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    紫蘭(シラン)

    @shiran_wx48

    短編の格納スペースです。

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    紫蘭(シラン)

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    廻あざ+ジャスです。
    どこかでこんなやりとりがあったらなーという妄想。
    季節先取りしてます。

    #廻あざ

    春のお届け便/廻あざ「今日もお疲れー。車回してくるから、あざみーはここで待ってな」
    「はい、わかりました」
     とある都市伝説が絡んだ案件の調査をしている私達は、午後から現場付近の公園で聞き込みを行っていた。比較的順調に進み、噂の詳細を知っていそうな人物のことまで突き止めることができたんだけど、その人は既に公園を後にしており調査は中断。明日またやってくるとのことだったので、今日はもう早めに切り上げることになった。
     車の鍵を手にしながら駐車場へと歩いて行くジャスミンさんの背を見送ると、もう少し他の情報を集めたいと思った私は鞄の中からスマートフォンを取り出し、SNSのアプリをタップした。検索ワードを入力してスクロールをするが、これといったものはなかった。明日また頑張るしかないかと思ったところで、ひらりと小さなものが上から落ちてきた。
     
     なんだろうと足元へ視線を落とせば、薄ピンク色の花びらが一つ。見上げると、ぽつぽつと花咲く木々が目に入った。小枝に留まる小鳥が花弁が欠けた花を突いていたので、その一部が落ちてしまったんだろう。
    「……もしかして、桜の花?」
     調査に夢中で全く気づいていなかったんだけど、それを見てもうそんな季節が来たんだと驚いた。
    「少し前まで寒かったのに」
     ふふふと思わずこぼれ落ちた笑い声と共に、私はカメラを起動した。控えめなシャッター音の後、ブレていないか軽くチェックをするとそのまま自分のSNSアカウントへと投稿する。最近は更新してなかったけど、センターでアルバイトを始めるまではこういうちょっとした幸せや発見を周りに共有したい時に利用していた。
     
     あとでジャスミンさんにも見せようとはしゃいでいると、ふとあの薄暗い地下でオカルト本を読み耽るセンター長さんの様子が脳内で浮かんだ。そして少し考えた後、私はあることを思いついた。
     
     
    「え、あざみー桜の枝折っちゃった?」
     公園の入口前で見知った一台の車が停まったので、すぐさま乗り込んだ。その際に私が手にしたものを見たジャスミンさんが驚いた表情を浮かべながらそう発言したので、私は慌てて否定する。
    「そ、そんなことするわけないじゃないですか! 公園で、枝ごと落ちていたのを拾ったんです!」
    「ああ、そう。ならいーけど。てか、もうそんな時期なんだ」
    「びっくりしちゃいますよね。この前まで雪が降ってたのに」
     そうやって車を走らせながら車内で雑談に花を咲かせていると、ジャスミンさんから私が拾ったその小枝をどうするのか聞いてきた。
    「えへへ、実はですね……センター長さんにプレゼントしようかと!」
     秘密の計画をこっそり打ち明ける時の、ちょっとした高揚感を抱きながらそう告げると、彼女の眉が微かに歪む。
    「なんでまたそんなこと……」
    「センター長さんて、ずっと引きこもってるじゃないですか。そんなの健康によくないし、息が詰まりそうだなって。できたらお散歩に誘いたいんですけど、この依頼が終わるまでできないから、それなら少しでも季節を感じられるものを贈って癒されてほしいなーと!」
     我ながらナイスアイデアと思い自信満々に話したんだけど、相変わらずジャスミンさんの反応は微妙なまま。あれ? と思いながら見つめていると、信号が赤になったからか彼女はこちらを向いてぼそりと呟いた。
    「あざみーはさ、センター長に花を愛でる感性があるって本当に思ってる?」
     それそっちのけで桜に関する都市伝説を喋りだすんじゃない? と続いた言葉に、私は流石にそれはないでしょうと突っ込んだ。しかし彼女の考えは変わらないまま。そうこうしている内にセンターが入る建物付近に到着した。
    「ま、あざみーがしたいんならいいんじゃない? じゃあまた明日ー」
     車から降りると、その言葉を置き土産にジャスミンさんは車を走らせてしまった。歩道でぽつりと残された私は、手のひらの上で咲く桜の枝へと視線を移す。
    「こんなにも綺麗なお花だから、都市伝説なんてない……よね?」
     うん、きっとそうと呟くと私は建物内へと入り、地下へと通じる古びたエレベーターがやってくるのを待った。
     
     
     
     
    「あざみさん、お疲れ様でした」
     暗い一室に足を踏み入れると、奥のデスクでノートパソコンを開くセンター長さんに声をかけられた。画面から出る光のせいで、彼の肌はより一層青白く不健康そうに見える。やっぱりもう少し太陽の光に当たった方がいい気がするな。お散歩は難しくても、早めにここへ訪れては、調査の前に少しだけ屋上へ連れて行って――
     
    「……あざみさん? どうされましたか?」
     はっと我に返って声が聞こえた方へ視線を向けると、やや鋭い瞳とかちあった。ぼーっとしてしまった私を不審に思ったのか、じっと見上げている。
    「あっ、いえあの……!」
     慌ててなんでもないことを告げようとする前に、センター長さんは私が後ろ手に持つ小枝の存在に気がついたようだった。片方の眉のみを少し上げ、それは桜の花ですねと呟いた。
    「はい。あの、今日聞き込みをした公園で落ちてるのを見つけたので……」
    「折ってきたわけではないんですね。安心しました」
    「なんでセンター長さんまで、そんなこと言うんですか! 私はそんなことしませんよ!!」
     ジャスミンさんといいそんなことをしでかしそうだと思われていたことが心外で、思わず大きな声を上げてしまった。そんな私の反応が面白かったのか、目の前の彼は口角を上げ静かに笑っている。そこでようやくからかわれていたんだとわかった瞬間、私は頬を膨らませた。するとセンター長は冗談ですと呟いた。
    「私へのお土産だそうで」
    「視てたんですか?」
    「ええ。そろそろ戻る頃合いだろうと思い。わざわざありがとうございます」
     すっと右手を出してきたので、観念して小枝を渡した。大きな手のひらに可愛らしい桜の花々が咲いている様は、少し奇妙だった。
     それにしてもセンター長さんには千里眼があるとはいえ、ちょっとしたサプライズさえもできないのかと少し落胆した。そんな私の心情すら読み取ったのか、彼はますます笑みを深めていく。……なんだか嫌な予感がする。
     
    「あざみさん、ご存知でしょうか? 桜の木の下には死体が埋められており、その生き血を吸っているからこそ美しく咲き誇ると――」
    「ぎゃー! ななななんで急にそんな怖い話をするんですか!!」
     いきなり始まった都市伝説トークに、私は半泣きになりながら制止をかけた。ジャスミンさんが言ってた通り、センター長さんにはお花を見て可愛いと思うことなんてないんだ! ひぃと涙目になっていると、彼の表情が目を見開きながら嬉々として語ろうとするものから、どこか柔らかいものへと変化した。
    「素敵な贈り物をありがとうございます。しばらくここに飾りましょうか」
     
     そう言ってそろりと桜の花びらを撫でる彼の指先を見た瞬間、ほっぺたが急に熱くなった。……こんな顔をするセンター長さん、初めて見た。珍しいは珍しいんだけど、どうしてこんなにも恥ずかしく感じちゃうんだろう。私、なんだか変だ。
     
    「よ、喜んでもらえてよかったです。……えへへ」
     
     まごついて上手く動かない口で、ようやく伝えられたのはその言葉だけ。そこから慌てて調査の進捗を簡単に説明すると、私は逃げるようにセンターから去った。帰宅中、妙にドキドキと高鳴る鼓動を手で必死に押さえながら、何度も何度も思い出す。そしてあの穏やかな笑顔をまた見ることができるのなら、次は何を届けようかなと無意識の内に考えていた。
     
     
     
     そして次の日。調査の前にセンターへ寄った際、デスクの上で小さなガラスの花瓶に入った桜の小枝を見つけた。
     あまりの嬉しさからスキップしながらジャスミンさんのところへ行くと、彼女からは怪訝な表情を向けられることになったけど、今日は張り切って調査に励むことができた。……もしかして、今も私の様子はセンター長さんに視られているのかな?
     
     
    〈終〉
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    chikiho_s

    PASTTwitterに上げたバレンタインとホワイトデーの連作。
    プレゼントは死ぬほど貰うけど、自分からあげるなんて無いだろうから悩み悶えていればいい
    ココアの件はフォロワーさんのリクエストで。グランブルマウンテン(砂糖たんまり)でもいいね。可愛いね。

    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19706108
    氷の貴公子とチョコレイト今年もこの日がやってきた。一年の中でも憂鬱な日。バレンタインだ。

    ジムの建物内を埋め尽くす勢いでチョコレートやプレゼントが届く。言うまでもなく全部ぼく宛て。わざわざ雪山の山頂にあるジムまで届けにやってくる人もいる。多分明日は本部に届けられた分がやってくる。正直、意味がわからない。
    この日だけ特別に一階のエントランスに設置されるプレゼントボックスは何度回収しても溢れていて、業務に支障が出るレベル。下手にぼくが表に出ようものならパニックが起きて大惨事になるから、貰ったチョコレートを消費しながら上のフロアにある自室に篭もる。ほとぼりが冷めたらプレゼントの山を仕分けして、日持ちしない物から皆で頂いて、残りは皆で手分けして持ち帰る。それでも裁ききれないからポケモン達に食べさせたり、建物の裏にある箱を冷蔵庫代わりにして保管する。これは雪山の小さな特権。
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