一歩。ガイが距離を縮める。





    「ごめん。おまえだけ戻って来た事を、俺は心の中で責めていた。悪かった」
    「…」





    アッシュが無言で首を横に振る。
    ずっと心に押し込めていただろう。たったひとりで、ルークの記憶を抱えて帰還したことも。
    アッシュは多分、罪悪感に駆られている。自分のせいだ。
    全部振り払おうとして本音を伝えた。



    アッシュは俯いたまま、何も言葉にしない。
    引き寄せて両腕で拘束すると、アッシュの身体が跳ねた。どうしていいかわからない様子で固まっている。
    けれども、嫌がる素振りは一切ない。





    「ずっと耐えてたんだよな」
    「ちが……」
    「つらかっただろう?ごめんな。きつく当たって」
    「謝る事なんて……。ガイの方が……家族を喪って……。俺は……全然…つらくない…」
    「………嘘つけ」
    「…ガイは……俺を…ファブレ家を恨んでいたんだろう…?俺が…」
    「今はそんな話じゃない。おまえの事だ!」
    「………」




    どちらがつらいと言う比較なんてできない。アッシュにとってもガイにとっても苦しくて憎かった過去は変わらぬ事実。
    ガイはファブレに復讐しようとしていたはず。

    アッシュを腕の中に拘束したまま、先にガイが沈黙を破った。





    「俺が、まだファブレを恨んでる。…とここで言ったら、おまえは俺の復讐のために我慢して死んでくれるのか?幼い頃からずっと、おまえをファブレから奪えば良いと思っていたんだ」
    「………ガ…イ……」





    それは一度、アッシュがルークに突きつけた強い言葉だ。俺の代わりに死んでくれるのか、と。


    それに頷くでもなく目の前の彼は、か弱く名を呟く。否定しないのは大人しく命を差し出すつもりかもしれない。

    レプリカは簡単に死ぬと言えて良いな。

    これではルークへの八つ当たりと同じだ。
    ガイは邪念を振り払うように笑い飛ばす。




    「ばーか。迷ってんじゃねーぞ。俺が、憎い相手を抱きしめるほどお人好しだと思ってんのかよ?」
    「……ってぇ」



    突然デコピンされたアッシュは痛そうに顔を顰める。
    ガイは思う。バカなのは自分の方だったと。己の本当の気持ちに漸く気付いたのだから。




    「必ず復讐は果たすつもりさ。そのために…アッシュには、友達ではなく俺の家族になって欲しいんだ」
    「…………え?」



    家族?何を言ってる?一緒に暮らすのか?それで復讐?
    理解できない。


    ぐいっと、両肩を押さえアッシュを正面に見据えた。ガイの表情はいつになく真剣だ。アッシュの視線が泳ぐ。





    「アッシュ!」
    「な、なんだ?」
    「俺と…結婚してくれ」





    アッシュは耳を疑った。
    結婚?今、結婚って言ったか?いや、聞き間違いのはず。公の場で、仇の息子にそんな事を言うか?目を見開き、動揺を抑えるように確認してしまう。




    「は?え?け……決闘……か?戦えばいいのか…?」
    「……うおーい!何でそこで天然ボケになるんだよっ!決闘じゃねえ!結婚だ。俺のパートナーになって欲しい」
    「……は?けっ…?結婚それこそ何の冗談だ俺は男だぞ!だいたい、仇の息子で、一人で帰還して…ッ」
    「そんなに怒るなよ。俺のパートナー……ガルディオス家の人間になってくれ。それでファブレへの復讐はキッパリやめられると思う」
    「……い、意味が……わかんねえよ……。俺をからかって楽しんでるんだろう。バカにするな!」
    「からかってない!バカになんてしてないっ!」



    逃げようとするアッシュを掴んで離さない。

    ガイの強い否定と真剣な眼差しに驚く。
    そんなはずない。ガイはずっと自分の事を嫌っているのをアッシュは自覚している。好かれている自信などアッシュは一ミリもなかった。
    復讐を理由に結婚してたまるか。





    「………本当の事を言うとな、アッシュの事を好きになっちまったんだよ。だから結婚して欲しい」
    「嘘だ……。だってガイは…レプリカの事が」
    「……そりゃルークの事は好きさ。アイツは特別なんだ。弟みたいで、子どもみたいで、親友なんだ」
    「そう……だろうな」
    「でも違うんだよ。ルークに抱く感情とアッシュに向ける感情が…違う事に気付いちまった」




    伝わるはずないよな。肩を落とす。

    ガイはずっとアッシュを避けていた。不快感に似た苛立ちを常に募らせていたから。
    大事なものを踏みにじられ、苦労して大切に育てたルークに理不尽に酷く当たるアッシュを、時には軽蔑していた。


    だが、自分はどうだ?
    アッシュはファブレの息子と言うだけで標的にした。
    子どもの頃から小生意気な、いけ好かない態度が神経を逆撫でし、復讐を強く誓わせてくれた。これを正当化できる自信はない。

    幼少のアッシュに打ち捨てられたリボン。あれを形見だと知れば、今のアッシュなら丁寧に返してくれたかもしれない。打ち明けられなかった。死ぬ訳にはいかなかった。生きる意義が復讐だったから。
    奇しくも自分の行動はアッシュと同じことだったとガイは思う。


    酷い態度を取っていた相手に結婚を申し込まれて、アッシュが首を縦に振らないのは当然だ。再会した時に好かれている事を確信していたから誤算だった。
    アッシュは極度にガイへ向ける好意を出す事を恐れているのだ。




    「……だったら、このままおまえを拐うか」
    「…え?」
    「俺にしか縋れないように。大問題にしよう」
    「ちょ…ちょっと待てガイ。そんな事しておまえになんのメリットがある」




    ここでフランクに「冗談だった」などと言おうものなら、烈火の如く怒らせてしまうはず。
    拗れた仲の修復なんて金輪際不可能だろう。
    そんな酷い話にはしたくない。
    何より、どうしてもアッシュを嫌いになれない。寂しそうな、孤独の叫びを分かち合いたい。





    「復讐だったけど、俺なりの付き合い方だ。言ったろ?おまえの事が好きになっちまったんだって」
    「ルークのこと、ではなくて?」
    「まーたその質問に戻るのかよ。アッシュに対してだっつーの。直ぐに返事が貰えなくても…家族になる未来を見据えた付き合い、ではダメか?一緒に暮らして……」
    「だ、だから…待て……。待ってくれ…。それって……」
    「プロポーズは早まったな。まずは恋人になって欲しい」
    「っ………」




    プロポーズより一段階下げた告白で、理解が追い付いたアッシュは耳まで真っ赤だ。
    怒りではなく、照れなのが見て取れる。こんな表情が出来るのか。
    ガイはこれで自分が完全にアッシュに傾倒しているのを感じた。
    可愛いと思ってしまったのだから。




    ああ。ますます手に入れたい。
    こんな不器用だったなんて。世話人根性も擽られそうだ。頷いてくれ。伸ばした手を取ってくれ。もしくは上手く諦めさせてくれ。

    悶々とする短くて長い幾秒。やはり駄目か。差し出した手を引こうとしたガイの手をそっと掴む。アッシュの手は震えていた。



    「つ、付き合ってくれるのか…?」
    「……っ」
    「ありがとう!よろしくな」




    アッシュが黙って小さく頷いた事で、ガイは弾けるように抱きしめた。
    過去の自分が見たらひっくり返りそうだ。アッシュにこんな感情あり得ないって。
    真っ赤になって俯くアッシュの背や頭を撫でると、ようやく身体をそっと預けてくれた。







    これは人の意思で動いている。
    星の記憶ではない。





    「(復讐なんてしたくない。バカだった、と思わせてくれる存在を家族にできるか…。おまえも勝たせてくれよ。アッシュ)」




    こうして、ガイはまた心の中で賭けを始めてしまった。
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