今日は何食べようか【序幕】 【1】
『悟が信用できるまで私と一緒の料理を頼めばいい』
まだ若干冷たさが残る風が鼻先を撫でる春宵にて。古めかしい部屋の端に置かれたベッドにて寝転んでいた悟は、腹を撫でながら数時間前に言われた言葉を脳内で復唱していた。久しぶりにコンビニエンスストア以外のご飯を入れた胃はぐるぐると消化に励んでいる。ずっと脳内を占拠する言葉も、胃が驚いているように腹鳴している理由も、喉の奥に残る味の残り香も、すべての原因は同級生――夏油傑のせいであった。
三時間ほど前のこと。傑との初の合同任務を終え、肩を並べて食堂へと入り、向かい合うように適当なテーブル席に座った。周りは上級生ばかりであったが、それを気にして恐縮するような二人ではない。
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