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    じゅれ

    @julle1467

    mhyk元アイボ~推し(左右非固定/ブネ前提ネブあり)しっかり成人済。

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    じゅれ

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    brnr盗賊団時代の日常のようなお話。えちちはないけどこの後してほしい。ネ口は面倒くさければ面倒くさいほど良い。

    #ブラネロ
    branello

    夜寒を凌ぐには 次に狙っている宝物。今練っている作戦。誰を連れていき、どう立ち回らせるか。勝算の程度。危惧すべき点は何か。決行にあたるおおよその日程、等々。厨房の大テーブルに地図を広げて、ブラッドが語る。活力に満ちた、耳馴染みの良い低音だ。饒舌さからその自信の程も伺える。自ら危ない橋を渡ろうとする性分なのは苦手だが、生き生きとして、愉しそうにしているこいつを見るのは、結構好きだ。
     昼間よりもぐっと冷え込む冬の夜、敢えて起きている物好きはそうそういない。見張りを任された奴以外はそろそろ大人しく就寝しているだろう。そんな夜更け、明日の朝飯の支度を兼ねて食材を処理していた所にやってきたブラッドは「ちょっと耳貸せ」と言った。あいにく手元は忙しかったので、「耳だけでよけりゃ、いいよ」と返し、作業の片手間、男の声に耳を傾けた。楽観的な希望的観測ではなく、きちんと計算立てられ、緻密に企てられており、しっかりと現実味がある。ブラッドの作戦が失敗に終わることは、予想外の事態ーー例えば、他の北の魔法使いとバッタリ遭遇するとかーーを覗けば、まずない。それは決行前にかき集められる情報の範疇を越えている事象だから、もはや運としか言いようがないものだ。それでも、その万が一を想定して思案している所は、やはり抜かりがないというか、俺も含め、皆が安心して付き従う所以なのだと思う。
    「ま、外の吹雪がおさまらねえ事には始められねえけどな」
     ある程度語り終えた所で、ブラッドは息を吐いた。まさに、その通り。どれだけ細かく練られた作戦も、まともにアジトの外に出られない悪天候では、展開のしようがなかった。数日前から続く吹雪は、例年のそれを踏まえるとまだまだ止まないだろう。幸い、食糧の在庫は今のところ十分にあるから、アジト内で皆で籠る分には特に困らない。ただ、アジトの中には酒と食事以外の娯楽は無いし、ブラッドは勿論のこと、じっとしているのが退屈だと感じる連中も多い。俺個人としては、外部からの急襲の可能性も低く、外に出向いて誰かと殺り合う事もない平穏はいたく歓迎するところだが、盗賊団に身を置く者としては、あまり相応しくない感覚だ。自分でもわかってはいる。わかってはいるが、譲れない性分でもある。いつも徒に命張って、奪って、分かち合い、一緒に生きて、別れてゆく。弱肉強食の北の大地にあっては、殺伐としない暮らしの方があり得ないのだけれど、たまにはこんな、ゆっくりと心と体を休息させる時間もあっていいじゃないか。凍てつく風も雪も、どうせなら出来るだけ長く吹き荒べばいいとさえ思う。こいつや、やたらと生き急ぐ血の気の多い奴らに、足止めを食らわせておいてほしい、と。
    「……あ。なあ、ブラッド。さっき言ってた森ってどの辺?」
    「ん?ああ、かなり前にてめえと行った、西寄りの町の方だよ。そこから国境近くへ向かった一帯に広がってるって話だ」
    「ふうん……?あんまりピンと来ねえな。適当に宿に泊まったような気がするけど、記憶がほぼ無いっつうか」
    「てめえが忘れてんだ、俺も覚えてねえよ。大方、西で遊んで飲んで、その帰りにでも立ち寄ったんだろう。そもそも、あんまりあっち側は行かねえもんな。ほら、この辺だ」
     手が離せない俺の傍に寄ってきて、ブラッドは地図で示す。細かく刻んだ野菜を空の鍋に投入しながら一瞥するが、やはり思い出すには至らない。「やっぱ、わかんねえや」と答えて、水洗いと皮剥きを控えた残りの根菜達に手を伸ばすーーが。
    「……、……?」
     なんだか不意に、ブラッドとの距離を意識した。好物のチキンを揚げているわけでもない。今すぐに摘まみ食いできるものも未だない。それなのに、ブラッドが離れていかないのだ。肩と肩が触れ合ったまま、地図を綺麗に丸めて、少し高い所からじっと俺を見つめてくる。
    「……どうした?腹減ってんの?」
     数刻前に振る舞った夕食にフライドチキンは出せなかったけれど、傷む前に先に使いたい食材があったのだから容赦してほしい。代わりにちゃんと肉は出したし。ビーフシチューとか、旨めの味付けの豚とか。量だって、全員の腹を満たすには十分だったように思う。まあでも、こいつは食欲旺盛な男だから、小腹が空いたと言われれば、今から何か簡単なものを作ってやるしかないか。
    「今夜は冷えるな」
    「まあ、そりゃ、ここは特にな」
     厨房は一等風通しの良い場所にある。直接冷風が入り込むわけじゃないが、通気孔のことや衛生管理の面からも、換気が十分に行き届く場所に造っているのだから、自ずとここがアジトの中でも一番寒いと言える。しかもこの時間は単に食材の処理をしているだけなので、火を起こしてもいないから、より一層冷えていた。さすがに外よりはマシだが、あまり長居しては凍えてしまう寒さである。俺だって、ある程度のところで部屋に戻ろうと思っていた。けれど、そんなわかりきったことを、こいつはどうして今さら言及するのか。
    「……、……ブラッド?」
    「寒いんだ、暖めてくれよ。ネロ」
     す、と腰に手が回された。携えていた地図を机に置いて、そのまま、後ろから抱きすくめられてしまう。とりあえず、水で泥を落とすのだけは続けた。ーーまったく、こいつは、何を言ってるんだか。
     首を少し傾ければ、ピンクスピネルの瞳と視線がかち合う。吐息混じりの、甘い低音。艶やかな熱い瞳も添えて。こいつ二人きりでいる空間の中、そんなことをそっと囁かれたなら、漏れなく全員が容易くころっと落ちてしまう。いいなあ、と思う。こんなにイイ男に甘えられて、誘われて、羨ましい。ーーでも、残念だけれど、そういう誘い文句を真に受けられるようなウブな年頃はとっくの昔に過ぎた。睦言にときめきたくても、それができるほど浅い付き合いでもない。それどころか、寄越された熱っぽい視線を冷静に受け止めつつ、可愛げの欠片もない返事さえしてしまう。
    「……あんたの方が、俺よりずっと体温高いのに?」
     事実、そうである。俺が冷えきった厨房で小一時間ほど作業をしていたせいもあるだろう。背中で感じる温もりは、服越しでも暖かい。あんたの体温の高さは、昔から知ってる。
     拾われたばかりの頃。「腕の中で凍え死なれなら寝覚めが悪い」と、手ずから防寒魔法を施して、ブラッドは自分の毛皮の外套に俺をくるんで一緒に眠った。体力も魔力も弱っちいひょろひょろのガキだったから、それだけしてもらった上で引っ付いて寝てもなお寒さに苛まれて、温もりを求めて身を寄せれば、ブラッドは必ず抱き締め返してくれた。「もっと食ってデカくなれよ」と笑いながら、何度も頭を撫でてくれた。この温もりに包まれていれば大丈夫だ、と安心して眠れた夜がどれほどあったことか。分け与えられ、共有した体温を忘れられるわけがなかった。背後から確かな暖かさに包まれて、それ自体には悪い気はしないのだけれど、ーーどうにも気にくわない。俺にとって、あんたの何の気なしの口説き文句がどんな意味をもたらすか、あんたはわかっていない。
    「外に行けなくて、溜まってんのかよ」
     雰囲気に酔って、一緒に愉しめばいいのに、どうにも俺は冷めていた。戯言だとわかっていても、それっぽく乗ってやれば、こいつも喜ぶだろうに。でも、だって、ブラッドが舌の上で踊らせる甘美な台詞は、俺のためだけに用意されたものじゃないと知っている。
     凍てつく冬の大地の宵に温もりを分け合おう、だなんて。肌を重ねて情を交わすにはいい口実だ。この上ないくらいの尤もらしい理由になる。ガキの頃、こいつに連れられて行った娼館で、女達と戯れている時に同じようなことを囁いているのを見た。そんなに凍えるほど寒くはない、寧ろ魔法である程度の暖を取っている室内で、何故そんなことを嘯くのか。体調が優れないならアジトに帰って、飯を食って体を休めた方がいいのに、と疑問符を浮かべる俺を店の待合部屋に待たせ、「ちょっと寝てろ」と言い残し、そのまま奥の客室に消えていった背中。その頃はブラッドの台詞の示すところがどういうものなのかもよくわかっていなかったし、情交の残り香もなく迎えに来られて、こいつが女を抱いてきたなんて想像すらしなかった。物を知らないガキだったから、と言えばそれまでだが、あれはそういうことなんだぜ、と後になってから他の奴らに聞かされた時、何とも言えない気持ちになったのを、今でも覚えている。男と女の夜の駆け引きに添える甘い囁き。この人にとって、他者と体温を共有するということは、艶めく一夜を彩るための託つけに過ぎないのか。だったら、何度も、それも何時間も、夜寒に凍える俺に惜し気もなく寄越してくれた熱は、一体何だったのか。当然、本人へ尋ねて確かめる勇気なんか持ち合わせていなかったし、そんなものは今だって無い。思い返せば、単純に、疎ましいと感じたのだろう。己だけに下賜されていると信じていた特別な施しが、見知らぬ誰かにも与えられていると知ってーー俺にだけだと思っていたのに、そうじゃないんだ、と。抱いていた憧れと慕情が翳り、湿った憤りを胸の内に飼い始めたのは、恐らくその頃。人の上に立ち、導き、特定の存在を作らない孤高の男に、特別だと思われていたかった、というのは、我ながら思い上がりも甚だしい所だ。本当に、ガキだったなと思う。けれど、大人になってブラッドと共に赴いたはずの場所のことはちっとも覚えていないくせに、そんな、うん百年も前の出来事が頭に焼き付いて離れないというのは、それほど、俺にとっては重要な事象であるということだ。だから、共寝の常套句と知っているそれを囁かれた所で素直にときめけないのは、断じて俺のせいじゃない。
    「つうか、そんな雰囲気じゃなかったじゃん、今」
    「わかんねえか、いきなりそうなるもんなんだよ」
     不敵な唇が紡ぐ台詞は完全な出任せではないが、心の底からの本音でもない。懐は広いけれど、その胸の内は誰にも明かさない。ブラッドが本当は何を考えているのかなんて、相棒の俺にだってわからない。想像して、察する。そして自分の予想があながち的外れではないことを確認して、納得していく、それだけだ。
     腰を抱く手が退く気配はない。寒いのなら、わざわざ他者に頼らずとも、魔法を繰れば容易く暖を取れる。敢えてあんたはそうしないんだ。つまり、嘘。その嘘に弄ばれて、酔いしれて、転がり落ちることができたら楽なのに。
    「……、……、……」
    「……、……強情だな」
     靡かない俺に対して、痺れを切らしたブラッドは舌打ちを溢す。す、と諦めた手のひらが退き、つまんねえ奴、とその顔に書いてあった。悪かったな、あんたのせいだよ。
    「冷えるし眠いし、魔法使うのも面倒じゃねえか」
    「んじゃあ、早いとこ寝ちまえよ」
     底冷えする凍寒にわざわざ夜更かしする理由もないだろう。吹雪は止まないし、朝の訪れは未だ未だ遠い。どうせ明日も外には出られないが、それでも腹は空くし飯は求められる。処理に着手した食材達を放置するわけにはいかないので、まとめて片付けてから寝ようと思った。ブラッドのことは振りほどくまでもない。引っ付かれている分にはそこまで邪魔でもないし、こうもシラけてしまえば、その内自然と諦めて離れると思われた。ーーが。
    「あ、……」
    「ちったぁ労れ。てめえの大事な武器だろ」
     後ろから伸びてきた二つの手のひらが、俺の両手の甲に添えられる。ああ、もう。今、俺の手、濡れてるし、汚れてんのに。気に入りの指輪達が傷んだって知らねえからな。躊躇なく重ねられた手に籠る温もりは、やはり、俺なんかと比べるまでもなく暖かい。
    「《アドノポテンスム》」
     聞き慣れた呪文。ふわりとした柔らかな膜のようなものに両手を包まれる。赤切れていた指先の隅々にも行き渡るそれは、ひどく心地いいものだ。どうせ細かい調理まではやらないし、と悴むに任せていた手先に、久々に感覚が戻ってくる。指のささくれまで綺麗に治されてーーまるで、こいつに手入れされてるみたいだな、と思った。
    「少しは頓着しろ」
    「……お気遣い、どうも」
     短く礼を言えば、ようやくブラッドは俺から離れていった。ーー今からでも、何かつまめるものを作ってやるべきか。この時間から食べても体の負担ならないようなものがいいか。いや、作るならこいつの喜ぶものがいい。時間がかかっても構わないのなら、今すぐにでも取りかかってもいい。いや、でも、別に腹減ってるわけじゃねえなら要らねえかな。空腹な時はちゃんとそう訴える奴だから、逆に迷惑かな。暖められたのは両の手だけのはずなのに、じわりじわりと体の奥底から熱いものが沸いて、何か、その熱の昂りを伝えられる手段はないものかと考えを巡らせる。やっぱりあんた、わかってねえよ。色っぽく紡がれる睦言なんかよりも、たったこれだけの、小さな気遣いの方が、ずっと効果があることを。そうこうしている内に、「てめえもキリの良いところで寝ろよな」と告げてブラッドは颯爽と厨房を後にする。引き留めたかったが、しかし何と言ったら良いものかもわからず、叶わなかった。仕方がないので、ひとまず食材の処理を終えよう。
    「……、……」
     温もりに去られた背中が、ふる、と震えた。一人残された厨房で、黙々と作業に勤しむ。洗う、皮を剥く、切る。せっかく指先の感覚を元通りにしてもらったので、やっぱり、何か一品、作ってもいいかな。他の連中が起きてくると面倒だから、あまり匂いが強くないものにしよう。ブラッドにだけ食べさせられることができるような、ちょっとしたものを。あ、待てよ。就寝を促したのは俺だし、あいつも寝付きは早い方だから、もう床に入っちまってるんじゃないか。寝てるとこに持ってたって、いや今かよ?って思われるかも、等々。散々思案した結果、今夜のところは、やめておくことにした。すげない対応をしたことが、今頃になって悔やまれる。もっと可愛げのある態度で接してやっても良かったのに、なんで俺はこうもひねくれているのか。つくづく自分が嫌になる。
    「……ごめんな、ブラッド……」
     無意識に、ぽつり、と溢れた。
    「あ?」
    「えっ」
     誰に聞かせるでもない呟きを拾われて、思わず振り返る。つい先刻立ち去った男がそこにいた。息を飲む。ヤバい、もしかして、聞かれた?
    「あ、な、なんで」
    「なんでも何も、こいつを取りに来ただけさ。戻る途中で忘れたのに気付いてよ」
     語るブラッドの手には丸められた地図が握られている。ああ、そう言えば、最初はそんな話をしていたのだったっけ。
    「で、何が『ごめん』って?」
     最悪。なんでそんなに耳がいいんだよ。
    「……、……とぼけてもいい?」
    「悪足掻きはよせよ」
     これは白状するまで絶対に帰らないやつだ。上機嫌な様子のブラッドが歩み寄ってくる。そうして、あっという間に、さっきと同じ近さまで距離を詰められた。狼狽する俺を愉快そうに見下ろして「素直に吐いちまえよ、その方がスッキリするぜ」と言う。人の気も知らないで、よくも、あんたって人はさ。時間の経過に任せて落ち着かせようと思っていた熱が、再び燻り出す。甘く疼く、などと生温いものではない。これは、渇欲だ。抗うのも、時間の無駄というものだろう。
    「……あんたの言う通り、今晩は特に冷えるからさ」
     濡れたままの手で触れるのだけは、さすがに躊躇われたので、少しだけ背を伸ばして、触れるだけのキスをする。
    「よかったら、一緒に寝てくんない?」
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    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

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    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523

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    いただいたお題は「買い出しデートする二人」です。
    リクエストありがとうございました!
    中央の市場は常に活気に満ちている。東西南北様々な国から商人たちが集まるのもあって、普段ならばあまり見かけることのないような食材も多いらしい。だからこそ、地元の人々から宮廷料理人まで多種多様な人々が集うという。
     ちなみにこれらは完全に受け売りだ。ブラッドリーはずっしりと重い袋を抱えたまま、急に駆け出した同行者のあとを小走りで追った。
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    「色艶も重さも良い……! これ、本当にこの値段でいいのか?」
    「構わねえよ。それに目ぇつけるとは、兄ちゃんなかなかの目利きだな。なかなか入ってこねえモンだから上手く調理してやってくれよ?」
     ようやく見つけた同行者は、からからと明朗に笑う店主から何か、恐らく食材を受け取っている。ブラッドリーがため息をつきながら近づくと、青灰色の髪がなびいてこちらを振り返った。
    「ちょうどよかった、ブラッド。これまだそっちに入るか?」
    「おまえなあ……まあ入らなくはねえけどよ。せ 1769