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    紫蘭(シラン)

    @shiran_wx48

    短編の格納スペースです。

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    紫蘭(シラン)

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    グルアオです。
    嫉妬するgr氏。タイトルは、とある少女とぽけの心の言葉から。

    大人気ない!/グルアオ「よいしょっと…」

    大きなスコップを使って降り積もった雪を退かす。
    昨日の夜は大雪だったためか、今朝から休憩しながらずっと雪かきをしている。
    朝はスタッフや手持ちのポケモン達も協力してもらっていたから、だいぶ片付いてきた。
    …でも今晩も雪が降る予報だからまた明日も繰り返すんだろうなと思うと、ゲンナリした。
    雪は結構重いからいい筋トレにはなるけれど、やっぱり毎回同じことを繰り返すのは辛い…いや、相当面倒くさくてやってられない気持ちにはなる。
    しかしこれをしなければ歩きづらくて危険だし、そもそもバトルコートが雪に覆われてしまうと ポケモンバトル自体ができなくなる。
    それってポケモンジムとしてどうなんだ?ってなってしまうから、今日もぼくは雪かきをしている。

    こうして時々来る挑戦者のために毎日頑張っているわけだけど、今日は違う。
    この作業が終わる頃には、アオイが久しぶりに訪れてきてくれるから、いつもとは違ってご褒美が待っている。
    だから今日はうんざりした気持ちより、さっさと終わらせてアオイが来るのを待とうという気持ちの方が大きい。

    約束の時間まで、あと三十分くらい。
    …このペースでいけば、何とか終わらせそうだ。

    もう一度真っ白な雪にスコップを突き刺した時、遠くから声が聞こえてきた。


    「グルーシャさーん、こんにちはー!」

    声のする方を見上げれば、ポケモンセンター前でライドポケモンに乗ったアオイが大きく手を振っていた。
    早く着いたんだと思いつつ手を振り返そうと腕を上げた時、ライドポケモンが飛び上がった。

    ドスンと重量のある音を響かせながら着地すれば、彼女によって一撫でされた後 そのポケモンはボールの中に戻されていった。

    ちゃんと降りる道があるのに、この子は毎回こんな風にダイナミックにやってくる。
    一度危ないからと注意したのに、彼女はケロッとした顔で 早く会いたかったからと言い出すものだから、これ以上は何も言えなかった。

    「雪かき中だったんですね!お手伝いしましょうか?」
    「いや、もうすぐ終わるから大丈夫。ちょっと待ってて」

    走って近くまできた彼女からの提案に、やんわりと断った。
    あと十分ぐらいで終わるから、それまでサムいし控え室で待ってもらおうと思ったけれど、ポテポテと足音を鳴らしながら近くで遊んでいたアルクジラがやってきた。

    「アルクジラもこんにちはー」

    そう元気に挨拶すれば、それに応えるかのようにアルクジラもにっこりと笑ってアオイの体に飛びついた。

    「わぁ!かわいい〜」

    可愛いもの同士が戯れついているのを見て、心がほっこりした。
    そして、改めて室内に入るよう伝えようと口を開いたけれど、アルクジラが動く方が早かった。
    アオイの服を掴んで引っ張ると、どこかへ連れて行こうとする。

    「どこか行きたいの?じゃ、グルーシャさんの雪かきが終わるまで遊ぼっか。
    いいですか?」
    「い、いいけど…」

    許可を出せば、一人と一匹はベンチの前まで行って雪の塊を作って遊び始めた。
    きゃっきゃと楽しそうに遊ぶ光景を見ていると、さっきまであったほっこりした気持ちはどこかに行き、モヤっとした感覚が渦巻き始める。

    アオイと会えるのは、実は一ヶ月半ぶりだ。
    少し前までテスト期間で、それに向けた勉強と課題を終わらせるため、しばらく会いに行くことはできないと事前に告げられていた。
    正直嫌だったけれど 学生の本分は勉強だから仕方ないと、メッセージのやり取りや毎日寝る前の電話で我慢してきた。
    そんな状態から今日やっと直接会えると楽しみに待っていたのに、結果はこれだ。

    会って五分も経たないうちに、アルクジラに取られてしまった。

    元々甘えたがりの性格で、アオイにもよく懐いていたから嬉しいのはわかる。
    だけど、ぼくより先に飛びついたり 相手にしてもらうなんで…。

    ぐっと眉辺りに力が入ったけれど、すぐに自分のポケモン相手に嫉妬するなんてサム過ぎると考え直す。
    落ち着け。
    あとほんの少し残っている雪かきが終われば、すぐアオイと話ができるんだから。
    さっさと面倒なことは終わらせるに限る。

    雪面に突き刺したままになっていたスコップにもう一度手をかけ、柄の根本あたりに足をかけた時。

    「わぁ、重いよー」

    アルクジラから軽く突進を受けたみたいで、アオイが転がっていた。
    それに対して、アルクジラは楽しそうに頭を彼女の体に擦り付けていた。

    それを見た瞬間、黒いモヤが容量一杯になってしまった。
    再度スコップから手を離すと、歩き始める。

    寝転ぶアオイの近くまで行き しゃがみ込むと、起き上がらせるために手を伸ばす。

    「えへへ、倒されちゃいました。ありがとうございます」

    照れ臭そうに笑いながらぼくの手を掴んだことを確認すれば、思い切り引き上げる。
    アオイは驚いた声を出しながら、上半身がぼくの体の方に飛び込んできた。
    そしてぎゅっと小さな体を抱きしめる。

    「ぐ、グルーシャさん?」

    なかなか離そうとしないぼくに対して困惑した声を上げる。
    耳元に口を寄せると、話す。

    「…今日は、ぼくに会いにきてくれたんじゃないの?」
    「え、はぁ…そうですけど」

    思った以上に不貞腐れている声が出てきたけれど、この際どうでもいい。
    久しぶりに直接会えたのに、ほったらかしにされるのはあんまりだ。

    「ぼく、アオイと会えるの楽しみにしてたんだけど。
    …なんでアルクジラの相手ばっかりしてるんだ」
    「えぇ…」

    戸惑う彼女の声を聞きながら、ぼくは抱きしめる力を強めた。

    その様子を隣で見ていたアルクジラが、なんだこいつと言いたげなジト目でこっちを見ていたのに気づいたのは、しばらくしてからだった。


    終わり
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