「ちょ、ロージャ! んっ」
久しぶりのデートだった。
お互いなかなか合わない休日。かつ、急遽入る予定。
そんな中で合わせた久々のおでかけはとても有意義だった。
気合いと勇気でオシャレして、前から行きたいと言っていた場所を巡り、楽しそうな彼にこちらも嬉しくて。ついでに新しい服も何着か見繕われてしまい。
上気した気分のまま帰って来た途端、唇を奪われたのだ。
「は……は、ぅ」
床に落ちる荷物の音。
抱きすくめられ、体格差のせいで浮く踵。
キスの合間にどうにか酸素を求めるも、隙間も、わずかな余裕さえ奪われてしまう。
お互いの唾液がぐちゃぐちゃに混ざり合って飽和し、飲み切れなくて口端から零れ落ちた。
やっと解放されたのは酸欠で意識が朦朧とし始めた頃。
「……あー」
「はぁ、はぁ……ロー、ジャ?」
ぎゅうと抱きしめられたまま肩で息をする私に彼は囁く。
「違う」
「え?」
「違うよ。もっとグレッグを大切にしたいし可愛がりたくて、夜まで我慢しようって思ったのに……デートの間ずっと、こうしたくて堪らなかった」
すりすりと首筋に当たる柔らかい髪がくすぐったい。
「今日のグレッグすっごく可愛い。そのワンピもカーディガンも、あといい匂いする。グレッグに良く似合ってる」
「え、と……ありがとう?」
「うん。それで——ごめんね」
「なに、うわ」
何を、と聞く前にひょいと持ち上げられ、靴も落とされて軽々と運ばれる。
咄嗟に彼へしがみついたが何事か。
「ろ、ロージャ」
たどり着く先は寝室。
彼に合わせた大きなベッドに降ろされるや否や覆い被さる彼に疑問も文句も全部霧散した。
そんな、色を深くした瑠璃色で見つめられたら。
——じゅわり、と。そこが濡れる。
「グレゴール」
呼ばれた名前へ応える声はキスの中。
未だ追い付かない思考は諦めた。どうせ、これから余計なことは考えられなくなるのだ。
辛うじて伸ばした手を広い背中へ。
口の中を蹂躙する舌が、ひくりと、震えた気がした。