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    紫蘭(シラン)

    @shiran_wx48

    短編の格納スペースです。

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    紫蘭(シラン)

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    グルアオ短編です。
    付き合ってるけれど、aoちゃんはまだ学生なので、手を繋ぐこともしてない清い関係です。
    まだまだ情報は不明の段階ですが、追加コンテンツの内容が若干含めてます。
    違ってても、内容修正はしない予定。

    逢いたいが情、見たいが病/グルアオ「最近、アオイさんはここには来ないね」

    ぼくが自宅からジムへ到着した際、唐突に話しかけられる。
    聞いてきたのは、ぼくがプロのスノーボーダーとして活躍していた時から関わりがある、現在ジムの受付業務をしている男性スタッフだった。

    考えないようにしていたのに強制的に思い出され、嫌な気分になる。

    「林間学校でしばらくいないから」
    「…悪かった。そんな睨むなよ」

    別に睨んじゃいないけど とこぼせば、だから最近機嫌が悪かったのかと妙に納得された。

    「至っていつも通りだけど」
    「嘘つくな。普段の数倍は険しい顔しているぞ。
    若いスタッフや挑戦者も怯えているからやめなさい」

    意味不明な注意を受け、もう聞きたくなかったから無言でそのまま自分の控室へ向かった。
    ぼくはそんな表情も態度も取っていない。
    周りが怯えるようなことは、一切。

    アオイの顔が見れないばかりか 声も聞けていない状態がちょっと嫌なだけだ。
    ただ、それだけ。
    だから、不機嫌オーラを周りに撒き散らしてなんかない。
    ぼくだって成人した大人なんだから、そんな子供みたいなこと…。


    部屋に入ると、アオイから写真付きメッセージが来ていた。
    すぐに内容を見ると、緑色のじんべいを着た可愛い彼女とその友達だろう複数人と楽しそうに写っていた。
    ちらほら見たこともない人も混じってたけれど、他校と合同でキタカミの里に行くって言ってたな。
    …写真の中で笑顔を振りまくアオイの隣に、ぼくはいない。

    むむっと顔に力が入るけれど、心を落ち着かせるためカモミールティーを淹れようと室内にあるミニキッチンに向かった。

    電子ポットで水が沸騰するのを待ちながら、カレンダーを見てぼんやり見つめる。
    三日ほど前 目的地に向けて出発したばかりだから、帰ってくるのはまだまだ先だ。
    そう考えると、しんと心が冷えていくように感じる。


    アオイも学生なんだから、ずっとこんな雪山に入り浸るより こうやって学校行事を楽しんだり、友達との思い出をいっぱい作ってほしいという気持ちはもちろんある。
    けれど、こんな…ずっとメッセージ以外の連絡がこないのはどうなんだ。
    それまでは毎晩、欠かさず電話していたのに。

    ぐっと両手を握り締めていれば、モンスターボールから勝手にマニューラが出てきた。
    ぼくの顔を見上げると、ふっと鼻で笑う。
    そしてそのまま また自分でボールの中に戻っていった。

    「なんなの、一体…」

    信頼している手持ちからも意味不明な反応をされて、若干イラついた。
    何度も言うけれど、ぼくは別にアオイからほっとかれて拗ねてるとか、そんなんじゃないから。

    誰に対して言い訳しているのかどうかも もはやわからないけれど、お湯が出来上がったからティーバッグが入ったマグカップに注ぐ。
    少し時間が経過した後はティーバッグを捨て、カップ片手にソファーに座って今日来るであろう挑戦者を待った。

    誰でもいいから、早く来てくれないかな。
    そうすれば、こんなこと考える時間が少しでも減るから。




    「そんなに声が聞きたいのなら、自分からすればいいだろ」

    数日経った夕方、挑戦者との勝負に勝ったぼくは 受付前を通るとまたあのスタッフから呆れたように声をかけられた。

    「なんのこと?」
    「男でも、寂しいときはちゃんと寂しいって伝えるべきだと思うぞ。
    そんな影で拗ねるよりずっと健全だ」
    「は?意味不明。そんなんじゃないから」

    何度も言ってるけど、別に拗ねてないし。
    いい加減ほっといてほしい。
    …というより、なんでぼくはこんな親に反抗する思春期みたいな反応をスタッフ相手にしているんだ。
    冷静になれ。サム過ぎる。

    控室に戻り ソファーに腰掛けると、チルタリスとアルクジラが勝手に出てきた。
    チルタリスはぼくの肩周りをふわふわの羽根で包み込むように覆い、アルクジラは膝をぽんぽん叩く。
    …なんでぼくはポケモン達に慰められているんだ?

    一昨日くらいから始まった謎の対応に、困惑が隠せない。
    もしかして、彼らからも拗ねてるって思われてる?

    「だから、違うって」

    そう言っても聞いてくれない。
    そばから離れない二匹をどうしようかと考えていれば、スマホロトムが着信を知らせてくる。

    『もしもし?グルーシャさん?』

    誰からの電話か確認せずに出ると、スピーカーからあの子の声が聞こえてきた。

    「アオイ…?」

    驚いて聞き返せば、そうですよと彼女は小さく笑う。

    『今、電話しても大丈夫ですか?…ちょっとだけで終わらせますから』
    「別に大丈夫だよ。さっきまでポケモン勝負してたけど、もう終わったから」
    『そうなんですね。良かった…。勝負の結果はどうでした?』
    「ぼくが勝ったに決まってるでしょ」

    一週間ぶりに聞いた彼女の声は、どんどんぼくのこおりを溶かしてくれる。
    温かくて、落ち着く。

    『なかなか電話できなくて、ごめんなさい。
    ちょっと色々ありすぎて夜になると毎回疲れて寝ちゃってました』
    「別にいいよ。気にしてないから。せっかくの学校行事なんだし、友達と楽しんで」

    その言葉を口に出せば、近くにいたアルクジラが目を細めながら疑いの目を向けてくる。
    別に嘘は言ってないだろ。
    これも本心だ。

    『ありがとうございます。あ、グルーシャさんやナッペ山ジムの皆さんにお土産をいっぱい買ったので、帰ったらすぐに伺いますね』
    「わざわざありがとう。楽しみにしてるよ」

    そう返事をすれば、会話が止まり沈黙が流れる。
    いつもなら、ここからはきはきと今まで何があったかとか、何が楽しくて驚いた…だとか色々話し始めるのに。
    急に口を閉ざしたアオイに違和感を感じたから、ぼくの方から何かあった?って聞いてみた。

    すると少し間を置いた後、ぼつぽつと話し始める。

    『いえ…。ただその、えっと…ちょっとの間だけでもグルーシャさんの声が聞けなくなると、やっぱり寂しいなって。
    ごめんなさい!こんなの、子供っぽいですよね…』

    力無く笑う彼女に対して、そんなことないよと伝える。
    寂しいと感じていたのは、アオイだけじゃ…ないから。

    「ぼくも、ぼくだって一緒だ。
    今、アオイとこうして電話できてほっとしてる」
    『ほ、本当ですか!?…よかったぁ。
    私だけかと思ってたから、空き時間に電話してもいいのか迷ってました』

    じんわりとなんとも言えない感情が心に広がっていく。
    そうか、アオイもぼくと話ができなくて寂しいと思ってくれていたんだ…。

    「ねぇ、帰ってくる時間はいつくらい?日付は聞いてるけど、現時点でわかってたら教えて」
    『えっ、多分夕方か夜くらいになると思いますよ?』
    「わかった。疲れているところ悪いけど、その時少しだけでも会えない?
    アカデミーの近くまで行くから」

    彼女は困惑した声で、ぼくの方が大丈夫かどうかを聞いてくる。

    『次の日もジムリーダーの仕事、ありますよね?
    そんな無理しなくても、帰ってきた週の土日に行きますよ』
    「その日はテーブルシティに泊まるし、朝一の便に乗ったら十分間に合うから。

    五分だけでもいい。…アオイに会いたい」

    素直に自分の気持ちを伝えたら、わかったと返事をしてくれた。
    無理はしないからと追加で言えば、当たり前だとちょっと怒られた。

    もう少し話をしたいと思ったけれど、遠くの方からアオイの名前を呼ぶ声が聞こえたからこれまでだと悟る。

    「会える時を楽しみにしてるから。それじゃ、おやすみなさい」
    『はい。こちらこそありがとうございました。
    グルーシャさん、大好きです。おやすみなさい』

    最後に可愛いことを言うと、アオイから電話を切られてしまった。
    通話終了画面を見ながら、ぽつりと呟く。

    「…ぼくも、大好きだ」


    終わり
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    recommended works

    chikiho_s

    PASTTwitterに上げたバレンタインとホワイトデーの連作。
    プレゼントは死ぬほど貰うけど、自分からあげるなんて無いだろうから悩み悶えていればいい
    ココアの件はフォロワーさんのリクエストで。グランブルマウンテン(砂糖たんまり)でもいいね。可愛いね。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19706108
    氷の貴公子とチョコレイト今年もこの日がやってきた。一年の中でも憂鬱な日。バレンタインだ。

    ジムの建物内を埋め尽くす勢いでチョコレートやプレゼントが届く。言うまでもなく全部ぼく宛て。わざわざ雪山の山頂にあるジムまで届けにやってくる人もいる。多分明日は本部に届けられた分がやってくる。正直、意味がわからない。
    この日だけ特別に一階のエントランスに設置されるプレゼントボックスは何度回収しても溢れていて、業務に支障が出るレベル。下手にぼくが表に出ようものならパニックが起きて大惨事になるから、貰ったチョコレートを消費しながら上のフロアにある自室に篭もる。ほとぼりが冷めたらプレゼントの山を仕分けして、日持ちしない物から皆で頂いて、残りは皆で手分けして持ち帰る。それでも裁ききれないからポケモン達に食べさせたり、建物の裏にある箱を冷蔵庫代わりにして保管する。これは雪山の小さな特権。
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