積み重ねるアイ・ミート 珍しく生身で出歩いているのを見掛けて駆け寄った。イデア先輩、と声を掛ければ大いに体をびくつかせたけれどぎこちなくこちらを向く。私を確認すると少しばかり強張りが溶けるのがわかってくふくふ笑ってしまった。
「え、何いきなり笑い出してんのこわ………」
私を見下ろして引いたとばかりに呟くイデア先輩にますます嬉しくなる。少し前であればその後には「あっ、拙者が生身で出歩いていることが既に面白いってこと? どっか可笑しいってこと!?」と被害妄想が始まっていたので。それがなくなってくれたというのは、私に対してその程度の信用があるということだ。それが嬉しくないわけないだろう!
「イデア先輩と会ったのが久々なので嬉しくて」
「………君、本当に変わってるよね………」
虚を突かれたように目を丸くしてからイデア先輩が呆れたように息を吐く。その瞳が存外柔らかくてますます心が浮き立ってしまう。
「ニコニコするなよ。そんなに僕に構って何が楽しいんだか」
そりゃあ楽しいし嬉しいに決まっている! と声高に言ってもいいのだけれど、ぐっと飲み込んで「懐いちゃいました」と笑う。するとイデア先輩はまたしても目を丸くする。
「………変なやつ」
吐息混じりに呟かれた響きは意外な程に柔らかくて、今度は私が目を丸くする番だった。