ロージャ兄さん モデル兼俳優。顔が良い。
グレおば 一般会社員。可愛い。
同棲中
何でもない昼下がり。
ぼんやりと、木板に伏す振りをして顔が良い彼氏を眺める。
同棲を初めて早三ヶ月。お互い暇ではない日々で、かつ彼は今をときめく売れっ子モデル。
俳優業も兼ねているから休みが重なることなんてそうそうない。
そんな中の、孤独な休日。
テーブルに広げた雑誌にはデート中のシチュエーションで、甘いマスクで微笑み、理想の彼氏とかなんとか添えられた恋人がいた。
その笑顔と宝石みたいな群青は雑誌越しでも数多の乙女を射貫いて来たことだろう。……私もそうだったから。
世間的に彼はフリーだ。
婚約指輪は無くすのが怖いと言ってチェーンを通して服の下に隠しているし、パパラッチを巻くのが相当上手いらしくこの家も同棲もバレたことが無い。自分の恋愛に関する取材も宥めすかしてはぐらかして一切を曖昧にする。
所謂お忍びデートだって予定が合わないからそもそも撮られる心配が無い。
……自分でつらつら並べていて勝手にダメージを受ける虚しさに雑誌から目を背けた。
「……私だって」
私だって、この『理想の彼氏』とデートしたい。
デートじゃなくても一緒にいたい。この家でテレビや映画を見て、ご飯を食べて、くだらないことで笑って、それから——。
「私だって……繊細、なんだぞぉ……」
とても彼には聞かせられない、情けないぼやきは静かな部屋は簡単に吸いこまれてしまった。
でも、少しくらい、いいじゃない。
年上の変なプライドで上手く甘えられないんだから、こっそり寂しがるくらい。
ちらりと、平面なのにずっと顔が良い彼氏を見る。
どうもできない自分の無力に重たいため息をついて、今度こそテーブルに伏した。