説得力は旅に出ました 空には激烈太陽、地には屍のように転がるイデア先輩。体力育成の度に見られる光景に日常を感じてうんうんと頷いた。
「秋、死んだ?」
「イデア先輩に季節を感じる情緒あったんですね」
「朝から元気よく喧嘩売るじゃん。今夜覚悟してなよ、泣いて許しを乞いても絶対やめてやらないから」
座った目で転がったまま睥睨してくる先輩は元の優しさのかけらもないやたら造形もあってそこはかとなく恐怖を煽る。
ところでそこだけ切り取ったら大分誤解を生みかねないことを果たしてこの天才は理解しているのだろうか。してないだろうな。そういうところ意外と抜けてるもんな。
「ゲームとかいう自分の得意フィールドでボコボコにしようとかあまりにも大人気ないですよ、イデア先輩」
わざわざ説明口調にしてあげた私、最高に優しい後輩では? まあそもそも煽ったのは私なんだけど、そこはそれ。
そしてこの先輩は失言こそするが察しは悪くない。寧ろいい。
私の口振りに訝しげに眉を顰め。
髪の毛が爆発した。
どうやら気づいたらしい。赤いんだか青いんだか、実に器用な顔色をしている。うーんこれはお年頃。
「いやあの違っ!! そういうんじゃないから!! 断じて!! 違うから!!」
がばりと身を起こして猛然と弁明を始めた。わかってる人相手に何をしているんだろう。寧ろその挙動で信憑性をなくしているのだが大丈夫だろうか。こういうところチャーミングで可愛いよね、イデア先輩。