嘘が下手な彼女だからすぐに気付いた。
目を合わせようとしても、意図的に反らされていることに。
もともと身長差があったとはいえ、椅子に座っていれば関係無い。なのにこちらから見ようとするとさっと顔ごと逃げられてしまう。
ベッドの中も電気を消すよう強く求めたり、目をぎゅっと瞑ってしまったり。……それを快楽に沈めてどろっどろのぐちゃぐちゃにする愉しさも勿論あるけど。
とも、あれ。
可愛い顔で拒絶を示されてしまうのはじんわりとキツイので。
「ねえ、何で私のこと避けるの?」
「ひぇ」
壁に追い込んでぐっと顔を近づける。逃げないように片手を細い肩へ置き、もう片方はグレゴールの後ろ頭に添えてしっかりと目を合わせる。
「私、何かしたかな」
「あ、あの、ちょ、近い」
「うん、だって近づいてるから。……グレッグが避けてる理由を、教えて」
「え、あ、えと」
はくはくと焦る様も可愛い。久々の瞳は左右に揺れ、顔も耳も真っ赤に染まっている。
このままキスしたいところけど、今はちょっとだけ我慢。
「グレッグ」
「……ロージャの顔が良すぎるんだよ」
突然、ぐっと眉を吊り上げて怒鳴り上げるグレッグ。
顔が赤いままだから全然怖くないものの、予想外の返答に少しだけ怯んだ。
「わ、私の?」
「そうだよ ロージャがかっこよすぎて、て、照れる、し、緊張すんの 今も」
一気に捲し立てた後もう勘弁して、と泣きそうに細く零すグレッグ。
私がかっこよくて、見られると照れる。らしい。
なに、それ。
つまり彼女も私のことがめちゃくちゃ好きってことじゃん。
好きすぎて近づくと緊張するって、そんな顔で言うのは。
「ろ、ロージャ?」
「うー……反則……」
あまりに可愛すぎる恋人へぎゅうぎゅう抱き付いて肩に顔を埋めた。
頬が熱い。見られたらからかわれる顔になってる。
「もう、好きぃ」
「えっと、うん?」
戸惑いの声さえ可愛い。
こんなの、次から私の方が顔を反らしてしまう。
本当に、ずるいひと。
どんどん夢中になっていくグレッグから苦しいと苦情が来るまで、熱い顔を隠すハグを止めることができなかった。