劇場では静かにご鑑賞ください どうしようこれ。途方もない絶望で目を濁らせて遠くを見つめてしまう。
腿に乗る重みにばかり意識がいって仕方がないし目の前の流れる映画に目を向けたところで緩和される筈がなかったよね。
「んぅ………」
「ヒッ!? お、起きる……!?」
体を固くする拙者を嘲笑うようにムニャムニャ言って再び君が穏やかな寝息を立てる。その安寧の一割でもいいからこっちに分けてくれませんかね。というかおはようからおやすみまで君のせいなんですよね。
なんか流れで映画を見ることになったのはまあいい。拙者もちょっと気になってたタイトルだし。拙者の部屋だし。君が船を漕ぎ始めたのもまあいい。誘っといて寝んなしとは思うけど君だし。パーフェクト寝落ちをキメたのも以下同文。だが膝枕させられるのは想定外すぎるんよ。あまりにびっくりしすぎて声出なかった。そして今に至る。
「あ、あのー……そろそろ起きてくれませんかね……?」
すぴすぴと健やかな寝息が返ってきた。ですよねー。じんわりと君の頭の熱が伝播してゾワゾワする。正直許されるなら叩き落としたいまであるんだけど流石に暴力はどうかと思うし、だからといって下手に触りたくもないし。詰みでは?
ころん、と君が寝返りを打って声ならぬ悲鳴を上げた。髪が文字通り爆発する勢いで噴き上がる。ついでに心臓まで爆発しかけたんですがそれは。