ユーアー・グッド・パートナー 触れる唇はどうしようもなく甘くて熱くて柔らかくて、一瞬でも気を抜けば理性なんて高尚な機能ごと脳味噌が溶けてしまいそうだと、非科学的なことを馬鹿真面目に考えて吐き気がした。我ながらあまりにも気持ち悪い思考回路に心底軽蔑する。それなのに体は浅ましくも意地汚く求めてしまうので、せめてがっつかないように必死に己の手綱を引いた。
触れて、食んで、舐めて、吸って、押し付けて。およそ口という器官で行えるあらゆる動作を何度も何度も飽きもせず繰り返している。恐ろしいことにやればやる程のめり込んでいくんですよね。酸欠以外の理由で荒くなった息を絡ませ合って馬鹿みたいに互いの粘膜を擦りつけ合っている。どうしたって気持ちよくて脳髄が痺れる心地がやめられなくて。色々な意味でそろそろやめた方がいいと理性は白い目を向けてきているのに、暴れ馬みたいに制御が全然できない煩悩が体を勝手に駆り立てる。割と頭は冷静なだけに一体何が自分をこうさせるのかがわからなくて静かに混乱するし、その混乱に乗じて煩悩が好き勝手どんちゃん騒ぎをしているわけだ。
じわじわと考えることを諦め出した頭は軽率に肩を組んでくる煩悩となかよぴしようとしていて、それに伴って体が勝手にそれまで包んでいた君の肩からゆっくりとその腕を滑り降りていく。やがて先端まで辿り着いて指を絡めれば、そろそろと君の小さな指が僕の手にくっついた。応えるようにそっと握り返せば、重なっている唇が薄く開いて僕のそれをちろりと舐めた。突然のことにほぼボイコットしていた理性が一瞬で戻ってきて思い切り仰け反った。繋いだ手を離さなかったのは奇跡だと思うんですよ僕ァ。