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    紫蘭(シラン)

    @shiran_wx48

    短編の格納スペースです。

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    紫蘭(シラン)

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    グルアオです。
    gr氏面倒見の良さが限界突破して、ママみたいな対応をしてくれそうな気がしました。
    (ただしaoちゃん限定)

    勿怪の幸い≒棚からぼた餅 です。

    勿怪の幸い/グルアオ週末、夕食を食べた後 何か面白いものはないかと動画配信サービスの一覧を眺めていた。

    「…これ、アオイが前に見たいって言ってた映画じゃない?」

    テレビ画面を指差しながら、キッチンで食器類を洗うアオイに話しかけた。

    「あ、本当ですね。もう配信されてるなんて!
    …この後一緒に見てもいいですか?」
    「いいよ。じゃあ、早く片付けようか」

    いつでも再生ができる状態にしてからソファーから立ち上がると、後片付けの手伝いに入る。

    去年あたりにアオイから映画を見に行きたいと話してくれたけれど、なんだかんだでお互いの仕事が忙しく 映画館に行く余裕がなかったから、結局諦めたものだった。
    確か以前予告編を見た限りでは、雪山にスキーを滑りにきた学生グループがロッジやゲレンデ内で出会った同年代の子達との間で繰り広げられる恋愛映画だったはず。
    正直あまり興味はなかったから、内容はうる覚えだけど…。

    明日は特に用事もないし、映画館では見ることができなかったからこれをいい機会として手早く片付けを済ませると ドリンク片手に二人で座った。
    アオイの肩を抱き寄せながらリモコンの再生ボタンを押せば、物語が始まる。

    最初はよくあるゲレンデで一人の女の子と出会い一目惚れをした主人公が、友人達に協力してもらいながら あの手この手でアプローチをかけていき、それが周りにも波及していって…という内容だった。
    隣のアオイも彼らがくっつくのかどうか、わくわくしている表情で画面を見つめていた。

    映画より、そっちの方を見ていたかったからじっと眺めていれば、アオイから画面を見るよう注意を受ける。
    仕方ないと思いつつ側頭部にキスを落とすと、視線をテレビ画面に戻した。

    このまま、コメディタッチで進みつつも最終的には二人は結ばれてハッピーエンドになるんだろうな…と思っていたけれど予想は大きく裏切られて、気がついたらなかなかエグいホラー展開が繰り広げられていた。

    主人公が恋した女の子も、ゲレンデで出会った人々も全て幻で 幽霊がロッジ内に迷い込んだ観光客に都合の良い夢を見せてから殺すと言う話だった。

    同じ一本の映画だとは思えず、前半と後半で脚本家や監督だとか総入れ替えしたんじゃないかってレベルで正反対の展開に驚きはしたけれど、はっきり言ってしまうとホラー展開が始まってからの方がこの映画の面白さが格段に上がった。
    ぼくも思わず食い入るように見ていた。


    主人公達が逃げ切るのか、幽霊の餌食になるのか手に汗握る展開を楽しんでいたら、右側が引っ張られるような重みを感じる。
    確認をすれば、容赦ないホラー展開に怯えたアオイがぼくの体にしがみついていた。
    よく見たら体も小刻みに震えている。

    「…見るのやめる?」

    ベビーポケモン並みの震えっぷりに一瞬可愛いと思ってしまったけれど、再生を止めるべきか聞いた。

    「…グルーシャさんが楽しんでるようなので、続けてください」

    顔は見えないけれど、声が震えているからこれ以上はダメだと判断して停止ボタンを押す。
    続きは気になるけれど、残りはアオイがいない時にいつだって見ることはできるし、まずは怯え切っている彼女のフォローの方が先だ。

    アオイの体を抱き上げると、膝の上に乗せて包み込むように抱きしめる。
    落ち着くように背中や頭を撫でていると、胸元がちょっとひんやりしてきた。

    「泣くほど怖かったの?手持ちにゴーストタイプとか、よくわからないポケモンとかいるよね?」
    「ぽ、ポケモンと幽霊はちちち違いますよ!
    あ あんな血みどろで、人ももがき苦しんだりしない…」

    ぐずっと鼻を啜る音聞いて、リモコンを使って何か明るい話題のものはないかとチャンネルを変えたら、彼女がよく見るほのぼのポケモン牧場の番組がやっていた。
    三十分間、ひたすら牧場に住むポケモン達が昼寝していたり フーズを食べている映像が流れるやつ。

    「アオイ、ほら ウパーとドオーが引っ付いて寝てるよ」

    幸せそうな顔で眠るウパーとドオーを指差せば、恐る恐る顔をテレビ画面に向ける。
    もう涙やら鼻水やらで顔がぐちゃぐちゃだった。

    「うぅっ…かわいい…」

    涙ぐみながら呟いた光景が本当に小さな子供のようで、思わず笑いそうになったけれどぐっと我慢した。
    ここで笑うと今度は怒って離れそうだったから。

    「今度ここに行こう。ケンタロスの大移動も見れるし、エレズンに手渡しでフーズをあげられるって」
    「いぐぅ…」


    番組を見せつつ よしよしとあやすように撫で続けていれば、だんだん冷静になってきたようで 顔を真っ赤にしながらもう降ろしてほしいと言われる。
    子供っぽい反応をしてしまったことが恥ずかしかったようだ。

    本当によく表情がころころ変わるなと感心しながらも、言われた通り彼女の体を膝の上から降ろした。

    「もう遅いから、お風呂に入ってきなよ。ゆっくりリラックスしてきて」

    そう言って送り出そうとしたけれど、アオイはソファーから動かない。
    また何かあったのかと思い顔を覗き込んだら、真っ青な顔色になっている。

    「本当に大丈夫?まだ無理ならぼくが先に行くけれど…」

    立ちあがろうとすれば、小さな手で服を引っ張られ行動を阻止される。
    青い顔の彼女は、ボソボソと話し出す。

    「お、お風呂に入っている間に殺された人いましたよね…。
    ここも雪山だし。あの、今日はもう無理そうなので、い一緒に入ってくれませんか…?」

    思わぬ申し出に目を見開いた。
    普段ぼくが一緒に入ろうと誘っても、恥ずかしがって毎回断るのに。
    そうか、こうやってホラー映画を見せたら入ってくれるのか。

    なら他にも予告詐欺のホラー映画を探し、知らない振りをしてアオイと見るようなことを時々やってみよう。
    普段は怖いもの知らずで堂々としている彼女が、こうやって怯える姿も新鮮で可愛かったし。
    …まあ、ちょっと可哀想でもあるから半年に一回のペースで。
    耐性ついてほしくもないから。


    「いいよ。じゃ、一緒に入ろう」


    いい案が思い浮かんだと邪な本音を隠しつつ額にキスをした後、アオイの体を抱き上げるとそのまま浴室に向かった。


    終わり
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